東日本大震災への取り組み

東日本大震災は、巨大地震を発端とする大津波をはじめとした大規模な複合災害であり、被災地域が広範で被災の影響は長期に及ぶものでした。このため復興の進捗に応じた適切な対応が必要であり、DBJは復興のフェーズに応じた地域課題の解決に取り組んでまいりました。

(1)組織・体制

東北復興・成長サポート室

DBJは、被災地域の復旧・復興支援に全力を挙げて取り組むため、復興支援に有益な知見・金融ノウハウを集約し提供することを目的として、発災直後の2011年4月、東北支店に「東北復興支援室」を設置しました。

「東北復興支援室」は、DBJの本支店が連携する部店横断的な体制で、被害額の推計など被災地に関する情報提供や、自治体、国の機関・経済団体、地域金融機関等と連携し、創造的復興に資する調査・企画業務に取り組んでまいりました。

震災から5年目を迎えた2016年4月、東北地域が復興に加えて新たな成長を目指す段階に移行してきたことに対応し、「東北復興支援室」を「東北復興・成長サポート室」に改称しました。

(2)ファイナンス

危機対応業務

復興特区支援利子補給金制度(※復興庁のページへ移動します)

復興特区支援利子補給金制度は、東日本大震災の被災地における円滑かつ迅速な復興のため、地方公共団体が作成し国に認定された復興推進計画に対する支援措置のひとつです。被災地の復興に向け、復興推進計画を実施する上で中核となる事業に必要な資金の融資に対して国が利子補給金を支給することにより、事業の円滑な実施を支援しています。DBJは、当利子補給制度に基づく「指定金融機関」として、制度を適用した融資を行っています。

地銀共同ファンド

DBJは、東日本大震災で被害を受けた企業の復旧・復興を支援するため、被災地域の金融機関と共同し、2011年に東日本大震災復興ファンドを各県で設立しました。2014年には、震災復興のステージが復旧段階から復興・成長段階へと移行しつつあることに対応し、地域金融機関に加え地域経済活性化支援機構(REVIC)とも連携した復興・成長支援ファンドを設立しました。

さらに、震災から7年が経過した2018年9月、持続的経済発展を支えるファンドを新たに設立しました。復興需要の落ち着きが見られる中、岩手、宮城、福島では、製造業の集積、農林水産業の6次産業化、観光産業促進、医療・ロボット・再生可能エネルギー・航空宇宙産業等の新産業育成等、持続的な経済発展に向けた取り組みが進捗しており、地域産業の担い手である地域企業が抱える経営・財務上の課題解決を通じて各県の持続的発展を支えるため、中長期の資本性資金等のリスクマネーを供給することを目的としています。

<持続的経済発展を支えるファンド概要>

いわて飛躍応援ファンド ふるさと産業躍進ファンド みやぎ地域価値協創ファンド
GP DBJ地域投資(株) DBJ地域投資(株)
東邦リース(株)
DBJ地域投資(株)
LP 当行・岩手銀行 当行・東邦銀行 当行・七十七銀行
ファンド規模 30億円 30億円 30億円

いわて飛躍応援ファンド

ふるさと産業躍進ファンド

みやぎ地域価値協創ファンド

東日本大震災復興ファンド(岩手県、宮城県、福島県、茨城県)

東日本大震災復興ファンド(岩手県、宮城県、福島県、茨城県)

持続的経済発展を支えるファンド(岩手県、宮城県、福島県)

(3)ナレッジ

「新しい東北」官民連携推進協議会

復興庁が進めている「新しい東北」の創造に向けて、被災地で進められている企業、大学、NPO等、多様な主体による取り組みを東北の持続的な活力に結びつけていくため、情報共有・交換を進めるネットワークを整備し様々な連携の推進につなげることを目指し、2013年12月、「『新しい東北』官民連携推進協議会」が設立されました。DBJは、この意義に賛同し、設立発起人の一人として当協議会の設立に加わるとともに、副代表として参画しています。

福島県と産業復興に関する連携協定を締結

2013年3月、DBJは福島県と産業復興に関する連携協定を締結しました。この協定は、東日本大震災により甚大な被害を受けた福島県の地域経済活性化に向けた地域産業・観光の振興および地域の魅力発信を総合的に推進していくための情報収集や戦略検討、人材育成等を図ることを目的としています。協定により、DBJと福島県は、互いに有する情報やネットワークを活用して、福島県の産業復興に向け、①企業誘致の推進、②再生可能エネルギー関連産業および医療関連産業の集積・育成、③県内企業の復興支援、④観光の復興および交流人口の拡大、⑤県産品の販売・振興、⑥産業人材育成、⑦まちづくり支援など、多様な分野で連携・協働してまいります。

国連防災世界会議パブリック・フォーラム

世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台

国連防災世界会議は、国際的な防災戦略を策定する国連主催の会議であり、2015年3月に仙台で第3回会議が開催されました。DBJは、サイドイベントであるパブリック・フォーラムとして、「レジリエントな社会を実現する金融イニシアティブ~災害リスク管理や災害発生後の復興における金融の役割」と、「東北内外の連携・相互協力による災害対応力強化に向けて~東北復興連合会議における東北一体となった取り組み」と題した2件のシンポジウムを開催し、世界に向けて東日本大震災から得た経験・教訓の情報を発信しました。

第3回国連防災世界会議で採択された新たな国際的な防災指針である「仙台防災枠組」の一環として、2017年11月、仙台で世界防災フォーラム/防災ダボス会議が開催されました。DBJは、ゴールドスポンサーとして参画するとともに、総合的な災害管理と金融技術、政府や民間事業者とのマルチセクター連携をテーマとしたセッション「災害レジリエンス高度化のためのマルチセクター連携と金融イニシアティブ」を開催しました。

東日本大震災から5年~新しい成長に向けて~阪神・淡路大震災を教訓に

2016年2月にレポート「東日本大震災から5年~新しい成長に向けて~阪神・淡路大震災を教訓に」を発行しました。

当レポートは、東日本大震災から5年を迎えるにあたり、東日本大震災と阪神・淡路大震災が地域経済に与えた影響等を比較・検証するとともに、神戸市の震災復興に向けた取り組みと、今後の東北における成長産業について分析し、東北の新たな成長方策を検討したものです。復興需要剥落による地域経済の停滞を乗り越えるため、新たな成長産業育成やプロジェクト創出の重要性を提言しています。

東日本大震災被災地域の持続的経済発展に向けて~地域企業が抱える経営・財務上の課題を解決するためのリスクマネー提供の必要性~

2018年11月にレポート「東日本大震災被災地域の持続的経済発展に向けて~地域企業が抱える経営・財務上の課題を解決するためのリスクマネー提供の必要性~」を発行しました。

当レポートは、東日本大震災で甚大な被害を受けた3県における経済指標の回復状況を確認し、今後の地域経済を牽引することが期待される有望産業を確認した上で、地域経済の担い手である地域の中堅・中小企業が抱えている経営・財務上の課題を分析するとともに、課題解決による当地域経済の持続的発展を実現するために地域企業の事業リスクを引き受けるリスクマネー提供の必要性を提言しています。

3.11ファクトブック~東日本大震災へのDBJの取り組み~

2021年3月に「3.11ファクトブック~東日本大震災へのDBJの取り組み~」を発行しました。

当ファクトブックは、東日本大震災発生から10年間の東北の復旧・復興・成長に向けた取り組みから得られた知見や「産・官・学・金」による連携実績を可視化し、今後の教訓として伝承するために作成したものです。次世代にも伝承し、未来に起こり得る災害において広く活用されるようことを期待しています。

(4)人材育成

東北未来創造イニシアティブ

2012年4月、復興、自立、さらには未来創造へと挑戦する被災地を支援するため、民間有志を中心に「東北未来創造イニシアティブ」(代表発起人:大滝精一・東北大学大学院経済学研究科教授(当時)、大山健太郎・アイリスオーヤマ株式会社代表取締役社長(当時))が5年間のプロジェクトとしてスタートしました。経営者や起業家を育成する人材育成道場の運営や、民間から支援チームを派遣しまちづくりや産業振興など地元自治体の復興計画の具現化を推進するなど、被災地の自立的発展への基礎固めとすることを目指した取り組みです。DBJは、人材育成道場において「経営と金融」をテーマにしたセッションを担当し、講師派遣による研修プログラムの実施など、当プロジェクトに協力しました。

大船渡ビジネスアカデミー・気仙沼経営人材育成塾

東北未来創造イニシアティブは2017年3月末で活動を終了しましたが、経営人材育成に関しては、新たに大船渡市において商工会議所主催、市協力による「大船渡ビジネスアカデミー」が、気仙沼市においては市役所主催による「気仙沼経営人材育成塾」がスタートし、DBJも引き続き実施に協力しています。

大船渡ビジネスアカデミー・気仙沼経営人材育成塾

福島復興産業人材育成塾

復興庁は、東日本大震災以降、特に厳しい環境に置かれている福島12市町村の産業の再生・事業の創出に向けて、地域のリーダーとなる産業人材を育成する「福島復興産業人材育成塾」を2016年10月に開講しました。DBJは、2016年度より3回に亘り、財務や事業計画策定に関するセッションを担当し、研修プログラムを実施しました。

福島復興産業人材育成塾