日本政策投資銀行

  • News Release
  • 平成12年12月13日
  • 日本政策投資銀行

フィンランドの地域ITクラスタ-戦略
-オウルに学ぶ産学連携・ベンチャ-振興の実践-

日本政策投資銀行では、このほどロンドン駐在員事務所報告「フィンランドの地域ITクラスタ-戦略-オウルに学ぶ産学連携・ベンチャ-振興の実践」を発行致しました。

  1. フィンランドは90年代初頭、欧州全般の景気低迷及び、経済上密接な繋がりのあった旧ソ連の崩壊により深刻な不況に陥ったが、Nokiaが主導するIT産業の牽引により、90年代後半以降、経済は急速に回復し、今ではIT技術の普及において世界で最も先進的な国の1つとなっている。しかし、IT主導への産業構造の急激な転換が、農林業等旧産業からの就業者の移行に際して習得技術面におけるIT雇用ニーズとの間のミスマッチを生じさせており、その結果失業率は依然10%程度に高止まっている。

    (参考)Nokia
    フィンランドの代表的ハイテク企業で、世界最大の携帯電話メーカー。99年のグループ全体の売上高は197億ユーロを超え、前年比48%増の高成長企業。

  2. フィンランドの地域ITクラスター戦略の目的は、IT起業を通じた就業機会の創造と、IT産業の多様化による国内経済のNokiaへの過度の依存からの脱却である。フィンランド技術庁指揮の下、公的研究開発支援機関、官製ベンチャーキャピタル及びSME向けリスクファイナンス機関等を整備し、各機関の間の「血の通った」ネットワークを通じて、地域ベンチャーに対し技術応用ニーズの掘り起こしから起業化、果ては海外進出に至るビジネスのあらゆる局面において、シームレスな支援体制を構築している。
  3. 特に、北欧ハイテク拠点のひとつであるオウル(人口11万人)は、開発技術の商業化に優れたオウル大学とNokiaの主力工場・研究所を擁し、市主導の下80年代に北欧ではじめてテクノポリスを設置する等、早期よりITクラスターの整備が進められてきた。近時においても国のクラスター支援機関とのネットワークの下、地域ベンチャーキャピタルの設立及び、IT技術の社会福祉分野への応用を目指した国家的クラスタープロジェクト「iWELL」を主導する等、地域ITクラスターの実践を成功裡に進めている。
  4. オウルにおける地域ITクラスタ戦略の実践から学ぶ教訓として、・フレームワーク-国のリーダーシップによる明確で実践的なクラスタ事業内容の策定及び支援体制の整備・ネットワーク-技術の企業化に至る全ての局面においてシームレスな支援を行う産・官(国/地方)・学のネットワーク形成・ベンチマーク-今後の起業に資する様な多様な情報・ノウハウの蓄積・広報、の3点が挙げられる。

日本政策投資銀行では、出融資等の機能を通じて長期資金の供給を行う金融機関としての「マネーバンク機能」に加えて、プロジェクト支援機能や情報発信機能といった「ナレッジバンク機能」も一層強化しているところであり、今後も海外6事務所のネットワークを活用して海外事例について情報発信していく予定です。

【お問い合わせ先】
日本政策投資銀行 ロンドン駐在員事務所 Tel:44-20-7638-6210
同 総務部広報班 Tel:03-3244-1900