日本政策投資銀行

  • News Release
  • 平成16年4月5日
  • 日本政策投資銀行

日本政策投資銀行がわが国初のスキームによる動産担保融資を実施
~ターンアラウンダーとの連携を実現!~

【当社概要】

借入人 : ピーター商事株式会社(代表取締役社長:桜井秀伸)
本社 : 福井県福井市
事業内容 : 子供服小売事業
資本金 : 50百万円
売上高 : 38億円(15/5期)
従業員 : 52名(15/5期)
融資枠 : 50百万円

日本政策投資銀行(総裁:小村武)は、民事再生手続の下(平成15年8月民事再生手続開始申立)で経営再建中のピーター商事(株)に対して、当社の保有する店頭在庫商品を活用したわが国初のスキームによりDIPファイナンスを実施しました。

日本政策投資銀行は平成14年4月からDIPファイナンスを開始していますが、当初から動産担保を活用した融資スキームの構築を検討してきており、これまで実績はありますが本格的なスキームとしては本件がはじめてとなります。

我が国においては、これまで動産担保融資がほとんど活用されてきませんでした。これには2つの大きな理由があります。一つは、動産にかかる公示制度がないことです。現状の譲渡担保による占有改定では、実務的な観点から対抗要件上問題があるとの懸念があります。もう一つの問題は、担保取得した動産を処分する専門業者やセカンダリーマーケットが存在しないという点です。動産担保の活用が進んでいる米国においては、リクイデーターと呼ばれる専門家が存在しています。

政府サイドにおいても動産担保融資の促進を図る立場であり、平成16年1月19日付閣議決定された「構造改革と経済財政の中期展望-2003年度改定について」においても、「不動産によらない在庫担保等を活用した担保制度を実現する」旨の方針が示されている等、動産担保の推進が謳われています。これを受けて、動産担保の公示制度の立法化が法制審議会動産・債権担保法制部会を通じて進められており、先般法務省から「動産・債権譲渡に係る公示制度の整備に関する要綱中間試案」が公表されたところです。

今回のスキームは、(株)キアコン(代表取締役社長:澤田貴司)に対して、(1)業界事情、季節変動要素、商品ロス率等を踏まえた在庫の回収可能額を示した動産の鑑定評価業務(評価)、(2)月次ベースで粗利益率、在庫残高等のトリガー事由のチェックを行うモニタリング業務(管理)、(3)期限の利益を喪失させた場合の商品毎のディスカウント率設定を始めとする閉店セール実施業務(処分)、を委託するもの。本件は、専門の業者を活用して、在庫の評価者に万が一のときには予め担保実行の支援を依頼するという「入口(鑑定評価)から出口(閉店セール)まで」網羅する包括的な担保システムを導入しており、動産担保融資の一つのモデルを提示するものです。(株)キアコンは小売・流通専門の企業再生サービスを展開しており、米国で倒産、再建したK- martの店舗整理などリクイデーターとして実績のある米SBキャピタルグループ(本社:ニューヨーク)と提携しています。SBキャピタルグループはファーストリテイリング元副社長の澤田氏が代表を務め、機関投資家などと設立した小売業再生ファンドを運営するなど精力的に日本の小売業の再生を支援しています。

今後、我が国においても、本件のようなリクイデーター機能を活用した動産担保融資が広がることが期待されます。

ピーター商事(株)は、各種リストラを進め収益改善を進めているなか、今回のスキームを活用して50百万円の融資枠の設定を受けることにより、(1)債権者に対する信用補完効果、(2)仕入増及び売上増に伴う利益増加、(3)(株)キアコンの鑑定評価及びモニタリング業務を通じたノウハウの吸収(=在庫評価インフラの整備)、が期待されるため、再生計画認可後や再生計画終結後においても今回のスキームを利用して融資を受けることが可能となり、今後、事業再生への弾みをつけることとなります。

今後とも、日本政策投資銀行では、新たな金融スキームの構築を通して、我が国経済社会の進展のために尽力していく所存です。


【スキーム図】