日本政策投資銀行

  • News Release
  • 平成17年7月4日
  • 日本政策投資銀行

呉羽化学工業株式会社に「環境配慮型経営促進事業」融資制度を適用

  1. 日本政策投資銀行は、このたび、呉羽化学工業株式会社に対し、同社の環境へ配慮した経営を評価して、「環境配慮型経営促進事業」融資制度を適用した融資を実行しました。本件は、東北地域で事業を営む企業に対する3件目の適用であり、福島県にて事業を営む企業では初めての適用と、先行的な事例となっています。
  2. 環境配慮型経営促進事業は、当行が開発したスクリーニングシステム(格付けシステム)により企業の環境経営度を評点化して優れた企業を選定し、得点に応じて3段階の適用金利を設定するという、「環境格付け」の専門手法を導入した世界で初めての融資制度です 。

    本制度の特徴としては、業種による環境対策の相違を反映したスクリーニングシートのバリエーション展開を図っている点があげられます。現在、製造業3種類、非製造業10種類のバリエーションが用意されていますが、本件においては、「製造業・素材型」バージョンを適用しています。また、スクリーニングシート設問内容は環境関連法制度等の変更に伴い適宜見直しを図る方針で、本年度は京都議定書発効に伴い地球温暖化対策、欧州法規制強化の動きに対応し化学物質管理、さらに土壌汚染対策などのリスクマネジメント等の設問を強化しました。

  3. 今回の評価対象となった呉羽化学工業(株)は、福島県いわき市に主力工場を有する化学メーカーで、「NEWクレラップ」等の生活用品、樹脂製品、エンジニアリングプラスチック、医薬品、農薬等の製造・販売を行っています(本社:東京都中央区、設立:昭和19年)。

    同社の環境経営は、オール呉羽RC委員会のもと、レスポンシブル・ケア活動を推進してきた結果、バランス良く展開している点に特徴があります。中でも、主要生産拠点である福島県いわき市における地元密着型工場としての特性から、地域社会への配慮を意識している点、「地域との共生」を重視している点が特筆に値するものと、当行では評価しています。具体的には、地域住民を始めとするステークホルダーとのコミュニケーション活動などを積極的に推進していること、蛭田川の環境保全に向けて工場排水浄化のための最新設備の導入や河岸美化活動に注力していることなどが挙げられます。また、呉羽グループ全体でコンプライアンスを実践するための体制整備をしていること、関係会社の呉羽環境とともに資源有効利用対策を促進している点も同社の特徴です 。

  4. 化学業界は、レスポンシブル・ケア活動に沿った形での環境経営を展開しており、有害化学物質の排出削減に着実に取組んでいるほか、積極的な省エネルギー施策等を展開しています。化学業界における環境配慮型経営の進展は、温暖化対策、循環型社会の形成、水資源対策など、多くの側面でわが国の環境対策のレベルアップにつながるため、当行としても積極的に支援して参る所存です 。
  5. 当行では、本制度について大手から中堅クラスに至るまで多様な企業の評価をしており35件(本件を含む)の融資(保証)を実行しています。業種構成も、本件に代表される素材型の製造業を始め、小売業やリース業など非製造業へも一層の広がりをみせています。今後も、多様な業種特性を踏まえて、適切な環境配慮型経営の評価に努めて参ります。

    弊行は、今後とも東北地域における様々な企業による環境に配慮した取り組みを、一層推進して参ります。


(参考)制度の仕組み

(1)特色

  1. 従来のような「エンド・オブ・パイプ」(環境汚染物質の排出時における適正処理)型の対応とは異なり、環境配慮型経営に必要な事業資金全体(設備資金、非設備資金)を支援します。
  2. 製造業・非製造業のさまざまな業種に対応できるよう、いくつかの業種に対応した質問票(製造業は素材型・加工組立型、非製造業は運輸交通、卸小売、建設、エネルギーなど)を用意しています。
  3. 中堅企業等については、環境パフォーマンス項目については未達でも、契約において今後の改善を約するなど、環境経営の推進に向けた強い意欲が認められる場合には特別に加点する(エンゲージメント)などの仕組みを組み込んでいます。
  4. 「経営全般」、「事業活動」、「環境パフォーマンス」の3つの事項を対象に126の設問を設定しており、通常項目が101、加点項目が25の構成です。このうち、加点項目は際だって優れた企業を念頭に設定された設問です。 このように、企業の取り組みを包括的に評価することが可能となっています。
  5. 設問内容は、環境関連法制度等の変更に伴い適宜見直しを図ります。本年度は、京都議定書発効に伴い地球温暖化対策、欧州法規制強化の動きに対応し化学物質管理、さらに土壌汚染対策などリスクマネジメント等の設問を強化しました。

(2)評価の方法

  1. 環境格付けの手法に従い、取組みが進んでいればより有利な条件での調達が可能になるような設計となっています。
  2. 配点は、250点満点ですが、このうち通常項目が200点、加点項目が50点満点です。
  3. この250点満点に対し、対象として適格と認定するラインは120点以上(中堅企業等で110点以上)です。また、環境負荷低減に関して最低限の定量的な効果を求めるという観点から、パフォーマンス関連事項で40点以上(中堅企業等で35点以上)の得点を条件としています。
  4. 対象として適格となる得点を得た企業は、さらにその水準によって次の3つのグループに分類され、それぞれ異なった金利水準が適用されます。
評価 得点 適用金利等
環境への配慮に対する取り組みが特に先進的と認められる企業 156点以上 政策金利 III
環境への配慮に対する取り組みが先進的と認められる企業 140~155点 政策金利 II
環境への配慮に対する取り組みが十分と認められる企業 120~139点
(110~139点)
政策金利 I
環境への配慮に対する取り組みが上記に該当しない企業 120点未満
(110点未満)
対象外

注) ( )内は中堅企業等

以上