日本政策投資銀行

  • News Release
  • 平成20年2月
  • 日本政策投資銀行 地域振興部
    地方開発部

諏訪圏で「地域づくり健康診断」報告会を実施

日本政策投資銀行では、平成20年2月14日に諏訪圏(岡谷市・諏訪市・茅野市・下諏訪町・富士見町・原村)における「地域づくり健康診断」報告会を実施致しました。長野県のほぼ中央に位置し、東西に約30km、南北に約35kmと広い圏域を有する諏訪圏は、戦前から戦後にかけて製糸業から加工組立型製造業への業態転換を果たし、精密機械工業に代表されるものづくり産業を中心として発展してきた都市圏です。また、諏訪湖や八ヶ岳山麓等の豊かな自然環境、温泉、諏訪大社をはじめとする歴史的建造物から高原野菜などの地場産品まで、数多くの地域資源を擁しています。

◆地域づくり健康診断とは

日本政策投資銀行地域診断チームが地域に赴き、統計データ等に基づく客観的な指標の独自手法による分析と市街地の実査や地域の皆様へのヒアリングから得られた情報をもとに地域の現状分析を行い、その結果を題材にディスカッションを通じて、地域の皆様に自ら課題と可能性を発見していただくプログラムです。診断を実施することで、地域の皆様の間で認識の共通化が図られ、“次の行動(プロジェクト創出等)”を起こす契機としていただくことを期待しています。

◆事前ヒアリングおよび現地実査

最終報告会(ワークショップ)に先立ち、1月17日から数回にかけて諏訪圏域内の民間企業、金融機関、行政機関等においてヒアリングを行うとともに、諏訪圏域の主要駅前、市街地、郊外大型店など商業施設の立地状況、諏訪湖周辺・八ヶ岳山麓の観光資源、交通アクセス等の現地実査を行いました。

◆ワークショップの模様

諏訪広域連合主催の「諏訪地域広域行政研修会」として、2月14日にホテル紅やで実施された報告会には、諏訪圏6市町村長をはじめ、市町村議会議員、行政職員、商工会議所関係者、一般住民の皆様約300名にお集まり頂きました。

今回の診断では、諏訪圏における人口動態や雇用、また諏訪広域連合からご依頼があったテーマである観光や農業の状況などについて分析したうえで、次のような地域課題を抽出しました。

「まちの“顔”である駅前市街地の衰退」

賑わいの中心は駅前市街地から郊外に移ってきており、衰退が進む駅前周辺の状況は、ビジネス客を含む来訪者にとって重要な“顔=表玄関”のイメージを低下させていること。

「ものづくり産業への依存からの脱却」

高い技術で国際競争力の強い主要産業であり、歴史ある諏訪圏のものづくり産業の雇用は、長年にわたり減少傾向にあることから、豊かな自然・温泉・名所旧跡のみに頼らない観光・集客産業や、多様な一次産品を加工(二次産業)、販売(三次産業)する農業関連産業の育成が急務であること。

「地域の潜在力を活用しきれていない観光・集客産業」

来訪者には市町村を越えて広域に点在する観光資源の全体像が見えにくいことや、諏訪圏の重要な資源である日本有数のものづくり産業資産等の歴史文化をきちんと語れる人材の存在が必要であり、また、ビジネス客を含む来訪者の消費を促すためには、地元産品を地元で提供する仕掛け(飲食機能)が必要であること。

「“諏訪”の知名度が地元で十分に評価されていないこと」

個性ある市町村の集合体(=諏訪圏)としての価値を、来訪者よりも、まず地元住民に理解してもらうことが必要であり、既にものづくり分野で行っている市町村を越えた広域PR戦略の農業や観光・集客産業での実践が求められること。

これらの課題への対処策として、全国の先進事例を踏まえつつ次のようなご提案を行いました。

  • ○「地元・来訪者双方の目線を意識した賑わいづくり(例:駅前市街地の空き店舗を活用した地元客・来訪者が利用する特産品直売所(市街地版「道の駅」)等)」
  • ○「地場産品活用型産業の構築(例:地場産品を加工し、来訪者に販売・提供する裾野の広い産業(=雇用の受皿)の構築、「諏訪ものづくり観光」(産業観光)の育成等)」
  • ○「異なる地域資源の組み合わせによる新たな魅力創出(例:諏訪の魅力(自然景観・歴史文化・生活様式)を再認識し、その奥深さを来訪者にわかりやすく伝えること等)」
  • ○ 「全国に知られた“諏訪”のブランド価値の再認識・共有(例:諏訪のブランド力を活用し、共通ホームページ等で“工業・観光・イベント・宿泊・行政”など様々なキーワードを組み合わせた来訪者の目線での圏域情報の発信等)」

◆今後の展開について

今後は、診断結果により浮き彫りにされた地域課題について地域の皆様の間で議論を深めるとともに、具体的な動きに結びつけていくことが重要であり、私どもの「地域づくり健康診断」が少しでもそのお役に立てれば幸いでございます。弊行では「地域の新たな可能性」が「具体的な地域振興プロジェクト」に結実するよう、これからも地域との協働を行って参ります。

以上