Vol.28
防災・レジリエンスへの世界的な関心の高まりと
防災関連産業の市場拡大への期待
[執筆者]
株式会社日本経済研究所
産業戦略本部 海外調査部 副主任研究員
原田 絵美
「仙台防災枠組2015-2030」と防災事前投資の推進
2024年1月に発生した能登半島地震から丸2年が過ぎ、同年9月に発生した能登半島豪雨による被災も含め、様々な知見や技術を活用した復旧・復興の取り組みが進められている ※1 。また、2011年3月に発生した東日本大震災からまもなく15年を迎えようとしている。
震災後の2015年3月には第3回国連防災世界会議が仙台市で開催され、「仙台防災枠組2015-2030」が採択された。「仙台防災枠組2015-2030」には4つの優先行動と7つのターゲット ※2 が掲げられており、その普及推進や国境を越えた産官学金および市民の防災に関する知見を集約し、共有する国際的な場として、2017年からは隔年で世界防災フォーラムが開催されている。
「仙台防災枠組2015-2030」では優先行動の1つとして「レジリエンス(強靭化)のための災害リスク削減への投資」が掲げられており、罹災後の社会的コストや公的資金支出の発生を低減し、社会全体の人的・経済的損失の軽減につなげていくことが期待されている。国連防災機関(UNDRR)の資料 ※3 によると、事前に1ドル投資することで、復旧費用を最大15ドル節約できる高い費用対効果が示される一方で、現状の事前防災投資は国際開発資金における防災投資全体の約5% ※3 にとどまっており、その拡大に向けた取り組みが期待されている。
防災・レジリエンスや気候変動適応への
世界的な関心の高まり
近年、気候変動に起因して起こる豪雨や干ばつ、山火事等の災害の頻発化、激甚化リスクの増加により、地震や津波等の災害リスクの低い国々や地域でも防災、レジリエンスに対する関心が高まっている。
2025年3月に開催された世界防災フォーラムおよびWorld Bosai Expoでは、「地球温暖化と気候変動による災害リスクの増大、および未来の展望」をテーマに掲げ、防災の専門家だけでなく、企業や行政、個人等が日常生活の中で災害リスクを削減・低減していくための知見や技術の共有が行われた。
2025年10月には南アフリカで開催されたG20 DRR Working Group Meetingで、災害リスク削減について活発な議論がなされ、同年11月にブラジルで開催された国連気候変動枠組条約COP30でも、その主要な議題の1つとして気候変動への適応について議論が行われた。
日本は、多くの被災経験の中で培った知見や技術を国際社会と共有し、激甚化・頻発化する災害リスク削減の対応強化に貢献していくことが求められている。かかる状況の中、日本が持つそれらのノウハウや技術等を踏まえた防災・レジリエンス分野の国際標準開発も活発になっており、地震計や災害食、リスクファイナンス等の国際標準(規格)の開発が進められている。

World Bosai Expoでは、防災力の向上に貢献する様々な企業の防災技術の展示や地震動体験装置等の市民参加型イベント等も開催。
(世界防災フォーラム2025にて筆者撮影)
防災関連産業の市場拡⼤への期待
世界各地で⼤規模な⾃然災害が多発し、今後も防災・レジリエンスに関するニーズや関連市場が国内外で拡⼤すると⾒込まれる中、新技術等による課題解決および海外を含む防災産業市場の確⽴や海外市場の開拓が期待されている。
強靱な社会の構築に向けて、防災関連の多くのスタートアップ企業も誕生している。これまで、多くの防災用品やサービスは、日常使いせず、⾮常時のみに使うものであり、導入や維持コストも課題の1つとなっていた。そのため、⽇常⽣活にも便利に活⽤でき、⾮常時にも役⽴つ「フェーズフリー」商品・サービス等の拡大は、導入コストや維持コストの軽減につながり、提供者側・使用者側ともにWin-Winの関係を築くことができる糸口の1つとなるのではないだろうか。
防災・レジリエンス分野への世界的な関心が高まる今、防災・レジリエンス分野を通じた国際貢献や防災関連産業の市場開拓・市場拡大を見据えた未来について考えていきたい。
防災関連産業スタートアップ企業の商品・サービスの事例 ※4

※1国土交通省「令和6年能登半島地震からの復旧・復興状況と今後の見通し(令和7年9月末時点)~被災者の方々の暮らしと生業の再生に向けて~」
※3UNDRR、「International Cooperation in Disaster Risk Reduction, 2021」
※4経済産業省「令和6年度産業経済研究委託事業 レジリエンス社会の実現に向けた産業政策の検討に関する調査 調査報告書」より(株)日本経済研究所が作表。
この記事は季刊DBJ No.58に掲載されています
季刊DBJ No.58