- News Release
- 平成16年11月8日
株式会社巴川製紙所に対して「地震災害時発動型のファイナンス」を組成
- 三井住友海上火災保険株式会社(以下「三井住友海上」)、株式会社静岡銀行(以下「静岡銀」)、日本政策投資銀行(以下「政策銀」)の3者はローン・アレンジャーとして協調し、株式会社巴川製紙所(以下「巴川製紙所」)に対し、巴川製紙所のアドバイザーとして商品設計を主導したみずほ証券株式会社(以下「みずほ証券」)と協力し、大規模地震を想定したコンティンジェント・デット・ファシリティ(地震災害時融資実行予約契約、以下「CDF」)及びシンジケート・ローン(※1)(以下、「シ・ローン」)を組成しました。
- 本件によって、巴川製紙所として、東海地震など大地震発生時に、復旧投資等を速やかに実施するための資金調達の確実性を高めます(※2)。首都圏や東海地方を対象とした企業向け地震保険の確保が困難になる中、必要不可欠な震災復旧資金の一部を借入の形で予防的に手当てし、地震発生後のキャッシュフローを補完できる点に特徴があります。
- 静岡県に製造拠点を有する巴川製紙所では、来るべき東海地震への対策を重要経営課題の一つとしてとらえ、人命対策はもとより、耐震補強工事の実施、災害対策体制の整備および行動指針の策定等、全社をあげて震災リスクの軽減化を推進しており、財務的にも現預金の一定金額以上の積み増し等を通じて被災後に安定的に生産を継続するための資金調達手段の確保に努めていました。
- 本件は、応用アール・エム・エス株式会社によるリスク分析を通じ、バランス・シートに内在する地震リスクを定量的に捉え、CDF及びシ・ローンを組成しています。結果として、震災に対応した資金調達手段の確保を通じ、資金効率を低下させることなく、震災に対する財務の安定化に寄与しています。このような取組みは、新たな金融手法を使った先進的な震災対策として、国内外の投資家から高く評価されるものと期待され、同様の課題を抱える企業のリスク管理手法として参考になるものと考えられます。
- 今後、みずほ証券、三井住友海上、静岡銀及び政策銀は、かかる先進的な取り組みを通じ、震災対策をはじめとした地域固有の経営課題について、それぞれが有する専門的ノウハウやネットワークを通じた多面的な連携によって企業の資金調達を積極的に支援していく方針です。
- ※1 シンジケート・ローンとは、協調融資銀行団が同一の契約に基づいて行う貸付形態を言います。
- ※2 通常のコミットメント・ライン契約(特定融資枠契約:借入人の申込に応じて一定の枠内で借入が可能な契約)では、地震等の大規模天災時には金融機関の貸付義務が免除される条項が置かれることが一般的です。
【案件の概要】
①地震災害時融資実行予約契約 及び ②シンジケート・ローン契約
・組成総額 | : 40億円 (②については、政策銀保証部分30億円, 非保証部分10億円) |
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・資金使途 | : 災害復旧資金 |
・ オリジネーター | : 巴川製紙所(アドバイザー:みずほ証券) |
・ アレンジャー(ローン主幹事) | : 三井住友海上、静岡銀、政策銀 |
・ 契約締結日 | : 平成16年11月5日(金) |
◆アドバイザー及びアレンジャーの役割
・ みずほ証券
地震リスク分析を定量的に応用する本件スキームのストラクチャーをオリジネーターに提案し、スキーム組成全般をアドバイス。オリジネーター側にて投資家その他の関係人との調整を主導。
・ 三井住友海上
損害保険会社として世界的な視野で地震リスク取引市場および地震リスクモデル(※3)に対する知識をもってスキーム構築に協力。シンジケート団において投資家として資金供給(政策銀保証無)。
・ 静岡銀
本件のエージェントを務め、震災時の借入申込を工夫し資金実行できるよう予め連携体制を整備。シンジケート団において投資家として資金供給(政策銀保証無)。
・ 政策銀
地震リスクの定量評価を前提として、巴川製紙所の信用力等を分析し、融資条件を建て付けていく形で協力。シンジケート団の最大金額について債務保証。
※3 応用アール・エム・エス社が提供するモデルRiskLink®はスタンフォード大学で開発され、RMS社で実用化された自然災害損失予測システムです。世界各国における、さまざまな自然災害(地震・台風・ハリケーン・竜巻・ひょう・洪水など)のリスク分析および評価に用いられています。
◆ 巴川製紙所( URL:http://www.tomoegawa.co.jp )
本社 | :東京都中央区京橋 主力工場:静岡工場(静岡市用宗巴町)、清水工場(静岡市清水) |
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主力製品 | :IC部材、液晶用フィルム、トナー、特殊紙など |
16/3期売上高430億円(連結)
(注) | ![]() ![]() 東海地震は、1944年東南海地震にて駿河湾が震源域となっていないため、安政東海地震(1854年)以来の歪が蓄積しているとの説に基づくと、近年の発生が危惧されている。 |
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(資料) | 応用RMS・巴川製紙所「地震リスク分析結果報告書」より抜粋 (過去の地震について出典は、宇佐美龍夫(2003)『最新版 日本被害地震総覧』) |
以上