日本政策投資銀行

  • News Release
  • 平成18年2月7日
  • 日本政策投資銀行
    中国支店

株式上場企業分布から考える中国地方製造業の姿

日本政策投資銀行中国支店(支店長:真野貴昭)は、中国地方の基幹産業である製造業の活性化を通じた地域の活力創出を「中期地域づくり活動ビジョン」に掲げ、各種活動に取り組んでおります。この度、調査レポート「株式上場企業分布から考える中国地方製造業の姿」を取りまとめました。

株式の上場は、経営者や企業にとっては一つの目標、また新たな経営ステージのスタートポイントと捉えることが出来ます。株式を上場することは、上場資格要件を満たす経営内容や成長性を備えた企業であると認められたことと同義であり、このような企業がどの程度誕生しているか、あるいは本拠を構えているかは、地域の経済的活力を測るうえでの一つのバロメーター(尺度)となると考えられます。

そこで、中国地方が強みを有する産業である「製造業」を中心に、当行の調査部と共同で、各地域別にみた株式上場企業数(登記上の本社所在地ベース)に着目して、地域の姿やそこから導き出される課題等について考察を試みました。

要旨

<分析結果>

  1. 1. 上場企業本社の三大都市圏(全体の81%)、特に東京への一極集中、また地域圏で創業しても、成長の過程で首都圏等に本社機能を移す事例が相当数存在することが再確認された。
  2. 2. 地方圏でみると、中国地方は人口当り上場企業数ベースで、全国地方圏平均を若干上回る水準にあり、甲信越、北陸には及ばないものの、九州、四国、東北等を上回る水準にある。
  3. 3. 業種構成を全国と比較すると、1製造業では化学のウェイトが高く、電気機器が低い、2非製造業では小売業のウェイトが高い一方、情報・通信業に分類される上場企業が存在しない等の特徴が見られる。
  4. 4. 上記は、主に山陽3県の集積によるもので、なかでも広島県の集積度が高い。広島県内では、広島市周辺と、福山市を中心とする備後地区の二つの集積が確認される。
  5. 5. 1991年以降の上場企業は、中国地方では広島市周辺、岡山市・倉敷市周辺、備後地区に集中している。前二者が非製造業中心であるのに対して、後者は製造業中心である。
  6. 6. 備後地区は、製造業上場企業の集積度が全国的に見ても静岡県・西遠地区に次ぐ高い水準にある。加えて、前述のとおり比較的近年に製造業の上場が相次いでおり、イノベーション力の高い地域であることが確認される。
  7. 7. 備後地区は、地理的・歴史的条件等により形成された独立性、自立性、積極性といった起業家マインドが、地域の産業基盤や資源と有機的に結びつき、高いイノベーション力を発揮している。加えて、従来は例が少ないといわれていた地域内ネットワーク形成の動きも見受けられるなど、地域として進化し続けていることが確認される。

<分析結果から導かれた中国地域の戦略的課題>

  1. 8. 地域間競争に勝ち抜くためには、備後地区で見られるような起業家的マインドやマーケティング的発想を地域に根付かせ、地域資源の活用・底上げを図っていく地道な努力が必要である。このようなマインドは、「経営の科学」として移植・再現が可能であり、そのエッセンスを近似的に体得できるように、体系的なビジネス教育システムの整備・充実を地域政策として進めていくことが重要である。
  2. 9. 地方圏にて起業、上場を果たしても、成長過程において、東京などへ実質本社機能を移転させてしまう事例が相当数存在する。地域の重要な資源を域内に留め置くためには、ビジネス、生活両面で魅力ある環境づくりを進めていくことが必要であるが、特に、変革や先駆を尊ぶ地域風土の醸成を進めていくことが重要である。
  3. 10. 中国地方の強みである製造業を一層伸ばしていくことに加え、経済のサービス化も踏まえた対応が必要である。特に、得意技であるものづくりで蓄積された知識、経験、ネットワーク等を活かし、製造業周辺のビジネス支援型のサービスを重点的に地域内にて育成・誘致するような政策を、都市部地域を中心に進めていくことが重要である。

以上