日本政策投資銀行

  • News Release
  • 平成17年5月25日
  • 日本政策投資銀行

日本政策投資銀行、鹿児島銀、山形銀が
会社整理終結のためのファイナンスを実施
~政府系金融機関、地銀、事業再生ファンド、
事業スポンサーが一体となり法的手続終結を支援~

【当社概要】

借入人 : 日本プレシジョンキャスチング(株)(代表取締役社長:瀬戸山 惠)
本社 : 千葉県長生郡長南町
事業内容 : 精密鋳造業
資本金 : 98百万円、売上高:1,228百万円(17/3期)、従業員:120名(17/3末)
融資金額 : (長期タームローン)150百万円(日本政策投資銀行、鹿児島銀行)
 (当座貸越枠)50百万円(山形銀行)
  1. 日本政策投資銀行(総裁:小村武)、鹿児島銀行(頭取:大野芳雄)及び山形銀行(頭取:丹羽厚悦)(以下、3機関を「協調金融団」)は、商法上の会社整理手続(平成9年11月会社整理手続開始申立)による再建中であった日本プレシジョンキャスチング(株)(以下、「当社」)に対して、会社整理による債務整理終結のためのEXITファイナンス(*1)を実行しました。
  2. 当社は、会社整理申立以降、人員の削減を含むリストラを敢行するも、精密鋳造品の需要の大幅な減退に固定費削減の速度が及ばず、二度の整理計画の変更を余儀なくされていましたが、収支改善のため高付加価値の部品の製造に特化してきているところです。
  3. 協調金融団は、今般の長期貸付及び融資枠設定により、当社の金融取引の正常化、仕入業者を始めとする債権者に対する信用補完、当社の資金繰りの安定化、を図るため、当社の以下の点を踏まえ、当社の経営の自律化を支援するべく資金供与に至ったものです。
    1. 当社は、複雑な形状を継ぎ目なしに製造することのできるロストワックス製法(*2)を駆使していることから、強度、耐熱面で比較優位性を有しており、世界最大の航空機メーカーの指定工場となっているなど、極めて高い技術力が認められること
    2. 事業再生ファンドのルネッサンスキャピタルマネジメント(株)(以下、「ルネッサンスキャピタル」)が、整理債権の集約を行った上で、債権放棄、 DDS(Debt-Debt Swap)、DES(Debt-Equity Swap)及びエクイティ出資を実施しており、実態上、借入金の負担が大幅に圧縮されていること
    3. 事業スポンサーとして、水力発電水車プラント機器製造業を営む芦野工業(株)(本社:山形県山形市、会長:芦野政五郎)が当社支援(出資・代表者派遣)を明確に打ち出していること
  4. 本件融資は、当社の資産及びキャッシュフローに着目したファイナンスであり、スポンサーや新経営陣の保証を求めていないこと、地盤の異なる地銀が短期と長期とに資金の階層を分けそれぞれの役割を補完する初のEXITファイナンスであること、当社の精密鋳造業の事業性を評価した上で、業績に応じて金利スプレッドを変動させる条項(グリッド金利条項)を設けたこと、協調金融団による適切なモニタリング等の手法を盛り込んだコベナンツ(誓約条項付)ファイナンスとしたことを特徴としており、今後の中堅企業の事業再生融資のモデルケースの一形態になると考えられるものです。
  5. 日本政策投資銀行、鹿児島銀行、山形銀行は、地域社会において有用な事業基盤を有する企業の事業再生を引き続き積極的に支援していく所存です。
* 1 「EXITファイナンス」とは
民事再生手続、会社更生手続、会社整理手続下等にある企業が、自社の債権者が有している再生債権、更生債権等を前倒しで一括弁済するための資金を調達するための融資。一括弁済によって法的手続から脱却し自立した経営が可能となることに加え、取引先からの信用力アップや銀行取引正常化なども期待できる。
* 2 「ロストワックス製法」とは
金型で成形したワックスモデルを金属に変える精密鋳造技術。製作する鋳物の模型に鋳型の中で消失するワックスを使用するのがこの精密鋳造法の特徴で、機械加工で製作することが難しい複雑な形状の製品に適した製法である。鉄系、アルミ系、硬くて切削困難な金属、脆くて鍛造が難しい合金など素材を選ばない上、寸法精度と機械的性質に優れた高品質の鋳物を一体鋳造で製造することができる。この製法による鋳物は、形状、寸法が完成品に近い仕上がりとなり、他の鋳物製造法に比べ、仕上がり後の切削加工をほとんど要しないのが特長である。

【本案件スキーム】