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所長挨拶

ご挨拶

当研究所は、1964年7月、高度成長期の日本経済にとって重要度の高い設備投資や関連する諸問題を中立的視点から研究し、わが国の経済社会の発展に貢献するという、いわば「理論と実践の融合」を目的に、下村治博士を初代所長に迎え、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)の一部局として設立されました。以来、半世紀以上にわたり、学界等との密接な連携のもと中・長期的な視点からの実証的な研究に取り組んで参りました。この間、研究対象は、経済一般や設備投資を中核に据えつつ、経済社会が直面する課題の多様化に応じて、金融・財政、企業・財務・会計、産業構造・労働、地域開発など多方面に広がってきました。その一環として、持続可能な経済社会の構築(サステナビリティ)にも早くから着目し、1993年に「地球温暖化研究センター」を開設し、気候変動問題に代表される、宇沢弘文先生が提唱された社会的共通資本(自然資本、物的インフラ、教育・医療・金融・企業システムなどの制度資本)を研究の重要な柱の1つに据えています。

2008年10月に日本政策投資銀行が株式会社化した後も、設備投資研究所はアカデミックかつリベラルな研究機関としての性格を堅持し、「地球温暖化研究センター」「経営会計研究室」「金融経済研究センター」の3セグメントが、大学の先生方や各界有識者と連携しながら、それぞれの立場から経済社会のサステナビリティに貢献すべく研究に取り組んでいます。

地球温暖化研究センターでは、経済活動と環境の関係や社会的共通資本について基礎的研究を進めています。近年では、サステナブルファイナンスを巡る活動が活発化する状況を踏まえ、変化する時代のニーズに即した視点を重視しつつ、気候変動をはじめとするESG課題が企業経営に与える影響など、経済社会の持続的発展に貢献する課題を積極的に研究してまいります。

経営会計研究室では、会計制度や企業経営をメインとする研究に取り組んでおり、今後も、更なる深耕を図ることに加え、これまでの成果をもって持続可能な経済社会の構築に貢献できるよう、連携の広範化や社会実装など未来に向けた価値創造基盤の整備にも取り組んでまいります。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のような企業開示の新たな動向についても、研究者や実務者のネットワークを生かした情報収集やこれまでの研究の蓄積を活用し、対外的な情報発信についても引き続き尽力してまいります。

金融経済研究センターでは、東京大学や一橋大学との共同シンポジウム、東京経済研究センターの研究会への参画など、大学・外部機関との連携を軸とした情報の生産や発信に取り組んできました。今後も研究者などのネットワークを生かして、デジタル分野を中心に加速する技術革新への対応や多様化、複雑化するリスクに対するレジリエンスの確保など、日本経済や日本企業が持続的な発展を図るうえでの課題やニーズについて、研究活動を推進してまいります。

各セグメントの活動を通底する人的資本とそのネットワークの充実も設備投資研究所の大きなタスクの一つです。研究活動に関しては、下村博士の功績に敬意を表して1990年に開始した外国人客員研究員の招聘制度「下村フェローシップ」により、世界中の大学・研究機関から累計40人以上の有力研究者を招聘し研究交流を行っているほか、研究所の設立50周年を記念して英文研究誌を創刊し、研究所に関わりのある日本の研究者の研究成果を世界に発信しています。また、高度な金融業務を担う人材育成の一環として、研修・教育プログラム「DBJ金融アカデミー」を全講座オンライン形式にて開講致しています。若手に加え、中堅・シニア層を含めた全ての階層を受講対象とし、無形資産としての人的資本が注目される中、大学の先生方や産業界など設備投資研究所が築いてきたネットワークを活かして多様なニーズに応じた社会人の学び直し(リカレント教育)を推進しています。

Covid-19はもとより、気候変動、金融危機、地政学リスクなど、不確実性が増している今日、学界と社会が一体となり、理論と実践を融合させてサステナビリティというコンセプトに新たな境地を開くことへの期待がますます高まっています。当研究所は、学界と社会の架け橋となって、持続可能な社会の実現へ向けて一歩先を行く方向性を提示し続ける研究所を目指してまいります。皆様方からの一層のご指導、ご支援およびご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

設備投資研究所長  竹ケ原 啓介