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BUSINESS REPORT

DBJのテーマ

産業DBJ

産業

SHO OBINATA

大日方 翔(写真左)

PROFILE

企業金融第2部/2015年入行
商社業界担当、DBJアセットマネジメント(株)出向を経て、関西支店では多様な産業に携わる。現在は航空宇宙産業、重工業、エレクトロニクス産業を担当。

KAZUHIRO IKEDA

池田 和寛(写真右)

PROFILE

企業金融第1部/2014年入行 ※取材当時
入行以来、一貫して鉄鋼・素材・化学と日本の産業分野を担当。2年間の官庁出向時には産業政策の企画立案にも携わる。

かつてない転換期にある
日本のものづくりが直面する課題とは?

池田

大日方とはプライベートでの付き合いも深いから、こうして改まって話すのは気恥ずかしいところだけど、今日はよろしくね。

大日方

こちらこそ、よろしくお願いします。では早速まじめに。池田さんは、最近の産業界を取り巻く環境変化の中で、何に注目していますか?

池田

そうだね。ポストコロナ、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、サステナビリティなど色々なキーワードがあげられるけど、僕が一番大きな変化として注目しているのは、業種の枠組みを超えた連携かな。

大日方

異業種間の連携というポイントについて、私も同感です。これからの時代、革新的なビジネスを創出していくためには、1社だけの力では限界があります。

池田

たとえば、GAFAなどのテック企業が自動運転車の開発を始めるなど、既存の業種を超えたところから新事業が生まれている。日本の企業でも、他業種との連携を進めたり、自社の事業ポートフォリオを抜本的に見直したり、新しい動きが目立ち始めているよね。

大日方

そうなると、当然DBJにも新たな変化が必要になってきます。

池田

それを象徴するのが、2020年に新設された「インダストリー本部」だね。製造業を担当する企業金融第1部(担当業種:化学、素材、金属等)と第2部(担当業種:情報通信、電気機械、重工、自動車等)を横串でつなぐ組織で、各業種の担当者を集めて異業種間連携に向けた意見交換を行う会議や、全行向けに各業界の最新動向を発信して、連携に向けた意見を募集する勉強会の企画などを行っているよね。

大日方

DBJでは、産業分野について業種ごとに担当チームが分かれていて、それぞれにとても深い知見を蓄積している一方、その知見が担当チーム内にとどまってしまい、お客様に異業種との連携に関する提案があまりできていなかったという課題もあったのかなと思います。インダストリー本部の活動を通し、従来のチームの枠組みを超えて連携することができれば、これまでのDBJとはまた違った新しい力を発揮できると思います。

池田

そのとおりだね。インダストリー本部の目標である「業種の枠を超えた新産業創造」に向けて、これからも一緒に頑張っていこう。

ゼロからイチへ
「空飛ぶクルマ」プロジェクト

池田

象徴的なプロジェクトの1つに、大日方が担当している「空飛ぶクルマ」があるよね。

大日方

この「空飛ぶクルマ」は、世界的には「eVTOL」(electric Vertical Take-Off and Landing/電動垂直離着陸機)と呼ばれ、電動で飛行するヘリコプターのようなモビリティです。垂直に離着陸できるため、滑走路など大規模なインフラが不要で、電動化と操縦の自動化により、ヘリコプターと比べると製造・運用コストを抑えることが可能です。そのため、今後広く普及することが期待されていて、世界中で開発競争が繰り広げられています。欧米では最速で2024年、日本でも大阪万博が開催される2025年の旅客輸送サービス開始を目指しています。

池田

どのような利用が見込まれているの?

大日方

米国では、都市部での交通渋滞を解消するためのソリューションとしての利用が考えられています。日本の場合は、地方都市間や離島・過疎地を結ぶ社会インフラとしても期待されています。

池田

この取り組みにおいて、DBJはどんな役割を果たせるのかな?

大日方

まず一つ重要な役割としては、DBJならではの中立性やパブリックマインドを発揮して、プロジェクトに参画する事業者の結節点としての役割を担うことがあげられます。「空飛ぶクルマ」の実現には、機体の開発に加えて、離着陸場の設置や運航システムの構築から不測の事態に備えた保険まで、多様な業種のノウハウの結集が必要になります。まさに業界を超えた協業が成功の鍵を握っているのです。現在この新産業に対し様々なプレーヤーが参画を検討している状況で、私たちのチームでは情報発信にも力を入れています。日々めまぐるしくグローバルレベルで動きがありますが、それらを客観的に整理し業界の最新動向を押さえた上で、事業者や自治体に対し私たちなりの見解を提供することで、一人でも多くの人に「空飛ぶクルマ」に関心を持ってもらうということも「つなぐ」役割だと感じています。

池田

金融機関としてのファイナンスも欠かせない役割だよね。

大日方

もちろんです。現に「空飛ぶクルマ」を開発するベンチャー企業、(株)SkyDriveに対して出資を行うなど、事業開発の進捗に合わせ積極果敢にリスクマネー供給を行っています。日本発の機体開発メーカーを創出することは、日本の産業界にとって悲願とも言える目標です。ただ、「ファイナンス」という従来の枠組みばかりにとらわれてしまうと、ともすると自分たちが動ける範囲が限られてしまいますので、この新産業の創造においては、あらゆることに挑戦してみようと思っています。「空飛ぶクルマ」を日本社会に実装するため、また今後の日本経済の成長を牽引する新しい産業として構築するため、持てる力をすべて注いでいきたいです。

画像:

化学産業の未来に求められる
多面的なソリューション

大日方

池田さんが主に担当している化学業界の最近のトピックとしては、やはりプラスチック資源循環や、カーボンニュートラルでしょうか?

池田

そうだね。まずプラスチック資源循環について、海洋プラスチック問題などを契機にして重要性が高まってきているけれども、1社単独で取り組みを進めることは難しく、たとえば「プラスチックゴミを集めてくる会社」「再資源化処理をする会社」「再資源化製品を買って消費者に販売する会社」といった異業種間での連携が不可欠だと思っています。一つ連携事例を紹介すると、環境負荷の少ない効率的な使用済みプラスチックの再資源化技術の開発を進めている(株)アールプラスジャパンという会社があり、プラスチックの原料メーカーからそれを利用する消費財メーカーまでが出資者として名を連ねていて、バリューチェーン全体でプラスチック資源循環のプラットフォーム確立に向けて連携しています。DBJも2021年に同社に出資を行っているけれども、この案件については大日方が詳しいよね。

大日方

はい。私が関西支店にいる時に担当していたお客様と資源循環について議論を重ねる中で、このプロジェクトへの資本参加についてお声掛けいただいたものです。当時、上司からプラスチック資源循環に関する関西エリアでの取り組み支援の検討について営業企画の段階から一任してもらいました。インダストリー本部にいた先輩たちの協力も得ながら、必死になって関西の様々なお客様とディスカッションさせていただいた結果、案件につなげることができたのです。産業界のど真ん中の課題であったプラスチック資源循環の解決に深く関与できたことは、自信になりましたし、何より大きなやりがいを実感しましたね。

池田

これはまさに、インダストリー本部が目指している「業種の枠を超えた新産業創造」に関連する取り組みだね。
次に、もう一つトピックであげてくれたカーボンニュートラルに関してだけど、製造業の中では化学産業は鉄鋼業に次いでCO2を排出していて、政府の2050年カーボンニュートラル目標に向けて何らかの対応が求められています。カーボンニュートラルを実現するためには、省エネ設備の導入や革新的な技術の開発など多額の資金が必要になるので、DBJとしても資金面でサポートをしていきたいと思っています。一方で、CO2を資源として有効利用するための研究開発も進めていて、CO2を排出する他業種との連携も期待されている産業でもあるんだよね。

大日方

それは興味深い話ですね。具体的にはどのような取り組みなのですか?

池田

火力発電所などから排出される大量のCO2を、化学反応によって化学原料や燃料に変換する、いわゆる「カーボンリサイクル」という仕組みだね。僕らのチームではその実現に向けて、異業種間の連携促進に向けた活動を積極的に進めています。あとは、民間企業の声を経済産業省などに伝えながら、政策側とも一緒になって将来の化学産業のあるべき姿について議論しています。

大日方

化学業界は事業ポートフォリオの見直しを積極的に行っている印象がありますが、いかがでしょうか?

池田

そのとおりで、環境意識の高まりを含め事業環境が大きく変化する中で、事業の一部を切り出して売却したり、逆に買収によってコア事業を強化したり、自社の事業ポートフォリオを見直す企業が増えてきたね。このような社運を賭けるような企業の構造改革の動きに対しては、DBJの投融資一体型の金融サービスやネットワークが最も活きてくる場面なのではないかと思っています。

大日方

お客様の置かれている状況は様々で、お客様に合わせて適切なソリューションを提案できるか、担当者次第ですね。

池田

そうだね。これまで僕が話してきたことも、日本の産業界が直面する課題の一部にすぎません。DBJに求められていることは、お客様や社会が直面している課題の解決に向けてさらに先進的なソリューションを生み出すことと、幅広い金融サービスを活かして柔軟かつ長期的なご支援を行っていくことだと思っています。

日本産業の創造と発展において
どのような役割を担っていくべきなのか

大日方

池田さんは入行以来、ずっと産業分野に携わっていますよね。振り返ってみて、思い出深いプロジェクトは何ですか?

池田

入行2年目に担当した航空機関係の案件かな。このお客様は、自動車向けなどの部品製造で長年培ってきた切削技術を活かし、新たに航空機産業への参入を目指されていたんだよね。技術力が評価されて、海外の大手航空機エンジンメーカーからエンジン部品の受注を獲得できたのだけど、お客様は航空機産業に参入して日が浅いということもあり、航空機業界に対する投融資で豊富な経験を持つDBJに支援のご相談をされました。
僕が主担当として指名されてプロジェクトが動き出し、最終的には航空機エンジン事業を分社化し、DBJが共同出資して新会社を設立しました。当時若干2年目にもかかわらず難しい案件を任せてくれるDBJに懐の深さを感じたことと、「日本の航空機産業の国際競争力強化につながる案件だから」と様々な部署の先輩たちが熱心にサポートしてくれたことが思い出に残っているね。

大日方

この案件をきっかけに、関西エリアでも同じような取り組みがありましたね。現在の「空飛ぶクルマ」の取り組みに至るまでの航空宇宙産業におけるDBJの挑戦の歴史を感じます。

池田

振り返れば、僕は学生時代に機械工学を専攻していたこともあり、「日本の製造業の国際競争力強化を支援したい」と決意してDBJに入行しました。今の自分の姿を改めて見つめてみると、あの頃思い描いていたとおりの仕事に携われているな、という実感があるね。

大日方

それは私も同じです。学生の頃は、産業の創出のような、ゼロから革新を生み出すような仕事にチャレンジしてみたい、産業の発展を通じて日本の社会課題の解決に貢献したいと思っていました。そして今は「空飛ぶクルマ」が日本の空を舞う姿を1日も早く見てみたいですね。