DBJ Group TOPICS

株式会社日本経済研究所

株式会社日本経済研究所(以下、日本経済研究所)は、公的セクターや民間企業に対して公平・中立な立場から調査・コンサルティングを行う総合研究機関であり、DBJグループのシンクタンクとしての役割を担っている。幅広いネットワークを生かして、まちづくりや地域振興、インフラ、エネルギーなど日本経済の根幹にかかわる課題に取り組み、その解決策や政策提言を示すのが特徴だ。今回紹介するDBJ北海道支店と共同で取り組んだ「北海道畜産バイオマス調査」では、畜産バイオガスプラントによるエネルギーの地産地消へ向けて、バイオメタン利用拡大の具体的な方策を提言した。

日本経済の根幹にかかわる課題に取り組み、
民間事業者や行政に新たな気付きを提供する

研究職としての専門性を高めながら、
グループの中でナレッジ機能を果たす

日本経済研究所の事業内容は「官公庁向けサービス」「一般法人向けサービス」「海外事業向けサービス」の3分野が中心で、このうち官公庁向けは公共デザイン本部が担当している。地域の計画・戦略策定やPPP/PFI(官民連携事業)の導入支援など、地域課題に対して、多角的な調査を通じた解決策を提案する。一般法人向けと海外事業向けは産業戦略本部が担当し、サステナビリティやカーボンニュートラル関連を含む国内外の産業調査、国際協力業務などを行う。

産業戦略本部の案件に公共部門の知見が求められる場合もあれば、公共デザイン本部の案件に産業部門のノウハウが必要な場合もある。「両本部で人材を融通し合って、適宜チームを構成します。異動はほとんどないので、各々が研究職として調査・コンサルティングの専門性を高めながら、DBJグループの中でナレッジ機能を果たしていくのが我々の役割」と、産業戦略本部 副本部長 兼 産業調査企画部長の小林純子は説明する。

今回紹介する北海道畜産バイオマス調査は、産業戦略本部がDBJ北海道支店から受託した案件である。

酪農家から需要家まで多様な主体が出資する
ジョイントベンチャーの設立・運営を提言

酪農業が盛んな北海道では、堆肥化が困難な畜ふん尿の処理や臭気対策を目的として、畜産バイオガスプラントの導入ニーズが高まっている。同プラントは畜ふん尿処理で発生したバイオガスを発電・熱利用できるため、酪農業の持続可能性のみならず、地域のエネルギートランジションによる脱炭素という観点からも導入意義は大きい。ただし、北海道では送電容量の逼迫による出力制御の可能性や、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の買取価格低下により、売電での事業予見性が低下しており、発電以外でのバイオガス利用を模索する必要がある。

こうした課題への対応策を検討するため、日本経済研究所はDBJ北海道支店と共同で調査に取り組み、その内容を「北海道畜産バイオマス調査報告書~畜産バイオガスプラントによるエネルギーの地産地消を通じた地域×トランジション~」と題したレポートにまとめた。

公共デザイン本部 地域マネジメント部 副主任研究員の宮城奈緒美は、調査に際して「これは酪農家だけで解決できる課題ではないという意識が強くあった」と振り返る。「プラント整備は事業費が高いうえに、バイオガスの安定的な需要家が必要。さまざまな主体が参画してバイオガスプラントを共同運営し、ガスを流通させていくバリューチェーンを構築できないかと考えました」(宮城)。

バイオガスから精製されるバイオメタンは、天然ガスの代替としてガス利用が可能だ。調査報告書では、バイオメタンのガス利用が進んでいる欧州の実態も踏まえたうえで、道東における畜産バイオガスプラントの導入ポテンシャルや、バイオメタンを活用することによるCO2排出量の削減効果、金銭に換算した経済価値などを定量的に分析した。

具体的に北海道でどのようなバイオメタンのバリューチェーン構築が可能なのか、供給・需要の両サイドから改めて検討し、酪農家から行政・自治体、ガス供給事業者、乳製品製造業などの需要家まで多様な主体が出資するジョイントベンチャーの設立・運営を提言している。

DBJが国内外に構築しているネットワークを活用することで「現場の事業者の声も伺うことができた」と、産業戦略本部 産業調査企画部 研究員の石澤宏承は、DBJ北海道支店との連携によるシナジー効果を強調する。「今後も日本全国の地域が持つ潜在的な価値にスポットを当てていきたい。それを経済価値や環境価値に置き換えて示すことで、民間事業者や行政に新たな気付きを提供していければと思います」(石澤)。

→「北海道畜産バイオマス調査報告書」はこちらより全文をご覧いただけます

畜産バイオガスプラント事業への多様な主体の参画

畜産バイオガスプラント事業への多様な主体の参画(共同事業化)を促し、長期的にリスクとリターンを適切にシェアすることで、事業の安定性や地域自体の持続可能性を向上させることが重要である

(写真 左より)
株式会社日本経済研究所
公共デザイン本部 地域マネジメント部 副主任研究員 宮城 奈緒美
執行役員 産業戦略本部 副本部長 兼 産業調査企画部長 小林 純子
産業戦略本部 産業調査企画部 研究員 石澤 宏承

事業者などのヒアリング先を紹介し、現地の生の声を調査報告書に反映

酪農が盛んな北海道にとって、畜ふん尿の適正処理およびバイオマスとしての活用は、地域課題を解決するための重要なテーマです。今回の調査は、2022年度に日本経済研究所へ基礎調査を依頼して、2024年度より詳細な調査を共同で進めました。

デスクトップ調査は日本経済研究所に担っていただきながら、畜産バイオガスプラント事業者などのヒアリング先を北海道支店で紹介し、現地の生の声を調査報告書に反映しました。公表後には企業からの面談依頼も多く、道内外での関心の高さを実感しています。

バイオメタンのガス利用実現に向けて関係者の輪をさらに広げていく必要がある中、本調査報告書が国・企業・地域のコミュニケーションを活性化し、エリア全体での連携を深める一助になることを期待しています。

株式会社日本政策投資銀行 北海道支店
次長 天野 学(写真 左)
企画調査課 副調査役 今林 あゆみ(写真 右)

この記事は季刊DBJ No.58に掲載されています

季刊DBJ No.58