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DBJ証券株式会社

DBJ証券株式会社(以下、DBJ証券)は、融資・投資・アドバイザリーの「三位一体」の金融サービスの提供を目指すDBJグループの中で、発行体ニーズに合わせた資金調達の支援や、投資家ニーズに対応した投資機会の提供などを担っている。今回は、デジタルトランスフォーメンション(DX)を軸に企業の経営改善を目指す独立系プライベートエクイティ(PE)ファンドのD Capital株式会社(以下、D Capital)が設立した2ファンドにおける募集支援での取り組みについて、D Capitalの梅津直人氏(写真左)と、DBJ証券の北村直樹(写真右)が振り返る。

[Case Study] D Capital株式会社
資本・技術・人材の掛け合わせで
中小企業に持続的な成長機会をもたらす

経験豊富なメンバーが集うPEファンド
DXチームを自前で組織している点も魅力

2021年10月に設立したD Capital 1号ファンドの資金調達をDBJ証券が支援するに至った背景について教えてください。

梅津 「DX×PE」をコンセプトに、中小企業のDX推進をハンズオンで支援して日本経済の活性化に貢献したいという思いで2021年3月に当社を創業しました。ファンドを立ち上げるにあたり、まずは投資家さんを募集しなければなりません。募集を支援してくれるプレースメント・エージェントを模索する中で、DBJ証券さんの名前を頻繁に耳にしました。国内の機関投資家や金融機関と強固なネットワークを持っていると、他のファンドさんなどからとても評判がよかったのです。ただ、1号ファンドの募集ですから、さすがに引き受けていただけないだろうと思っていた時に、たまたま前職時代にお世話になった方からDBJ証券さんを紹介され、面談の機会を得ることができました。

北村 2021年9月に梅津代表をはじめ、4人のパートナーの方々と初めてお会いしました。まず皆さんの経歴を拝見し、錚々たるメンバーが集結したPEファンドであるというのが第一印象でした。そしてDXの専門チームを自前で組織している点も非常に魅力的でした。ちょうどコロナ禍で日本企業のデジタル化の遅れが社会課題として顕在化された時期だったこともあり、「DX×PE」というのは時代にマッチしたコンセプトであると感じました。初号ファンドでも投資家は集まると確信し、募集支援を受託しました。

梅津 いざ募集活動をDBJ証券さんと一緒に始めると、PEファンドとして運用実績がないという厳しい現実に直面することがたびたびありました。しかしそれは仕方ありません。とにかく北村さんのアドバイスに従いながら、全国の投資家さんにファンド設立の意義やメンバーの実績などを説明し続けました。

具体的にDBJ証券はどんなアドバイスをしたのでしょうか。

北村 投資家さんによって注目するポイントは異なります。それを我々のほうで事前に把握し、例えば、運用実績を気にする投資家さんであれば、梅津代表はじめメンバーの方々のこれまでの実績を訴求する、DXというテーマに注目するなら、具体的な手法や期待される効果、DXチームの強みなどについて説明できるよう準備してもらいました。

梅津 DXを軸にした支援でなぜ企業業績が改善し、投資家にリターンがもたらされるかイメージしにくいという指摘も多くありました。その対策として、ひたすら北村さんに壁打ちの相手になってもらいながらプレゼンの精度を高めていきました。

北村 1号ファンドの募集とほぼ同時期に、インテリア・雑貨のFrancfrancさんに向けたECチャネルの強化を目的とした取り組みがスタートしたので、その進捗を説明できたのはかなり効果的でした。我々の提案に関心を持っていただけると、投資家さんのほうから具体的な質問が寄せられます。その状況になることがとても重要なので、まずは先方が欲している情報を的確にお伝えすることを心掛けました。

梅津 最終的に1号ファンドは約315億円で組成することができました。当初9銘柄に投資していましたが、Francfrancさんはすでにイグジットしたので現時点では8銘柄を保有しており、経営改善に取り組んでいます。

高まるDXへの関心が募集の追い風に
きめ細かいフォローで大口投資家も獲得

2025年4月には早くも2号ファンドを立ち上げました。

梅津 そうですね。ここまで早いペースは想定していませんでしたが、やはり日本の中小企業に向けたDX支援のニーズは、想像以上に旺盛というのが2号ファンド設立の理由です。当社の投資先企業は、全国の金融機関やM&Aの仲介業者から紹介されるケースが大半です。1号ファンドの立ち上げ以降、持ち込まれる企業の数がとても増えたことで、2023年の初めには2号ファンドを設立したい意向を北村さんに相談しました。

北村 またお声がけいただいて光栄でした。1号ファンドの募集時にあと一歩というところで残念ながら出資に至らなかった投資家さんもいらしたので、再提案するチャンスが巡ってきたことに感謝しつつ、「今度こそ」という思いを強く持ちました。

梅津 前回の募集活動との違いを挙げるとすれば、1号ファンドの投資先におけるDX化の支援事例やその成果を、より具体的に説明できたことです。Francfrancさんであればeコマースやアプリを強化し、使い勝手だけではなく実際に売上の向上にもつながりました。スナック菓子の「ベビースターラーメン」などを手掛けるおやつカンパニーさんであれば、眠っているデータを活用して経営の効率化を図るといった取り組みを行いました。

北村 投資家さんの間でDXへの関心が明らかに高まっていることも前回との違いでした。他のPEファンドに対してもデジタル分野への取り組みに関する質問が増えました。とはいえ、D Capitalさんのように自前のDXチームを持つほどデジタルに注力しているファンドさんは少ないものです。投資先企業の持続的な成長のためにデジタル人材の採用まで支援する点も、他ファンドとの差別化のポイントになりました。結局、DXへの関心が高まるほど、D Capitalさんの強みが際立つことになりました。

梅津 2号ファンドは、当初から規模を拡大するつもりで500億円をターゲットにしていました。それには大口の投資家さんを集める必要があり、その点は非常にチャレンジングでしたね。最終的には総額670億円で無事に立ち上がり、投資先も1号ファンドより利益規模の大きな企業が中心となりました。

北村 提案後も定期的に梅津代表と共に1号ファンドの運用実績や、2号ファンドの資金調達状況などをお知らせするなど、きめ細かいフォローを心掛けました。それが2号ファンドに対する投資家さんのマインドを前向きにしてくれたと思います。その甲斐もあり、1号ファンドで投資が叶わなかった先はもちろん、生損保など大口の投資家さんにも投資していただくことができたのは非常にうれしかったですね。

それでは最後に両社のパートナーシップにおける今後の展望について教えてください。

梅津 本格的な人口減少社会に突入したいま、日本企業の99.7%を占めるといわれる中小企業にとっては、厳しい経営環境がこの先も予想されます。しかしそうした環境下でも成長のポテンシャルを秘めた企業は数多くあります。当社は資本(キャピタル)・技術(テクノロジー)・人材(ネットワーク)を掛け合わせることで、そうした企業に持続的な成長機会をもたらしていきたいと思います。その手段として、継続的にファンドを組成していくつもりであり、DBJ証券さんには募集支援のパートナーとして、引き続きサポートしていただければ幸いです。

北村 ありがとうございます。地方の中小企業に数多く投資している点もD Capitalさんの特徴です。地方の中小企業の成長を支援するファンドへ地域の金融機関が出資すれば、中長期的な成長の果実がその地域にもたらされることになります。そんなお金の好循環を生みだす仕組みをつくるお手伝いを今後ともしていきたいですね。



【免責事項 】
DBJ証券は1号ファンド及び2号ファンドのプレースメント・エージェントを担っておりました。本記事は他の投資家への2号ファンドの広告、宣伝、勧誘等を目的とするものではなく、DBJ及びDBJ証券は本記事に関連しD Capitalより直接的または間接的な報酬を受領しておりません。

この記事は季刊DBJ No.57に掲載されています

季刊DBJ No.57