DBJデジタルソリューションズ株式会社

DBJデジタルソリューションズ株式会社は、1988年、DBJのシステム管理を担う会社として設立された。以来、DBJおよびDBJグループ企業のみならず、「お客様と共にしっかり立ち、一貫性をもってやり遂げる」という企業理念のもと、幅広い顧客に向けて、ITコンサルティング等の経営課題解決から、システム導入・運用・ITインフラ整備に至るまで、ITに関するトータルソリューションを提供している。今回、三興商事株式会社が抱えるITに関する課題解決の取り組みと、日本海曳船株式会社の業務改善において提供したソリューションについて紹介する。
[Case Study] 三興商事株式会社
DBJデジタルソリューションズ株式会社
ITアドバイザリー第2部 課長代理 ITコンサルタント
向後 潤一
三興商事は静岡市に本社を置く建築資材を扱う商社。資材を販売することのみならず、設計・建築事務所からの要望に応えた提案・仕入れから、施工管理までを手掛けている。高い専門性を有する営業体制と、厚い顧客基盤がその強みだ。DBJの出資するファンドの投資先であり、DBJ担当者とのコミュニケーションからITに関する課題が浮かび上がり、DBJデジタルソリューションズがその解決を担うことになった。プロジェクトを担当するのはITアドバイザリー第2部の向後潤一を中心としたチームである。課題を明確化するために、まず向後らが行ったのが独自のサービスである「IT診断」だった。
「当社の『IT診断』は、お客様のITに関する課題を『IT戦略』、『IT組織・IT人材』、『ITリスク』、『IT投資』、『IT調達』、『ITオペレーション』、『アプリケーション』、『ITアーキテクチャー』の8つの領域に分類して、評価・診断するサービスです。その特徴は、評価・診断で終わりではなく、課題の抽出から、真の原因分析、施策の方向性までを検討する、ITコンサルティングサービスであることです」
診断の結果、基幹システムの一つである「日報システム」に課題があることが明確になった。三興商事の日報システムは、独自開発により日々の営業・施工管理担当者の業務報告から営業管理、経営層への月次報告まで幅広く活用されている。永年、経営層や現場の声を取り入れて細かいところまで作りこまれた、まさに三興商事の業務ノウハウが詰まったシステムとなっていた。
「品質面や性能面では現場の評判も高く、大きな不満はなかったものの、セキュリティや統制面に課題があることが判明しました。またこの時期、お客様はIPOを視野に入れていました。開発・運用が属人化しており、それがIPOに向けて事業継続性の面で大きなリスクになる点を懸念していました。そこで今回のIT診断の結果、事業継続性を確保するため、日報システムの全面刷新が必要と判断したのです」
実現にあたっては市販のパッケージソフトの採用も検討したが、三興商事の独自の業務ノウハウをシステムに反映することが難しく、最終的に、早期かつ安価にシステム構築可能なローコード/ノーコードサービス※ の利用を提案した。その際、向後らは三興商事の地元・静岡で、システム構築や業務改善を得意とする開発業者を推奨した。
「東京には経験や技術のある業者が多数いますが、困った時にすぐにコミュニケーションが取れる業者が良いと考えました。特に今回導入するローコード/ノーコードサービスの使い方に慣れていないうちは、気軽に対面でやり取りできる業者に任せた方が、安心感があると思いました。また地元の業者をご紹介することで、結果的に多少なりとも地域貢献の役に立てたのでは、という想いもあります」
現在、長年蓄積されたデータの移行をはじめ、システム全面刷新の作業が進められており、今年度上半期中にはシステムの移行が完了する見込みだ。向後らがIT診断で作成した資料はわかりやすく、使い勝手が良いという評価を受けており、ベンダーとの要件定義等に活用されている。三興商事は2024年2月、東京証券取引所が運営するTOKYO PRO Marketへ上場した。今回のDBJデジタルソリューションズの、事業継続性を見据えたシステム全面刷新の取り組みが、上場の一助になったといえるだろう。
「今回、DBJや投資ファンドによる経営支援を実施したことで企業価値が向上し、IPOにつながりました。その支援の一つとして、DBJグループである弊社のITサービス提供により微力ながら貢献できたことを非常に嬉しく感じています。今後もDBJと連携して、ITコンサルティングによる課題解決や、クラウド・生成系AIなどの最新デジタルソリューション活用を支援していくことで、企業の生産性向上に貢献したいと考えています。」
※ ローコードは少ないプログラムコードで開発ができ、ノーコードは、いっさいプログラミングをせずに、開発を行うことが可能になります。
この記事は季刊DBJ No.55に掲載されています
季刊DBJ No.55