PERSON職員紹介

「誰のため、何のための仕事か」。
その答えを追い求めてたどり着いたのが日本政策投資銀行だった

福井 幸輝(ふくい・こうき)

2005年
大学院美術研究科修了。大手デベロッパー入社。
2006年
外資系投資ファンドに転職。
2012年
DBJ入行、企業金融第4部配属。2016年よりアセットファイナンス部配属。

外資系投資ファンドで考えた
「日本のためになるビジネスがしたい」

これまでのキャリアをお聞かせください。

大学では建築意匠を、大学院時代にはローマで都市史の研究をしていました。卒業後は大手デベロッパーに入社したのですが、いざビジネスとして建築や不動産に向き合うと、それまで私が学んできたバックグランドでは不足していると感じました。当時、私が不動産に対して持っていたのは、建築や町並みとしての見た目のイメージ。つまり「もの」としての側面でした。しかし不動産にはデザインや技術だけでなく、投融資などの金融スキームが必要であり、実施によい街づくりや開発には、しっかりとした金融ノウハウが備わっていることを知ったのです。

そこで金融や投資の側面から不動産を学ぼうと外資の不動産投資ファンドに転職しました。仕事にはやりがいや充実感を感じていましたが、30歳を過ぎてふと立ち止まって考えることがありました。「これから自分は何のために、誰のために仕事をしていくべきなのだろう」と。当時の顧客は主に海外投資家ですが、こうした投資家の利益のために働くこと以外の意義を考えるようになったのです。これからのキャリアでは、もう少し直接的に日本のためになるビジネスに携わりたいと思っていたとき、まさにDBJを見つけたというわけです。

プロファッショナルが集う航空機ファイナンス部門
チームメンバーの「視点」を学ぶ

入行後、これまで培ってきた不動産金融のスキルを活かすプロジェクトに就いたのですか。

いいえ、全く想像もしていなかった部署に配属されました。ただ、この人事には理由がありました。長い目でキャリアを考えたら、すでにスキルのある不動産ではなく、他の領域にも精通している必要があると。DBJに新卒で入行すると、若手のうちにローテーションを通じてさまざまな金融分野の実務を積んでいきます。こうしたプロパーへの育成スキームを、キャリア採用者の対しても行うのがDBJの特徴で、私はこれまでまったく経験のない航空機ファイナンス部門に配属されました。

正直、戸惑ったのではないですか。

ええ。実際にかなり苦労しました。顧客は航空機メーカーや海外のエアラインやリース会社なのですが、業界には航空機ファイナンスにキャリアを特化したプロフェッショナルがたくさんいる。つまり長年この業界でビジネスをしてきた高い経験値を持った専門家と仕事をしなくてはならない。加えて、海外の交渉先に対して言葉や文化の違いといったグローバルな視点も求められます。中途入社で銀行業務も航空機ファイナンスも初めて、英語力にも自信のなかった私が、ある意味放り込まれたのですから、戸惑いや苦労は当然だったのかもしれません。

その中で、どのように対応して結果を出していったのでしょうか。

上司や周りの先輩、同僚に助けられました。そして多くのことを教わりました。チームには海外留学の経験者も多く、金融知識に加え外国人の考え方や文化も理解しているメンバーばかりでした。特に大きな学びは「視点」です。これは私がDBJに入行した理由とも関連しますが、目の前のプロジェクトから利益を得ることも大事ですが、一方でもっと先と言いますか、「高い視点」で仕事の意義が求められます。

「高い視点」とは、具体的にどのようなことでしょうか。

私たちのビジネスの先には日本企業があり、そのビジネスに成功することは間接的に日本経済の発展に寄与することにもつながる、という視点です。この視点が意思決定にも影響を与えます。欧米航空機メーカーが機体を作る際に使っている部品や素材は多くが日本製です。パソコンやスマートフォンと同じで、航空機メーカーはサプライチェーンをまとめている立ち位置ですから、航空機ファイナンスを通じて日本企業とのやり取りも多く出てきました。

もう一つ大切なことがあります。航空機産業というグローバルで多様な人たちが携わるフィールドにおいて、どうしたら「日本人ならでは」の思考や強みを生み出すことができるのか。この視点が欠けていると、海外プレーヤーと差異化できず、何より巨大な航空機ファイナンスの単なる歯車になってしまう可能性がある。同業者は当然ライバルですが、ときには協業する仲間でもあります。仲間から認められるには、日本企業ならではのアイデンティティや信頼が求められることも学びました。

海外案件を通じてグローバルムーブメントを肌で感じる

その後、航空機ファイナンス部門から不動産部門に異動されました。

私は航空機ファイナンス部門で経験を積みながら、やはり自分のバッググラウンドである不動産を通じて、DBJと日本経済に貢献したいと人事に伝えていました。その想いを汲み取ってくれたのか、入行4年目に不動産部門であるアセットファイナンス部に異動しました。現在は、航空機ファイナンス部門のときと同じく主に海外案件を担当しており、海外の不動産ファンド投資や個別不動産への融資等を行っています。アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパの不動産市場を横断的に見ていますが、不動産や不動産金融の分野でもグローバル化が急速に進んでいると実感する一方で、不動産のローカル性が変わらず強いことを意識させられます。このローカル性は他の金融分野に比べて不動産ならではと思いますし、文化や歴史を通じて建築や都市のコンテクストを読み解いていく事は、この仕事の面白みでもあります。

日本経済への寄与という観点では、具体的にどのような考えや動きがあるのでしょうか。

不動産金融のグローバルな潮流を日本の不動産市場に還元すると同時に、ローカルとしての日本の建物や街づくりを支援し、日本ならではの不動産の魅力や価値を海外に発信したいと考えています。海外の建物は元来堅牢を意識する場合が多いですが、日本の家屋は昔から風通しや地域との関わりを重要視するなど、自然や環境との融合という意味でも、日本には世界に誇れる事例がたくさんあります。

また、最近のキーワードである「SDGs」(持続可能な開発目標)や「ESG」(環境・社会・ガバナンス)などを意識した建物や街づくり、あるいは、不動産分野でも気候変動対策の議論が世界的に活発になってきています。不動産の価値は、他の一般的な金融商品とは異なり、一物一価ではありません。評価する人々の価値観も違えば、評価スキーム自体も異なるからです。しかし、金融市場で議論するには何らかの定量化の必要もある。この定量化の評価基準となるフレームワークをつくることに欧米人はとても優れています。「SDGs」や「ESG」、気候変動対策を評価する指針作りもその一つです。DBJは、環境や社会に配慮した不動産の評価基準制度「DBJグリーンビルディング認証」の運営を10年以上続けてきましたが、現在、そうした世界の潮流を捉まえつつ、日本における持続可能な不動産や都市のあり方を引き続き模索しています。日本人ならではの視点を大事にしつつ、不動産に対するESG投資や気候変動対策を後押ししていきたいと考えています。

海外との仕事を通じて特に注目しているのが、オーストラリアです。オーストラリアは、30年以上に亘って経済成長を続けているにもかかわらず、環境先進国というイメージがあります。実際、オーストラリアの都市には、緑が多く、また環境や働く人の快適性を意識したビルが多く立ち並んでいます。不動産という枠を超えた、先ほどの「高い視点」の話につながりますが、日本社会がこれからどのような発展を目指していくべきか、「未来のあるべき姿」のような壮大なテーマまで意識させられることがあります。オーストラリアは多様性の国家。不動産でいえば、多様性への配慮はこれからの街づくりや地域づくりに活かせますし、世代ごとのムーブメントやさまざまな働き方を通じた企業や社会のあり方など、直接的な手本でなくても、オーストラリアから日本が学ぶ点は多いと思います。

いい意味で「中途半端」
今が変革の過渡期

組織や一緒に働くメンバーの特徴をお聞かせください。

仕事では、比較的自由にさまざまなアイデアや提案を自ら進めることが推奨され、一般的な商業銀行より個人レベルでの自由度は高いのではないでしょうか。メンバーは公共性、社会性の強いプロジェクトを手がけたいというコアな思考は共通していますが、自由でユニークな人が多く、ポジションに関係なく意見を言える雰囲気があります。また、数年前、私も短期の海外ビジネススクールに派遣される機会に恵まれましたが、プロパー、中途を問わず、必要な成長機会も提供されていると思います。組織はコンパクトでありながら、幅広い分野を手がけているので、マインド次第では個人の意向に応じた確かなやりがいを感じられるはずです。

なぜ、そのような社風になっているのだと思いますか。

2008年に民営化へ舵を切り、10年以上経った今もなお変革の過渡期にあるからでしょう。私は、DBJはいい意味で「中途半端」な状態にあると捉えています。中途半端であるがゆえに、いいアイデアがあればどんどん取り入れて組織を良くしていこうという雰囲気につながっているのだと思います。そのようなチャレンジングな環境に魅力を感じたメンバーが、私も含めて集まってきている。ですからこの先、DBJがどのような組織になるのか、正直私には想像できません。ただ言えることは、多様でバラエティに富んだメンバーが増えることで、さらなる変化を遂げ、他のどの企業とも異なるオンリーワンな組織として、ますます存在感を放っていくと確信しています。

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