PERSON職員紹介

「リスクファイナンスを通じて社会的に価値のある仕事ができる」。大手邦銀、証券会社を経たからこそ選んだ日本政策投資銀行

山口 健一(やまぐち・けんいち)

2005年
法学部卒。大手邦銀入行。法人営業などに従事。
2009年
日系証券会社に転職。
2012年
DBJ入行、企業金融第1部配属。その後、関西支店を経て2019年より再び企業金融第1部。

「自己成長」だけだった20代
利己より利他だと30歳で気づいた

これまでのキャリアをお聞かせください。

若い頃の私は、今とは考え方が異なっていました。頭の中にあったのは、いち早く成長したい、キャリアアップしたい、稼ぎたいなど、という思いでした。貪欲な考え方を持っていた私が選んだのが大手邦銀。数年後には日系の証券会社に転職し、ストラクチャードファイナンスのスキルに磨きをかけていきました。ただ、30歳になるのを機に、改めて自分のキャリアやこれから本当にやりたい、携わりたいと思う仕事を見直したのです。頭の中に浮かんできたのは、利己ではなく、お客様が喜んでいる姿であり、その姿をみて満足している自分でした。そしてこれからのキャリアは、世の中の役に立つ仕事をしていこうという考えに行き着きました。そこで公共性の高いプロジェクトを数多く手がけているDBJに移りたいと考えたのです。入行して実際にプロジェクトに携わると、まさに私が思っていた通り、社会貢献色の強い案件を手がけていました。私と同じような感覚や意識を持つメンバーがほとんどだったことが心強かったですね。

民間の金融機関では実行できない
多様なファイナンススキーム

具体的に、どのような案件に携わっているのですか。

入行後、一貫して、重工、鉄鋼、化学など、いわゆる重厚長大なビジネスを手がける顧客担当チームに所属していて、中でも航空機産業部門に長きにわたって携わっています。航空機や航空機エンジンの研究開発・製造には莫大な資金が必要です。また研究開発をはじめてから投資回収するまでの期間が10〜20年と長くなる特徴があります。事業のスパンが長いということは、一度仕事を獲得すれば、企業にとって長期的な経営安定につながるメリットがあります。そして何より、航空機産業は市場の成長が期待されており、積極的な投資意欲を持った企業が増えています。一方で、莫大な投資が必要なことから借入額が増えバランスシートが崩れることなどを危惧し、思い切って決断できない経営者がいるのも事実ですし、民間金融機関も融資に後ろ向きになる場合もあります。

銀行サイドとしても、融資を回収できないリスクがあるため、なかなか手を出すことができない面もあるわけですね。

ですから、我々のような政府系金融機関の存在意義があるわけです。DBJがお客様から選ばれるのは、公的な機関であることだけが理由ではありません。これまで長きにわたり、航空機産業分野で積み重ねてきた実績、具体的にはファイナンスにおける多様なスキームやノウハウを持っているからです。DBJであれば、案件によって融資ではなく、よりリスクの高いメザニンファイナンスやエクイティファイナンスといった投資を選ぶこともあります。さらに別の手法で資金を捻出するなど、様々なファイナンススキームの提案、設計が可能となります。

DBJはなぜ、多様なファイナンススキームを扱えるのでしょうか。

事業を進める上での法律が、銀行法をもとに行っている金融機関と当行では異なっているからです。端的に言えば、私たちの業務はかなり自由度が高く設定されています。銀行では融資が主な選択肢となりますが、私たちであれば投資を選択し新会社を設立、その会社の株主として、クライアントのビジネスをサポートすることも行えます。当然、リスクも伴いますが、実はこのリスクも、私がDBJを選んだ理由の一つでした。私自身が銀行、証券両方を経験したからわかることなのですが、自腹を切って行うビジネスの方が、業務において深く考えて徹底的に精査しますよね。その結果、成功したときの喜びは大きなものになるのです。

リストラやコスト削減による
一時的な利益は求めない

仕事を進める上で意識していることをお聞かせください。

私というよりもDBJ全体の特徴になりますが、目先のプロジェクトや利益ではなく、もっと先、携わっている産業全体がよくなることを意識しています。ですから稟議を通す際のポイントも、バランスシートや損益計算書にはもちろん注意を払いますが、もっとマクロ的な視座で行われています。理念や強み、そしてここからが重要ですが、その会社が社会にどう役立つのか。このような観点に重点を置き、投資可否の判断をしています。このような考えですから、投資案件に取り組む場合も、リストラやコスト削減により一時的に利益を上げるようなことはしません。社会に役立つ製品を作ることで、結果として顧客企業が成長する。その上で得た利益からリターンをいただければよいというスタンスです。

プロジェクトを進める際は、我々だけで行わない場合も多いです。経産省など中央官庁のほか、地方顧客の場合は地方局、さらに地域自治体、顧客の普段の取引先であるメガバンクや地銀などとも連携をとり進めています。先ほどの話に紐付ければ、我々が出資することで純資産を積み上げバランスシートを改善させる。その結果、以前からの取引のある銀行から融資を受けられるようにするといった施策も行ったりします。これはあくまで私の感覚ですが、前職と比べると、特に地域経済の活性を意識するようになりましたし、実際に関連プロジェクトが多いと感じています。

そういったスタンスで仕事に臨んでいると、現状の課題に気づくことも多いのではないですか。

ええ。担当する国内航空機産業が抱える大きな課題に気づくことができました。せっかく日本の大手メーカーが受注している案件なのに、仕事量の増加や設備不足などから、海外のサプライヤーに発注している現状だったのです。そこで大手メーカーだけでなく、部品などを大手メーカーに供給するサプライヤーにも投資を行う仕組みを考案しました。ファイナンスの仕組みは先ほどの話に近いですが、サプライヤーは小規模なオーナー企業の場合も多いですから、特に投資を選択する際には注意や配慮が必要です。売上50億円のサプライヤーから、50億円の設備投資が必要なのでDBJに投資してほしい、という申し出を受ける場合もありますし、尻込みする経営者もいます。

リスクが高すぎると判断されて、案件が滞ることもあるわけですか。

だからこそ、繰り返しになりますが、必要な検討を踏まえた上で、我々がそのリスクを背負うわけです。経営者の中には「そんな莫大なお金を借りられるわけがない」と話に前向きでない方もいますし、我々が株主となることに抵抗のある経営者もいます。ですから、当行だけでなく、先のような関係者を集めて話し合い、サプライヤーが力をつけることで、結果として日本経済の発展につながることを説明していきます。実際、すでに10社以上のサプライヤーに投融資を実行しました。設備投資はもちろん、従業員が増えたことで地域雇用にも貢献しています。当然、売上げは上がっていきますし、大手メーカーとしても海外サプライヤーとのやり取りでは、納期遅れの問題などもあり困っていた面もありましたから、結果として皆が喜ぶプロジェクトになったと手応えを感じています。

もう一つ事例を紹介します。先のサプライヤーの中には素材メーカーもあります。現在、航空機業界では、使用する素材を見直す動きがあります。セラミック、カーボン、チタンなどです。これら素材技術において、日本は高いテクノロジーを持つメーカーが数多くあります。このポテンシャルを、もっと伸ばせないかと考えています。たとえば、セラミックについては、日本のメーカーにしか作れないと言われているセラミック繊維がありまして、世界中の航空機エンジンメーカーから注目されています。このセラミック繊維の量産化にも多額の資金とリスクが伴いますが、日本の技術力を世界で活かしてもらうべく、積極的にサポートしていきたいと考えています。また、チタンについても、原料から製品になるまでのサプライチェーンの一部で、欧米のメーカーが市場を握っている領域がありますが、その領域を飛ばし、日本国内のみでサプライチェーンが完結するようなものづくりができないかといったことも考えています。これらの話は、航空機産業に限らずあらゆる産業に該当しますから、DBJが果たすべき役割は、まだまだ大いにあると意気込んでいます。

小さな組織だからこそ問われる
「自分がどのようにしたいのか」

DBJの社風やメンバーの特徴をお聞かせください。

当たり前のことですが、世の中のあらゆる企業は、社会のために活動しています。私が新卒で入行した銀行もその通りなのですが、社会貢献に対する意識の度合いが、DBJのメンバーは特に高いと感じています。言い方を変えれば、目先の事業に注力するのではなく、もっと広い視点で事業に取り組んでいる人が多い。DBJの理念は「公共性と自社の収益のバランス」ですが、実際は、公共性に重きを置いた動きをしている人が多いのではないかと感じています。

民間の金融機関との違いや特徴を、どこに感じていますか。

前職、前々職と比べると、組織規模が圧倒的に小さいです。そのためメンバー同士のコミュニケーションが頻繁にありますし、ボトムアップで仕事を進める機会も多く、自分がどのようにしたいのかを、よく聞かれることも特徴の一つですね。私が在籍する営業チームであれば、営業担当者はわずか5名という編成です。ファイナンススキームを設計する際には専門部隊だけで行うのではなく、私も含め携わる関連部署の全メンバーが、横軸で連携しながら進めます。同時に、人脈もどんどん広がります。キャリア採用の私もかなり早い段階で、どの部署にも知り合いができました。

部署を超えたやり取りができるのもDBJならではだと思います。わからないことや相談したいことがあれば、部署や上下関係を気にすることなく、先に築いた人脈などを利用し、気軽に聞けます。このような環境だから、先にお話ししたサプライヤーや素材の新プロジェクトも、特に反対されることなく進めていくことができるのだと思います。もちろん、リスクが高いプロジェクトは通らないこともありますが、社会に貢献するという根幹からズレていない企画であれば、誰の意見でも基本的に皆が応援する雰囲気です。

入行前のイメージとは異なる
自由な社風、ユニークな人材の宝庫

一般に、政府系金融機関には「堅い」イメージがあると思いますが、実際どのように感じていますか。

私も入行前は同じようなイメージを持っていたのですが、世間一般のイメージとかなりのギャップがありました。実際は今日お話しした通りです。社会にいかに貢献できるかという志向を皆が持っていますが、決して堅物が集まっている集団ではありません。むしろその逆。いい意味でユニークな人材の宝庫であり、先ほど説明したように、社風はいたって自由です。たとえば仕事の進め方においても、パワポで作成した企画書をもとに進める人がいる一方で、たった一枚の紙にアイデアをラフ書きした資料で進める人もいます。私を例にあげれば、業界最先端の情報や現状を聞き出すことで、新たなプロジェクトにつなげたいという思いから、毎日のようにお客様と話をする機会を作っています。このような風土ですから、新しいことを発想することが好きな人、また、そのアイデアを自ら動いて成し遂げたいというタイプの人にとっては、日々充実して働くことができる環境だと思います。

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