TCFD提言に基づくシナリオ分析に着手 -機会と経済社会シナリオに着目した独自のアプローチ-


 株式会社日本政策投資銀行(以下「DBJ」という。)は、気候変動問題への取り組みとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下「TCFD」)による提言(注1)に基づく、シナリオ分析に着手しました。

 TCFDは、金融安定理事会(FSB)により設立された民間のタスクフォースであり、2017年6月に発表した提言では、気候変動を企業や金融市場のリスクであると明示したうえで、気候変動がもたらしうる「物理的リスク」や「移行リスク」と低炭素型の技術・製品・エネルギーへの需要増等を背景とした「機会」による財務的な影響を、各企業が把握・開示するよう促しています。また、リスク・機会の検討にあたっては、将来の経済や社会の姿を想定し、事業への影響を評価する「シナリオ分析」を行うことも推奨しています。
 
 DBJは、2018年6月にTCFD提言の趣旨に賛同し、これまでにもサステナビリティ課題に対するマネジメント体制の強化や、情報開示の拡充等に取り組んできました。このたびの分析は、環境省「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」の支援を受けて実施したものです。

 分析の特徴として、主に以下3点が挙げられます。
(1)技術の発展・普及度に着目し、移行機会に焦点を当てた分析を実施
 金融機関は、気候変動に伴う将来の不確実性を踏まえ、様々な経済社会像を想定し、それらに応じたポートフォリオの変化や対応策を検討する必要があります。また、低炭素・脱炭素社会に向けたお客様の取り組みを、資金供給を通じて支援する立場にあります。そこで、低炭素・脱炭素社会に向けた技術革新や、政策・規制等による機会に焦点を当て、2050年までに想定されるDBJの事業への影響を分析しました。具体的には、気候変動に関係の深い技術の中から、試行的に5つの技術(CCS、EV、バイオマス、水素、再生エネルギー)に注目し、技術発展・普及を踏まえた各分析対象セクターの成長機会をシナリオ別に分析・評価しています。

(2)シナリオに「共通社会経済経路(Shared Socioeconomic Pathways: SSP)」を利用し、気候変動に伴う社会経済動向に焦点を当てた分析を実施
 地球温暖化による気温上昇幅が仮に同じであっても、想定する各国の人口、経済成長等の動向によって、気候変動問題の解決に向けて期待される技術の進展や社会受容の程度は変わってくると考えられます。また、国際協調のあり方によっても、気候変動政策・規制は大きな影響を受けると考えられます。

 そこで、こうした世界における社会経済動向の不確実性を考慮するため、将来の仮定としてのシナリオには、シナリオ分析で一般に広く利用されている温室効果ガス排出量(気温上昇幅)に関するシナリオだけではなく、社会経済シナリオ「共通社会経済経路(Shared Socioeconomic Pathways: SSP)」をあわせて利用しました。これにより、脱炭素社会に向けた社会的な志向や、国際協調動向等といった気候条件以外の不確実性も踏まえて分析しています。

(3)各セクター×シナリオ毎に成長機会を分析・評価 
想定した計4つのシナリオごとに、5つの技術の影響度を定性・定量両面から分析し、日本の強みを踏まえながら、各分析対象セクターにおける成長機会を総合的に評価しました。今後は、シナリオ分析の高度化を通じて、気候変動に伴う財務的な影響や、その対応策について議論していきます。

 TCFD提言の内容については、未だ世界的に議論途上であり、今回の分析はあくまで試行的なものです。また、今後、上記分析を踏まえた対応に伴う「物理的リスク」等も踏まえた総合的なリスク管理の枠組みの中で、分析をさらに拡充・発展させていくことが求められています。DBJでは今回の分析を足がかりに、引き続き分析の精緻・高度化、情報開示の拡充に努めてまいります。
 なお、分析内容の一部は、環境省の「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド~」(注2)に紹介されていますので、あわせてご参照下さい。

 DBJは、企業理念「金融力で未来をデザインします~金融フロンティアの弛まぬ開拓を通じて、お客様及び社会の課題を解決し、日本と世界の持続的発展を実現します~」に基づき、経済価値と社会価値を両立するサステナビリティ経営を推進し、投融資活動等を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

(注1)TCFD提言
https://www.fsb-tcfd.org/publications/final-recommendations-report/

(注2)「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド ver2.0~」
http://www.env.go.jp/policy/tcfd.html


【お問い合わせ先】
    経営企画部 広報室  電話番号 03-3244-1180

関連PDF

DBJ News一覧へ戻る