新世代小型ロケットの事業化による国内宇宙事業の発展に向けて

宇宙航空研究開発機構(JAXA)によるロケット打ち上げ
写真提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)

世界的に成長が見込まれる小型衛星の打ち上げ需要を獲得すべく、小型ロケット打ち上げ事業の企画及び検証を目的として、DBJは、キヤノン電子(株)、(株)IHI エアロスペース、清水建設(株)と共同で2017年8月に新世代小型ロケット開発企画(株)(以下「企画会社」)を発足しました。

その後、企画会社内及び上記4社にて事業性の検証を進めてきた結果、本格的に事業開発を進めるべく、4社による追加増資等を経て、2018年7月に事業会社スペースワン(株)を新たに発足しました。各分野の最大手である4社の連携プロジェクトゆえの信頼性を梃に、利便性の高い宇宙輸送サービスを世界最高の打ち上げ頻度で提供することを企業理念として掲げ、2021年度中の事業化を目指して、今後取り組みを加速していく予定です。

本件の実現に向け、キヤノン電子の持つ民生機器の量産コスト削減にかかるノウハウ、IHIエアロスペースの持つロケット開発にかかる高度な技術、清水建設の持つインフラ開発にかかるリソースを各社が投入するなかで、DBJ の役割はそれらを中立的な立場から連携推進をすると共に、航空機産業の発展を推進・支援するなかで培ってきた知見等も活かし、事業性の検証に取り組んできたところにあります。

小型ロケット等による高頻度の衛星打ち上げインフラが国内に確立されることで、これまで海外のロケットに依存せざるを得なかった国内宇宙関連企業における衛星打ち上げ機会が大きく広がると共に、技術実証を繰り返しながらビジネスを確立しうる環境整備が進み、宇宙分野での円滑な技術・事業開発が期待できることから、本件は国内宇宙産業の発展に大きな意義のあるプロジェクトです。DBJは、異業種間の連携による新事業開拓を通じて、国内宇宙産業の競争力強化に貢献すべく、本件に取り組んでいきます。

職員からのコメント

異業種間企業の連携と新規事業の実現

キヤノングループにおける電子製品の量産をリードしてきたキヤノン電子、国家プロジェクトであるロケット打ち上げを各種協力メーカーと共に設計開発してきたIHIエアロスペースに加え、インフラ開発の第一線に常に立ち続けた清水建設、各社とも、ロケット事業を成立させるための必要な技術・リソースを兼ね備え、目指す方向性は一つながら、企業文化の相違や技術開発の言語の隔たりが大きく、一つのパズルとして組み上げ、事業化の舵を切るためには、これらのピースを嵌め合わせるための役割が不可欠でした。DBJは、銀行として様々な業種との接点を持ち、今回のロケット開発の中心に位置するIHIグループと航空機エンジン事業で長年取引を有するなかで、結節点として機能し、意見調整や事業計画策定を推進・支援しました。

特に、各社とも新規事業である本件の明確な目標設定に苦しむなか、事業としての収益確立を目指し、本件事業を通じて宇宙産業を創造していく観点も踏まえた計画の定義・設定等をDBJが主となってサポートしました。今後、計画時には想定できなかった障害や問題が発生する可能性もあるなか、本件を広範な観点から俯瞰しながら調整を図りつつ、日本に新しい事業・産業を根付かせるべく、積極的にサポートしていきたいと思っています。