イノベーション活動への新たな挑戦
~「Society5.0挑戦投資制度」創設と「知の価値化」~

 私たちを取り巻く経済社会環境は大きく、そして急速に変化しています。
 インターネットやクラウドに代表されるデジタル技術の進展が変化を加速させ、まさに「Society5.0」(注1)と呼ぶにふさわしい社会の形が形成されつつあります。一方、突如勃発したCOVID-19(新型コロナウィルス感性症)はあらゆる価値基準を個人という根底の単位から揺るがし、従来の枠組みや発想では解決が難しい社会的課題を一層複雑にしております。
 その解決に挑むべく、創造的破壊(ディスラプション)によって個を尊重しつつも新しい共生や連帯を促し、新結合(シュンペーターの「イノベーション」(注2))による自律分散型の「Society5.0」実現に向けた取り組みが急務と考えます。
当行は以下の通り2つの新たな取り組みを開始し、覚悟と想像を持って新結合という化学反応の触媒になるべく、挑戦してまいります。

「Society5.0挑戦投資制度」の創設

 わが国の社会課題の解決に向けて、新たな価値観で新産業創造を目指し、持続可能な社会作りに貢献する活動に対して投資する新たな枠組みとして「Socisety5.0挑戦投資制度」を創設しました。

●対象分野

 社会課題解決に向けた大きなインパクトが見込めるアイデアや新結合であるにもかかわらず、事業化に向けたタイムラインの見通しが不透明であり、従来の価値観では捉えにくい活動を対象にいたします。分野としては、Society5.0で定義されているサイバーとフィジカルの融合領域に加えて、ハード主体の領域(Ex.次世代電池、エアモビリティなど)も広く対象とします。加えて、当行がゼロからイチを生み出す新結合の潤滑剤として、外部関係者とともに長期的かつ主体的な立場で貢献することも想定しております。

●当行の関与について

 当行はあくまで中立的な金融投資家であるという立場を崩すことなく、研究活動や慈善活動ではないビジネスとしての規律や新結合をもたらすガバナンスの組成を目指します。市場経済というルールにおいて適切なリスク分散に基づく持続的な事業活動を可能とする組織づくりに対して、経営への参画などを通じて貢献いたします。

●予算規模および実績

予算規模として総額100億円程度を確保し、第1号案件を投資実行しております(注3)。

"知(Deep Knowledge)"の価値化

 当該制度との相乗効果を狙い、社会の変容を正しく捉えるための知の価値化を続けるべく、国立研究開発法人との連携を通じた新たな枠組みの創設(注4)や、大企業とスタートアップとの協業による新規事業創出プログラム「DBJコネクト」の強化に加えて、「イノベーション創造センター」を開設し関連セミナーの開催(注5)などを行ってまいります。
 また、社会的弱者への支援も急務です。官民連携によるソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)(注6)を活用し、高齢者の健康改善や疾病予防等に資する民間企業の革新的取組みを普及・促進するために、SIBで多くの取り組みを成功させている英国Bridges Fund Management Limited(注7)との提携を通じ、新たな金融包摂システムの構築を強化します。
 これら知の価値化を続ける中で現在、次世代のエネルギーのあり方、空飛ぶクルマなど新しいモビリティ、ビッグデータ解析、医療・福祉分野における先端技術、疾病予防、スマートシティによるまちづくり、イノベーション先進国フィンランド(注8)との連携具体化、などの分野に鋭意取り組んでおります。

 DBJは、企業理念「金融力で未来をデザインします~金融フロンティアの弛まぬ開拓を通じて、お客様および社会の課題を解決し、日本と世界の持続的発展を実現します~」に基づき、イノベーション活動への主体的な金融投資家としての貢献によって、今後ともわが国社会全体のレジリエンス向上に資する金融機能を果たしてまいります。

(注1)Society5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と内閣府「第5期科学技術基本計画」で定義されている概念。

(注2)シュンペーターはイノベーションを起こす新結合(new combination)の5つの形態として、新製品(product)、新プロセス(process)、新ビジネスモデル(Business Model)、新サプライチェーン(Source of Supply)、新しい組織形態(Merger and Divestments)を定義した。

(注3)2020年7月6日プレスリリース「エクセルギー・パワー・システムズ㈱に対し、『Society5.0挑戦投資制度』を活用した投資を実施

(注4)当行は産業技術総合研究所(以下、「産総研」)及び宇宙航空研究開発機構との間で、各々2017年9月および2016年3月/2017年5月に包括連携協定を締結済。産総研とは当該包括連携協定に基づき、産総研の研究成果の社会実装に向けた枠組み『AIST&DBJ VENTURE2050』を創設(2020年7月6日プレスリリース「国立研究開発法人産業技術総合研究所との連携を活かした産総研発ベンチャー創出の枠組みを創設」)。

(注5)2020年7月6日プレスリリース「『イノベーション創造センター』開設及び『DBJ iHubセミナー』開催について

(注6)官民が連携し、民間企業のノウハウと資金を活用して社会課題を解決する成果指向型の取り組み。少子高齢化に伴う社会保障費の増加を背景として、健康・医療分野を中心に活用が期待されているところ。

(注7)当行は、2019年11月、英国Bridges Fund Management Limitedが組成するSIBを対象としたファンドに出資の上、業務協力合意書を締結している。

(注8)当行はBusiness Finland OYとの間で、両国の企業間連携の促進を目的として2019年11月に相互協力協定を締結している。




【お問い合わせ先】
    業務企画部 イノベーション推進室  電話番号 03-6311-5048

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