成果連動型契約(PFS)/ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)に関する研究報告書を発表~行政・投資家・財団等が一堂に会し、日本の成果連動型契約の課題と展望を検討~

 株式会社日本政策投資銀行(以下「DBJ」という)は、特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン(本社:東京都渋谷区、代表理事:伊藤健)、一般財団法人社会変革推進財団(本社:東京都港区、理事長:大野修一)とともに、成果連動型契約(Pay for Success、以下「PFS」という)(注1)やソーシャル・インパクト・ボンド(以下「SIB」という)(注2)の組成に取り組む財団、中間支援組織、企業、金融機関、行政等の多様な関係者が参画する「成果連動型契約/ソーシャル・インパクト・ボンドに関する研究会」(以下「本研究会」という)を開催し、その報告書を公開いたしました。本研究会には、株式会社三井住友銀行(本社:東京都千代田区、頭取CEO:髙島誠)が特別協賛、Asian Venture Philanthropy Network(本社:シンガポール共和国、CEONaina Subberwal Batra)が協力しております。

 これまでDBJは、PFS/SIBが社会課題解決に資する官民連携の重要な手法であると考え、国内外の市場調査、各種情報発信等を通じ、国、自治体、中間支援組織、サービス事業者たる民間企業、金融機関等、PFS/SIB市場の関係者様とのネットワークを構築してまいりました(注3)。
 2019年11月には、英Bridges Fund Management Limited(以下「Bridges」という)(注4)が組成するSIBを投資対象としたファンドへの出資及びBridgesとの戦略的パートナーシップ関係構築である業務協力合意書の締結等を通じ(注5)、日本版PFS/SIB形成に向けた先進的なノウハウを獲得してきたところです。
 また、2021年には株式会社公文教育研究会を代表事業者とする事業体が法務省より受託したSIBによる再犯防止分野での学習支援事業に対し、資金提供を実施しました(注6)。本件は、本邦初の国直轄でのSIBであり、再犯防止分野におけるSIBとしても国内初の取り組みとなります。

 斯かる中、本研究会は、内閣府・経済産業省・国土交通省・法務省はじめ、14自治体、16社の金融機関を含む107社・250名が委員・オブザーバーとして参加し、20221月から20222月に、合計3回にわたって日本におけるPFSSIBによる社会課題解決の取り組みについて、課題と今後の取り組みの方向性について議論を行いました。

 本研究会の詳細は、「成果連動型契約/ソーシャル・インパクト・ボンドに関する研究会」最終版報告書をご参照ください。
 
 同時に、独立行政法人国際交流基金日米センターの助成により、米国におけるPFSの中間支援組織であるSocial Finance US(本部ボストン)、教育や司法等の分野でのSIBの第三者評価者としての多数の実績を持つWestEd(本部サンフランシスコ)、ニューヨークにおける再犯防止のSIBの事業者であるCenter for Employment Opportunities(本部ニューヨーク)のそれぞれとオンラインによる交流事業を実施しました。

 DBJでは第5次中期経営計画において、投融資を通じて持続可能な社会に貢献すべく「GRIT戦略(注7)」を推進することとしています。PFS/SIBへの取り組みはGRIT戦略にも繋がるものであり、積極的に推進してまいります。
 また、インパクト評価に関するさらなる知見集約及び将来的なナレッジ提供を目的とし、2022119日にDBJ、株式会社日本経済研究所及び一般財団法人日本経済研究所とともに、一般財団法人日本経済研究所内に「社会インパクト評価チーム」を創設しました(注8)。PFS/SIBを活用したプロジェクトにおいて、社会や環境に与える影響を測定する社会的インパクト評価の策定サポートを企図しております。

 今後、DBJは多様なネットワーク・知見を活用し、個別PFS/SIBプロジェクトの組成・資金提供を着実に目指すことで、日本版PFS/SIBの普及促進、同市場の拡大・活性化に貢献するとともに、地域が抱える社会課題の解決をサポートしてまいります。

(注1) 成果連動型委託契約(PFS):国・地方公共団体等が、事業を民間委託等する手法で、解決すべき行政課題に対応した成果指標を設定し、成果指標の達成状況(改善状況)に応じて、行政から対価が支払われる。海外では英国を中心に導入が進んでおり、日本においては、「成長戦略実行計画」(2019年6月21日閣議決定)に基づき、内閣府により「成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプラン」(2020年)が策定され、医療・健康、介護及び再犯防止の3分野を重点分野として普及促進が掲げられている。
(注2) ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB):PFSのうち、民間資金の活用により事業が行われるもので、投資家が事業者に対し事業資金を提供し、事業の成果に応じて自治体が事業者に対し成果報酬を支払う仕組み。
(注3) 2020/6/10付 DBJプレスリリース:ドリームインキュベータと日本政策投資銀行が包括連携協定を締結~社会課題解決に向けたソーシャル・インパクト・ボンドの活用を共同検討~
(注4) Bridges Fund Management Limited:2002年設立。経済的リターンと社会的インパクト創出の両立を目指す「社会的インパクト投資」に特化した英国最大のファンド運用会社。SIB等、持続可能な成長と社会インパクトを生み出すプロジェクトを対象に、投資、ファンド運営、コンサルティング業務を実施。
(注5) 2019/11/20付 DBJプレスリリース:英ソーシャル・インパクト・ファンドへの出資および英Bridges Fund Management Limitedとの業務協力合意書締結のお知らせ~社会課題解決に向けた新たな官民連携プロジェクトを金融面でサポート~
(注6) 2021/8/31付 DBJプレスリリース:再犯防止分野に関するソーシャル・インパクト・ボンドへの資金提供について~「特定投資業務」を活用し、社会課題解決に向けた新たな官民連携をサポート~
(注7) 「GRIT戦略」とは、G:グリーン社会の実現、R:しなやかで強い安心安全な地域・社会や産業基盤の構築、I:事業化可能と評価できるイノベーションへの取り組み、T:現在の事業基盤を前提とした移行に向けた戦略的取り組み、を表すもので、第5次中期経営計画においてDBJグループが重点的に取り組む分野を表したもの。
(注8) 2022/1/19付 DBJプレスリリース:PFS/SIBを活用した社会課題解決によるサステナブルな地域形成を目指して~一般財団法人日本経済研究所内に「社会インパクト評価チーム」を創設~



【お問い合わせ先】
株式会社日本政策投資銀行 ソーシャル・インパクト・ボンド担当窓口
e-mail grp_sibdb@dbj.jp

DBJ News一覧へ戻る