全国設備投資計画調査(2024年6月)
DBJが毎年実施している民間法人企業を対象とした設備投資計画調査です。
概要
2024年度の設備投資計画の特徴
製造業、非製造業ともに高い伸び
人手不足・物価高が課題も、デジタル化やEV等電動化が成長をけん引
1. 国内設備投資
大企業(資本金10億円以上)の2023年度の設備投資は、EVや半導体関連の開発・増産、都心再開発もあり、2年連続で増加(6.9%増)。2024年度は、前年比21.6%の大幅増の計画。 昨年度から先送りされた投資に加え、デジタル化の加速を受けて、半導体関連の能力増強投資が拡大し、EV等電動化投資も増加する。また、人流拡大やインバウンド増加を受けて、空港機能拡張に向けた投資が増えるほか、都心再開発も継続し、製造業、非製造業ともに高い伸びとなる。
2. 企業経営と企業価値向上
多くの企業が物価上昇や人手不足をリスクと認識し、価格転嫁や賃上げを実施するものの、まだ不十分。物流2024年問題はデジタル活用や自動化投資を中心に対応。株価上昇に向けて投資家対話や開示の充実に関心が集まり、中期経営計画を重視する姿勢がみられた。
3. 人的投資
人材の獲得のため、企業は賃上げにより積極的な姿勢に。人材獲得の代替策として、デジタル活用や自動化投資に前向きな姿勢が継続。
4. デジタル化
デジタル化投資は、コロナ以降高い水準で推移。生成AIの普及もあり、AIの活用や関心が大きく高まる。
5.イノベーション
企業は、新たな技術革新として自動運転や汎用AIに注目。製造業では、知的資本データを経営に生かす企業が一定数存在。
6. 脱炭素
脱炭素を進める上での課題は、技術的な問題のほか、開発コストの負担と価格転嫁。今年度の脱炭素投資割合はほぼ変わらず。
7. サプライチェーンと海外投資
半導体等の供給制約緩和などもあり、調達先の分散化や在庫確保が一服する一方で、需要地での事業拡大が進展。また、コロナ前に比べて、国内の生産拠点を強化する方針が依然高水準。
8. 地域別や中堅企業の特徴
インフラ関連がけん引した北海道や輸送用機械などにより北関東甲信、製造業・非製造業が満遍なく伸びる首都圏などが大幅増。中堅企業では、大企業と比較して物価上昇や人手・後継者不足をダウンサイドリスクとしてより認識する企業がみられており、価格転嫁や賃上げの動きが続いている。今後は、カーボンニュートラルに伴うコスト増の転嫁が課題。
報告書
-
調査結果概要
- 1.
国内設備投資
- 2.
企業経営と企業価値向上
- 3.
人的投資
- 4.
デジタル化
- 5.
イノベーション
- 6.
脱炭素
- 7.
サプライチェーンと海外投資
- 8.
地域別や中堅企業の特徴
- 1.
-
企業行動に関する意識調査結果(特別アンケート)
2024年6月25日を期日として、特別アンケートを実施
大企業増減率の推移
増減率の推移を、時系列でまとめて見ることができます。
以下のExcelファイルをダウンロードしてご覧ください。
過去の調査結果
過去の調査結果はこちらからご覧ください。
設備投資トピックス(2024年度)
2024年度設備投資計画調査の結果を踏まえ、企業トップとの対話から示唆される日本企業の課題につき、現段階で認識されている論点をまとめたレポートです。
企業との対話にみる日本企業の課題 2025
~設備投資・人的投資・DX・脱炭素など~
日本政策投資銀行では、2024年6月に実施した設備投資計画調査を題材に企業トップとの対談を実施した。今年度も、23年度同様、コスト高と人手不足が国内投資の制約となっている点に大きな変化はなかったものの、脱炭素、DX、人への投資、海外投資・サプライチェーンなど様々な観点から日本企業が直面する最新の課題を聞くことができた。それらを整理したものが以下の通りである。
- 1.
国内設備投資
企業の国内投資意欲は旺盛だが、コスト高や人手不足などにより、投資の延期や見送りが懸念される。
- 2.
人手不足、人的投資
人手不足が深刻となる中、特にIT、AI人材や技術職が不足。
省力化投資や外国人労働力の導入などの人手不足対応策にも限界がある。海外の日系企業では、給与水準引き上げ以外の手段で人材の確保を図る動きもみられた。 - 3.
DX
DXの重要性を認識する企業は多いが、DXを推進するIT人材が不足している。
多くの企業が主に事務効率化に関してAIを利用しており、一部に事務効率化の範囲を超えた先進的な取り組みもみられた。一方で、AI普及に向けては安定電源が必要であり、原発への期待が高い。 - 4.
脱炭素
これまで以上に脱炭素対応と収益性の両立に苦慮する企業が増え、政策支援の充実を求める声が多い。
欧州でも、脱炭素の取り組みは採算性の観点やトランプ2.0に伴う米国の政策変更などにより足踏み。ただし、中長期では脱炭素の取り組みは継続するとの声が多く、日本のトランジションの取り組みにも一定の評価。脱炭素の取り組みが遅れるアジアにおいては、日本のノウハウが活用できるチャンスもある。 - 5.
企業経営と企業価値向上
原材料価格や人件費高騰分は概ね転嫁ができている一方で、脱炭素投資など総合的なコスト増については、顧客の理解を得にくく、未だ転嫁が進んでいない。
新規事業創出やポートフォリオ転換を通じ、長期目線での成長を目指す前向きな取り組みが聞かれた一方、短期的な収益獲得と中長期的な成長投資とのバランスに悩む企業も。 - 6.
海外投資とサプライチェーン
人手不足もあり国内回帰は限定的ながら、研究開発や高付加価値製品製造等は国内で継続。
中国は、生産拠点としての重要性が低下も、撤退は困難。代わりに、人口増が見込まれる東南アジアやインドへの投資が増加傾向。
お問い合わせ
日本政策投資銀行 産業調査部 設備投資計画調査担当
TEL: 03-3244-1845
E-Mail: capex@dbj.jp