全国設備投資計画調査(2023年6月)
DBJが毎年実施している民間法人企業を対象とした設備投資計画調査です。
概要
2023年度の設備投資計画の特徴
2年連続の増加によりコロナ前を超えて新たな成長へ
デジタル化や半導体、EVの投資が旺盛、人流拡大に向けた投資再開も
1. 国内設備投資
- 大企業(資本金10億円以上)の2022年度国内設備投資は、コロナ禍で見送った投資の再開に加え、EVや半導体、同材料の開発・増産、都心再開発もあり、3年ぶりに増加した(10.7%増)。
- 23年度は、前年比20.7%の大幅増の計画。 昨年度から先送りされた投資に加え、デジタル化の加速を受けて、半導体の製造能力増強が、素材型におけるシリコンウエハなどの材料を含めて拡大。EV投資も増加する。また、人流拡大を受けて、鉄道の安全対策、航空機導入が再開するほか、都心再開発も継続し、製造業、非製造業ともに2年連続で増加する。
2. サプライチェーン
- 原材料費や人件費の高騰に加え、米中対立のリスクを踏まえて、海外の調達先分散のほか、需要地での事業拡大を図る。また、コロナ前に比べて、国内の生産拠点を強化する方針がみられる。
3. 脱炭素
- 今年も再エネ、省エネ、EVが中心。SAF(持続可能な航空燃料)などの新エネルギーも一部みられるが、今年度の設備投資や研究開発に占める脱炭素割合は大きく高まらず。脱炭素を進める上での課題は、開発コストが低下し、調達面を挙げる企業が増加した。
4. デジタル化
- デジタル化投資は、脱炭素関連や鉄道の利便性向上などで増加。生成系を含むAIの活用や関心は高まったが、デジタル化の取り組みは既存システムの更新が大半。また、新型コロナ5類移行もあり出社回帰の方針がみられ、中長期的なオフィス面積見通しは改善。
5. イノベーション
- 研究開発は、電動化やIoT関連のほか脱炭素関連もあり増加。イノベーションに向けて人材不足が最大の課題となる中、人材育成に積極的に取り組むが、スタートアップとの連携は1割程度。スタートアップとの連携拡大には、共同研究支援のほか情報整備支援が求められる。
6. 人的投資
- 人材の獲得が必要とされる中、採用強化のほか賃金引き上げに積極的な姿勢がみられる。人材獲得の代替策としては自動化投資が大半の企業で挙げられた。
7. 地域別や中堅企業の特徴
- 全国的に高い伸びとなる中、自動車のほか半導体関連のある北海道や北陸、九州などが大幅増。中堅企業にも製品・サービス価格の値上げや賃上げの動きがみられるが、カーボンニュートラルに向けた製品・サービス価格の値上げの動きは限定的。
報告書
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企業行動に関する意識調査結果(特別アンケート)
2023年6月23日を期日として、特別アンケートを実施
大企業増減率の推移
増減率の推移を、時系列でまとめて見ることができます。
以下のExcelファイルをダウンロードしてご覧ください。
過去の調査結果
過去の調査結果はこちらからご覧ください。
設備投資トピックス
2022年度設備投資計画調査の結果を踏まえ、企業トップの方々との対話から示唆される日本企業の課題につき、現段階で認識されている論点をまとめたレポートです。
企業との対話にみる日本企業の課題 2023
~カーボンニュートラル・サプライチェーン強化・DX・人への投資~
- 1.
カーボンニュートラル(CN)
- 日本企業は幅広い業種でCN対応の必要性を認めるが、昨年同様、経済的メリットを見い出せていない。
- 国際的には、ウクライナ危機を経て現実路線へシフトし、トランジションの重要性に対する認識が高まった。国内でもR&Dは進むが、複数の脱炭素技術において海外が先行しているとの見方もある。
- 政府は「GX(グリーントランスフォーメーション)実行に向けた基本方針」を提示し、脱炭素投資の支援策に予算措置を講じるが、着実なルール整備や脱炭素戦略の国際的なアピール強化など、政府には一段のイニシアティブ発揮が期待されている。また、金融機関を含めて、日本の技術がイニシアティブを取るために、商用化に向けた先行事例を地域ごとに作り上げることが求められる。
- 2.
経済安全保障とサプライチェーン
- 日本企業はここ1年で中国依存のリスクを改めて認識し、その他のアジア地域への投資に注力する企業も多くみられた。ただし、地産地消を志向する大きな流れは変わらず、既に海外進出した拠点を国内に回帰する動きはさほど多くはない。一方で、地政学リスクの高まりは、新分野や高付加価値製品の投資を国内に振り向ける契機になる可能性がある。
- 3.
DX(デジタルトランスフォーメーション)とイノベーション
- DXの加速に向けて、M&Aや中途採用によるIT人材の確保が一つの有効策であるが、IT人材には企業戦略の理解が必要との声も聞かれた。また、現在の仕事をデジタル化するコストを上回る効果を得るために、業務の抜本的な改革も必須との指摘もあった。
- 海外では新製品の上市が早く、イノベーションの事業化が進みやすいとの見方もあった。日本においても、検査基準の見直しや失敗を許容する風土の醸成など、商用化を前倒しする方策が求められる。
- 4.
人への投資
- 競争力強化に向けて、M&Aや中途採用による外部人材確保、出向による人材教育など、社内外での適正な人材配置や円滑な労働移動が求められる。人材確保競争が環境対応やIT投資の契機になっていると指摘する企業もあった。
お問い合わせ
日本政策投資銀行 産業調査部 設備投資計画調査担当
TEL: 03-3244-1845
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