About
SPECIAL INTERVIEW
DBJを知る
DBJの役割
DBJが持つ固有の機能とは?
MASAKAZU NARUSE
成清 正和
執行役員 経営企画部長
1994年入行。法人営業、国内支店や海外拠点などを経験後、省庁出向、経営企画、グループ会社役員など、組織体制づくりに従事。現場と企画の双方を経験することで視野が広がり、自分なりの判断軸を確立することができたと振り返る。入行理由は、「金融」「社会貢献」「地域活性化」「職員の人柄」という4つの軸を同時に満たす唯一の存在がDBJであったから。
時代の変化に伴って
変わりゆくDBJの役割
その変遷を追う
~過去から現在へ~
―― DBJを初めて知る方に向けて、まずは設立の背景と目的について教えてください。
1951年に設立された「日本開発銀行」がDBJの前身です。終戦間もない日本を復興させるためには「重厚長大産業」の育成が不可欠で、エネルギー、鉄鋼、造船といった産業分野に対し、重点的に資金を投入する必要がありました。そこで民間金融機関を補完する役割を担うことを目的に立ち上げられたのが、政府系金融機関としての「日本開発銀行」でした。
―― その後、どのような変遷をたどってきたのでしょうか?
重厚長大産業の育成が軌道に乗ってからは「都市開発」へ重点分野を拡大し、東京への一極集中が顕在化した後は「地域開発」にも重きを置くように。同時に、輸送力強化のため、鉄道や空港といった「インフラ」にも注力しつつ、公害問題やエネルギー問題といった新たな社会問題にも対峙していきました。こうして時代ごとの変化に対応し、重点分野を移し広げながら、長期資金の供給を通じて日本社会の発展に貢献してきました。1990年代後半からは「金融手法の高度化」に取り組んでおり、DBJ業務の根拠法である「株式会社日本政策投資銀行法」の第一条(目的)にも、「金融機能の高度化に寄与することを目的とする」と明記されています。
―― 具体的には、どのような金融手法に取り組まれてきたのでしょうか?
例えば、対象プロジェクトのキャッシュフローに依拠した「プロジェクトファイナンス」、企業が保有する不動産の収益力に着目した「アセットファイナンス」、従来から金融機関が取り組んできたシニアローンと比べて返済順位が低くリスクの高い「メザニンファイナンス」などが挙げられます。さらには私自身も携わっていた、公共施設などの建設・管理・運営などを民間の資金や経営・技術的能力を活用して行う「PFI(Private Finance Initiative)」なども手がけてきました。また、ユニークなところでは、企業の非財務情報を評価する融資メニューである「DBJサステナビリティ評価認証融資」や、環境・社会への配慮がなされた不動産を支援する「DBJ Green Building認証」なども生み出しました。もちろん融資だけでなく、「エクイティファイナンス」といった投資にも、いち早く取り組んできました。
―― 近年の投資手法の具体例としては、どのようなものがありますか?
一つには、「SIB(Social Impact Bond)」があります。民間資金を活用して革新的な社会課題解決型の事業を実施し、その事業成果を支払いの原資とすることを目指すという、官民連携の取り組みとして普及させました。また、若手行員の発案により「サーチファンド」も立ち上げました。経営者を目指す人と、地域の中小企業において事業承継に悩む経営者とをつなぎ、そこに対して投資を行うというものです。さらには、スタートアップの創出・育成、イノベーションエコシステムの構築などに向けた取り組みを推進するため「DBJスタートアップ・イノベーションファンド」を設置し、第一号案件として、国内外の水問題を抜本的に解決する可能性を秘めた企業へ出資を実行しました。いずれにしても、かつての日本開発銀行が、あるべき日本の姿を思い描きながら高度成長を支えてきたように、現在のDBJも新たな時代を見据えて、金融機能の高度化を図ることで、複雑化する社会課題の解決に向けて先鞭をつける役割を担っています。
DBJならではの特徴から見えてくる
その独自性や魅力とは
―― 他の企業にはないDBJの役割や機能について教えてください。
DBJの強みとして、「中立性」「長期性」「パブリックマインド」「信頼性」という4つのDNAがあります。「中立性」について言えば、DBJはどの企業グループにも属しておらず、あらゆる機関、企業との連携が可能です。例えば、事業者にとって最初の拠り所となるのはメインバンクですが、メインバンクだけでは負い切れないリスクがある場合、それを相談したり、リスク自体をシェアしたりできる相手として最初に声をかけてもらえるのが私たちDBJです。
―― DBJにはどういった期待が寄せられているのでしょうか?
現職に就く前は企業金融第3部に在籍し、小売・食品製造、物流、商社、リース業界を担当していました。これらの業界の中には、コロナ禍の影響を大きく受けた企業もあり、事業者からだけでなく、事業者のメインバンクを務める各金融機関からも数多くの相談が寄せられました。このとき期待されたのは、全体最適を見据えた上で多様な関係者をつなぎ、コーディネートすることによって、事態の打開を図っていくということ。「中立性」を特徴とするDBJだからこそ果たせる役割であると、私自身、再認識した出来事でもありましたね。また、「長期性」にもDBJらしさが表れていると思います。
―― 「長期性」には、どういった意味合いがあるのでしょうか?
DBJは、お客様とお付き合いする際、目先の利益にとらわれず、その後どうお客様が発展していくか、成長をどのようにサポートしていけるか中長期的な視点で考えられる組織です。社会課題が複雑化し、事業環境の不確実性が増す中、脱炭素社会実現に向けた多様な投資を考えていかなければならない。10年先、20年先を見据えた壮大な取り組みですが、誰も解を持ち合わせていない中で、長期的視点から仮説を立てて挑戦していくことこそDBJが企業理念として唱える「金融力で未来をデザインします」が意味するものだと理解しています。難題ですが、こうした仕事を面白いと思える方はDBJに向いているかもしれませんね。「金融力」とは、前述の多様な金融手法にとどまらず、「ナレッジの提供」も非常に重要であると私たちは考えています。
―― それは、どうしてでしょうか?
脱炭素社会実現に向けた取り組みも、産業、企業、地域によって温度差があるというのが私たちの実感です。そして、その原因は情報格差にあります。情報に触れている人たちにとっては自分事、触れていない人たちにとっては他人事。しかし究極的には、日本に暮らすすべての人たちが自分事と捉え、足並みを揃えない限り、日本における脱炭素社会は実現しません。そこでDBJでは、再生可能エネルギーや水素に関するレポートを作成し、地域企業、経済団体、金融機関といった関係者の皆様と議論する場の創出を推進しています。そして、議論がなされていない地域へは横展開していく。こうした「ナレッジの提供」を通じた地道な啓発活動が脱炭素に向けたトランジションの第一歩になると考えています。
―― ほかにも、DBJ独自の具体的な役割はありますか?
特徴的な業務としては、「特定投資業務」と「危機対応業務」があります。「特定投資業務」とは、地域経済の活性化や日本企業の競争力強化を目的として、融資よりもリスクが高い「資本性資金」をDBJが提供することで、民間金融機関による成長資金の供給促進、すなわち呼び水効果を狙うものです。これはDBJが果たすべき大事な使命であり、社会からも期待されているものだと認識しています。そして「危機対応業務」とは、国内外の金融秩序の混乱や大規模災害、感染症等の被害に対処するための必要な資金を、政府指定の金融機関として供給するもので、リーマンショックや東日本大震災、そしてコロナ禍などに際して、累計8.7兆円規模の資金を供給してきました。不測の事態によって社会に混乱が生じたとき、率先してリスクを取り金融市場の円滑化を図ることも、DBJとしての大事な役割だと考えています。
―― ご自身が思うDBJの価値、魅力について教えてください。
「経済価値と社会価値を両立できる」という点です。この案件に取り組む社会的意義とは何か。金融というツールを用いて自分たちには何ができるのか。こうしたことを徹底して考え抜くことが企業文化として根付いているのがDBJです。行員一人ひとりが社会全体を俯瞰して物事を捉え、課題解決に向けて日々奮闘することで、扱う業務領域はさらに広がっていきます。もちろん、個人の力ではどうにもならないこともたくさんあります。ですが、実際に30年働いて実感しているのは、少人数な組織ゆえに生まれるDBJの融通無碍なチームワークをもってすれば、「金融力で未来をデザインする」ことが可能であるということ。パブリックマインドを発揮し、持続可能な社会の実現をつねに目指しているのがDBJという組織であり、それは私たちの誇りでもあります。
将来を見据えてDBJが取り組む
重大な社会課題の解決に向けて
―― 未来を見据えて、DBJはどのような取り組みを推進していきますか?
私たちは2021年に「第5次中期経営計画」を策定し、その計画のもとに各種取り組みを実行してきましたが、外部環境の大きな変化を踏まえ、2023年に計画を見直しました。そこでは、「脱炭素」「新事業の創出」「人口減少」「金融市場・リスクマネー」を重要課題・テーマとして捉え、これらの社会課題を解決するべく「リスクマネー供給」「新事業創出支援」「地域×トランジション」「人材育成」といった4方向からのアプローチを考えています。
―― それぞれの具体例を教えてください。
「リスクマネー供給」についてですが、今後脱炭素に向けて、特に製造業で多額の投資が必要になると予想されている一方で、地政学リスクの高まりを受け、サプライチェーンの見直しも各産業で行われており、そこにも巨額の資金が必要となることが予想されます。お客様からのリスクマネーニーズに応えるべく、投資業務の高度化を組織的に進めていきます。
次に「新事業創出支援」についてです。DBJは従前よりイノベーション分野に支援を行ってきましたが、日本経済の今後の発展・成長のための起爆剤となるのはスタートアップであると私たちは考えています。食糧問題、エネルギー問題、スペースデブリ(宇宙ゴミ)問題、将来の医療体制の再構築など、様々な課題解決に取り組む数々のスタートアップへの投資など、今後もさらに取り組みを強化していきます。
そして「地域×トランジション」。脱炭素に向けて産業界に大きな変化が起こると想定される中で、その影響をもっとも大きく受けるのが、各産業に支えられている各地域です。日本の産業競争力を維持・強化しながら、公正な移行、つまりトランジションを進めるためには、前述の「ナレッジの提供」が必要不可欠です。自治体に加え、地域の経済団体や金融機関を巻き込んで、地元産業・地域・世代をつなぎ、地域のあるべき未来を共に創出していきたいと考えています。
最後に「人材育成」についてです。DBJではこれまでも人材育成に力を入れてきましたが、不確実性が増し課題が複雑化している事業環境を踏まえ、変化に対応し社会に付加価値を提供できる人材を育成していきたいと考えています。具体的には、グローバル人材育成プログラムの強化や早期に地域・海外・投資業務を経験する戦略的ジョブローテーションの推進などが挙げられます。
ここで改めてお伝えしておきたいのは、これまで述べてきた4つの取り組みを企画・実行し、未来を切り拓いていく主体となるのは、これからDBJに入行される皆さんでもあるべきということです。
好奇心に基づく豊富な経験が
良い仕事を創り出す
~DBJ行員に求められるもの~
―― これからのDBJ行員に求められる資質は何でしょうか?
DBJの企業理念の礎となっている「挑戦」と「誠実」、この二つに尽きると私は考えています。時代の半歩先、一歩先を見据えて新しい事柄に「挑戦」すること。業界やお客様に対して「誠実」であること。そしてこの二つの資質を磨くために、個人的にもう一つ付け加えさせてもらうなら、「好奇心」を持つということです。
―― 「好奇心」が必要とされる理由は何ですか?
好奇心に基づく豊富な経験が良い仕事を創り出す、というのが、DBJで30年働いて体得した私の教訓でもあるからです。これまでのDBJ人生を振り返ってみると、好奇心を持っていたからこそ多様な経験を積むことができ、幅広い知見、高度なスキル、銀行員という枠に収まらない広い視野を身に付けることができたと考えています。そして好奇心を忘れなかったからこそ、社内外を問わず数多くの素晴らしい出会いに恵まれ、いろいろな方々とたくさんの仕事ができ、それが今日までの私の人生を豊かにしてくれました。結局、仕事というのは何をやるかも大事ですが、誰と働くかはもっと大事です。先日、あるマスコミの方から質問されました。「30年前に戻れるとしたら、成清さんはどの企業を選びますか?」と。「30年前も、30年後の今も、私の選ぶ企業はDBJしかありませんよ」とお答えしましたが、これが私の本心です。どんなときも好奇心を忘れず、DBJの理念に共感してくださる人たちと共に、私自身も未来を切り拓くための挑戦をこれからも続けていきたいと思っています。