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BUSINESS REPORT

DBJのテーマ

エネルギーDBJ

エネルギー

MASAAKI MIYAKE

三宅 正哲

PROFILE

企業金融第5部エネルギー・プロジェクト班/2019年入行
※取材当時
企業金融第6部にて製薬・医療機器向けファイナンスに従事後、2020年より現部署。陸上風力や太陽光発電プロジェクト向け投融資の検討、投資実行済み陸上風力案件におけるモニタリング等を担っている。

画像:三宅 正哲

カーボンニュートラル実現に不可欠な再エネの導入拡大。
その鍵となる、柔軟な資金調達。

―― エネルギー業界では今、何が起きているのでしょうか?

地球温暖化や異常気象など、世界ですでに発現しつつある環境問題に対応するために、2015年にパリ協定が採択されました。「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」などの実現に向け、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。日本も2020年10月に、この仲間入りを果たしましたが、こうした中でエネルギー業界は各産業の脱炭素化をリードする存在となっています。政府が策定した第6次エネルギー基本計画の2030年電源構成目標では、再生可能エネルギー(以下、再エネ)が36~38%(2019年実績:18%)を占めており、中でも太陽光と風力発電の普及促進が最重要課題となっています。そこでエネルギー業界では目下、多くの企業が太陽光や風力発電プロジェクトの開発、取得を加速させています。

―― 脱炭素化としてはやはり、太陽光と風力が有力なのでしょうか?

そうですね。水素やアンモニアなども注目されていますが、現時点において国の導入目標の一番に掲げられているのが太陽光、次いで風力であり、当部が手がける案件の多さもこの順となっています。太陽光発電は、プロジェクトとしては風力よりも一般的にリスクが低く、相対的に開発を進めやすいのですが、日本は平地が少ないため適地の確保が難しい、かつ、夜間や悪天候時には発電できないというデメリットがあります。対して風力発電は、陸上風力と洋上風力とに大別されますが、どちらもプロジェクトとしては太陽光よりリスクが高い反面、夜間や悪天候時にも発電できる上、洋上の場合は未活用の適地が豊富にあるというメリットがあります。洋上風力には洋上特有の論点があり、先の3つの中では最もプロジェクトとしてリスクが高いものの、島国である日本にとっては将来的な再エネの主力となるポテンシャルがある、というのが現時点における業界の共通認識となっています。とはいえ、これら再エネの普及を拡大していくことは決して簡単なことではありません。建設段階から多額の資金を必要とする一方で、建設期間中・運転開始後いずれもリスクは認められ、資金調達は容易でないというのが、日本のカーボンニュートラル実現に向けた障壁の一つとなっています。

―― つまり、DBJが果たす役割もそこにあるわけですね?

そう理解しています。中期経営計画で掲げている「GRIT戦略」でもGreenへの取り組みを重点分野と位置づけていますが、日本のカーボンニュートラル達成は、地球の将来的な存続にも影響する極めて重要な課題であると認識しており、DBJは再エネや脱炭素化を目指す事業への投融資を積極的に実施すべきであると考えています。そもそも歴史を遡れば、1951年に戦後日本の持続的な経済成長を企図して前身の日本開発銀行が設立されて以降、私たちは産業政策の中心課題であった電力分野への長期的な資金提供を先導してきました。エネルギー革命が世界的に進行し、石油への依存度が急速に高まった際には、石油企業の基盤強化や石油備蓄の促進を図るべく、石油業界へのファイナンスも開始しました。その後の石油危機では、石油依存度の低下を目指したエネルギー政策を達成するために、代替エネルギー利用促進に向けたファイナンスも実施してきました。そして1998年には、火力発電プロジェクトにおいて国内初のプロジェクトファイナンスをアレンジしましたが、こうしたエネルギー業界における数々の取り組みはまさにDBJの使命を体現しています。

画像:三宅 正哲

レンダーとスポンサーの双方の立場を理解し、
政府との橋渡しも行いながら、
誰にとってもWin-Winの関係性を追求していく。

―― お話にあったDBJの使命について、詳しく聞かせてください。

エネルギー事業には巨額の資金が必要であり、発電プロジェクト一つを取っても数千億円ものお金が必要になることが少なくありません。したがって、金融機関のサポートなくしては事業が成り立たない産業と言っても過言ではなく、国内初のプロジェクトファイナンスがエネルギー分野で組成されたのも、決して偶然ではありません。さらに、もともとエネルギー産業自体が規制産業ですが、再エネのように従来よりもコストのかかる発電方式を普及させていくためには、政府の支援も不可欠です。事業者と連携してベストなファイナンスストラクチャーを組み立てながら、政府に対しては必要な支援策を提言していく。こうして事業者と政府の架け橋となってリーダーシップを発揮していくことが、エネルギートランジションという重要局面を迎えた今日、改めてDBJには強く求められていると感じています。

―― 単なる資金提供者ではない、ということですね?

その通りです。また資金提供については、融資だけでなく出資者の立場でプロジェクトのスポンサーとなれることも特徴的です。スポンサーとして獲得した、事業に対する深い知見は、レンダーとして融資を組成する際に大いに役立ちますし、逆に様々な類似プロジェクトに対し融資をしていることで、スポンサーとなった際にバンカブル(融資可能)な事業運営体制はどのようなものか、どのように金融機関と交渉していけばよいのかがわかります。この両方の視点をよく理解しているという存在はDBJをおいてほかになく、だからこそ提供できる価値があるとも感じています。

また、発電プロジェクトには、スポンサーのほか、電力会社、建設会社、O&M(Operation & Maintenance)会社、保険会社、土地所有者など様々な利害関係者が複雑に絡みます。各社が自社ビジネスの収益機会として行動する中で、DBJに求められるのは、中立的な立場で各種利害を調整し、皆が納得できる案件へと仕立てていくことだと思います。誰かに利益が偏るのではなく、DBJが調整弁となってWin-Winの関係性をあらゆる立場で成立させ、多くの事業者が参入しやすい環境を整えられれば、再エネ普及・産業振興にも繋がるものと捉えています。

画像:三宅 正哲
画像:エネルギー

自らもスポンサーとなることによって、
リスクや問題点を深いレベルで理解する。

―― 実際にDBJがスポンサーとなった案件の例を教えてください。

2016年に風力専業開発事業者とDBJとでファンドを設立し、同事業者が開発した風力発電所持分の一部を買い取ることで、私たちも風車100基を保有するファンドのスポンサーとなりました。この案件は、風力発電事業に関しては国内初となる「キャピタルリサイクリングモデル」を志向した画期的な取り組みです。同事業者はファンドにアセット持分の一部を売却することで、投下資本の一部を早期に回収し、その資金を元手に新たな風力発電所開発を進めることができるようになります。私たちはスポンサーとなったことで風力発電所の運営に事業者として関わることとなり、私自身もその担当者として、日々の発電量を確認しながら、稼働率の改善策の検討や風車の損傷に対する修繕判断といったモニタリング業務を担っています。この結果、陸上風力プロジェクト特有のリスクや問題点を深いレベルで理解することができ、次の案件検討においても活かすことができています。

―― 具体的には、何がどう活かされてくるものなのでしょうか?

風力発電プロジェクトに新規で投融資する場合、その多くが建設中のため、将来的に発現するリスクを具体的にイメージすることは極めて難しいというのが実状です。しかし、私たちはスポンサーとなったことで、たとえば風車というのはどれくらいで修繕が必要になってくるかがわかりましたので、次の案件においてはO&M契約にあらかじめ反映させておくことで、想定以上の出費を抑える工夫ができるようになりました。また、事業期間中に土地の権原が一時期、宙に浮いてしまう可能性が出てきたのですが、これも登記などの手段で未然に防ぐ重要性がわかりました。こうしたリスクやポイントを一つひとつ具体的に把握、整理しておくことで、次の案件では契約の建て付けの時点からそれら論点をしっかり織り込むことができます。実際、青森県で進めている陸上風力発電プロジェクトに対する投資案件でも、スポンサーとして蓄積してきた知見が活きています。

―― それは、どのようなプロジェクトですか?

ガス会社、不動産会社、そしてDBJの3社で出資した、異業種連携による陸上風力発電プロジェクトです。技術面に長けるガス会社、土地の権原に詳しい不動産会社、そしてファイナンスに通じた私たちの、まさに3社の特徴を活かし、強みを出し合ってクローズできた案件というのがポイントです。ガス会社と不動産会社の間に接点は少なかったのですが、両社ともリスク分散を図りながら事業開発を行いたいというニーズを持っており、そこでDBJが橋渡し役になることで3社による共同出資が実現し、両社のニーズを満たすスキームが構築されました。また、DBJのプロジェクトファイナンスに対する豊富な知見も活用し、プロジェクトのキャッシュフローモデルを私たちが自ら作成することで、プロジェクトに融資を提供する金融機関とのスムーズな交渉にも貢献できたと思います。まさにレンダーとスポンサー、双方の立場を理解し、双方のノウハウを蓄積するDBJの特徴を活かすことで、異業種同士でのWin-Winな共同案件組成が可能になったと思っています。

画像:三宅 正哲

開発リスクも取れる金融機関となることで、
多様な企業の参入を促し、
再エネ普及を加速させていく。

―― 今後、再エネ分野における資金調達を容易にするために、DBJは何をすべきなのでしょうか?

再エネ発電事業において、建設リスク、開発リスクを取ってファイナンスができる金融機関は現時点では少なく、エネルギー業界の企業を中心に、事業者だけでリスクを背負ってプロジェクトの初期段階を進めているのが実状です。こうした中でDBJは、様々な再エネプロジェクトのスポンサーとなることで知見を蓄え、建設リスクまでは取れるようになりましたので、今後はその前段階にある開発リスクもより深く取れる存在となっていくことが必要だと考えています。そのためには本当にクリティカルなリスクが何かを見極め、整理することが重要ですので、トライアンドエラーを繰り返しながら少しずつでも着実に前に進んでいきたいと思います。

―― そうして金融機関が開発リスクを取れるようになると、どのようなメリットがありますか?

エネルギー業界の企業、あるいは資金豊富な企業のみならず、様々な企業が本業を活かしながら再エネ普及を加速させていけるようになると考えています。たとえば不動産会社の場合ですと、自らが発電した再エネ電力を自社の開発したビルに導入することができれば、そのビルの付加価値となります。こうした取り組みが多業種、多方面で普及していけば、それはそのまま持続可能な社会の実現へと繋がります。もともと再エネというのは民主的なエネルギーで、太陽光や風力は地球上の至る所で手に入ります。化石燃料は時に紛争をもたらし、その利権が世界各国の経済格差や日本のエネルギー確保の不安定さを生み出す一因ともなってきましたが、再エネはこうしたことと無縁であり、その普及は平和な社会の実現にも繋がるものと信じています。レンダーとして、あるいはスポンサーとして、蓄積してきた知見を活かして多くの企業の結節点となれるDBJにおいて、私も一担当者として微力ながらも全力で、地球の重要課題であるカーボンニュートラル実現という大きな目標に向かって邁進していきたいと思っています。