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BUSINESS REPORT

DBJのテーマ

イノベーションDBJ

画像:武田 瑞穂

MIZUHO TAKETA

武田 瑞穂

PROFILE

業務企画部 イノベーション推進室/2020年入行
入行後、アセットファイナンス部に配属となり、国内の不動産をターゲットとした投融資業務に2年間従事。その後、関西支店へ異動し、非製造業のお客様への法人営業を担当。2023年4月より業務企画部イノベーション推進室に所属。

社会的なインパクトをもたらす
可能性を秘めた
スタートアップへの投資。
リスクを負いながらも果敢に挑戦。

―― イノベーション推進室とは、どのような取り組みを行っているチームなのでしょうか?

研究や開発の成果が事業化されれば社会への大きなインパクトが見込まれるものの、社会実装や収益化までのタイムラインの見極めが困難であり、金融投資家の一般的な目線感ではアプローチしがたいスタートアップに対して、リスクマネーの供給を通し、より良い未来をデザインすることがイノベーション推進室のミッションです。DBJはこの取り組みを「Society5.0挑戦投資」と銘打ち、2020年から推進しています。DBJは、長期性・中立性・パブリックマインド・信頼性という4つのDNAを標榜していますが、このSociety5.0挑戦投資はまさにそれらを体現するものであり、大きなやりがいを感じながら業務に臨んでいます。

―― DBJには他にも投資の専門部隊がありますが、イノベーション推進室の特徴は何でしょうか?

私が所属するイノベーション推進室のほかにも、企業投資第2部とグループ会社のDBJキャピタルが投資業務を専門に担っていますが、私たちのチームは少し性格が異なっており、Exitまでの時間軸が読めないような、純投資の目線では難しい案件であっても、日本の経済や産業の発展に大きく貢献できるスタートアップだと見込めば果敢に投資していきます。一定のリスクを負って社会性の高い投資を追求していることが、イノベーション推進室の大きな特徴です。2017年のチーム設立以来、すでに10件ほど投資を実行しており、遠隔医療や半導体新素材、分散型水処理、さらには空飛ぶクルマやスペースデブリ除去など、最先端の技術開発に挑むディープテックを中心に支援しています。

画像:武田 瑞穂

政府と民間投資家からの支援の間に
生まれる“空白”。
ここを埋める役割こそ、DBJが担う。

―― そもそも、日本におけるイノベーション創出について、金融の観点からどのような課題がありますか?

未来に向けて日本を成長させていくためには、新しい産業を興して経済に活力をもたらすイノベーションが重要です。その創出の一翼を担うのがディープテックスタートアップ(差別化された高度な科学・エンジニアリング技術を用いて事業を展開するスタートアップなど)ですが、社会実装に至るまでには高いハードルがあるのが現状。金融面でいえば、開発を持続し、その成果を事業化するには多額の資金が必要であり、それをいかに調達するかが、多くのディープテックスタートアップが直面する大きな問題です。昨今、日本政府もイノベーション創出の促進を掲げ、スタートアップによる研究開発とその成果の事業化支援を目的とした制度を設けており、各省庁が連携しながらスタートアップへ積極的に補助金を交付しています。

―― 補助金の支援があるのならば、問題ないのでは?

補助金を得た後が問題です。先述の通り、ディープテックスタートアップは社会実装・事業の収益化までの時間軸が非常に長いケースが多く、実装に向けた開発に十分な資金量が得られない時期が続くことが往々にしてあります。なぜなら、収益が上がっていない状況で、金融機関から融資を受けるのは難しく、またベンチャーキャピタルをはじめとする金融投資家も、あまりに収益化までの時間軸が不明であると、投資対象から外してしまうこともあるからです。つまり、政府による補助金支援と、民間の投資家による資金拠出の間を埋める資金拠出者が存在せず、それがスタートアップの成長を妨げる大きな課題となっています。そこで、その間を埋める役割を担うべく、私が所属するDBJのイノベーション推進室では、様々な投資先支援を行っています。

―― イノベーション推進室による投資先支援の具体的な方法について教えてください。

出資するだけではなく、投資先の経営に関与していく「ハンズオン」のスタイルで支援しています。チームメンバーそれぞれが、担当する投資先企業を定期的に訪問して、経営の一角を担い事業運営に関わっています。私自身も、2020年に投資を実行したスタートアップである「エクセルギー・パワー・システムズ」のハンズオン支援に携わっています。この会社は、通常の蓄電池の約20倍もの高速充放電が可能な次世代型ニッケル水素蓄電池を開発した東京大学発のスタートアップです。この技術を活用し、発電量の変動が激しい再生可能エネルギーの需給バランスを調整するサービスを提供しています。すでに再エネ先進国の欧州では、電力系統を安定化させるための需給調整市場が形成されており、日本でも近々同様の市場が立ち上がる予定です。この市場で収益化できるまでにはまだ時間がかかりますが、日本における再エネ普及に大きく貢献するスタートアップだと見込んでいます。

画像:武田 瑞穂
画像:武田 瑞穂

ハンズオン支援に奔走。
業界の最先端の情報を展開し、
未来に向けての旗振り役に。

―― エクセルギー・パワー・システムズに対して、どのような貢献をしているのでしょうか?

週1~2回、東大のキャンパス内にあるオフィスに出向き、CEO(最高経営責任者)と海外事業に関する課題解決のためのディスカッションを行うとともに、ファイナンス面においてCFO(最高財務責任者)の相談相手となっています。例えば、事業の拡大に応じた組織のあり方などを考えて将来的な資金計画をともに立て、新たな投資家を募るため、金融機関・投資家対応の相談を受けたり、実際に既存投資家の立場でヒアリングに応じたりするなど、経営陣に伴走するかたちで同社の成長を支援しています。今はすでに会社として軌道に乗り始めているところですが、それまでは組織づくり、特に人材面の増強をともに行ってきました。また、政府系金融機関であるDBJのネットワークを活かした行政対応も担っており、経産省の資源エネルギー庁を訪問して、検討が進められている需給調整市場に関する情報収集にもあたっています。行内に対しては、エネルギー分野を管轄している企業金融第5部や電力分野の調査を担当している産業調査部とナレッジを互いに提供し合うことで、エネルギー業界に今後どう向き合っていくかを俯瞰的に学ぶこともでき、個人としても視座が高まったように感じています。

―― そのような経験を踏まえ、今後どのような役割を担うべきだと考えていますか?

イノベーション推進室がアクセスしているのは、様々な業界の最先端の領域です。そこで得た知見を行内に展開することで、担当業界を抱える営業部署がそれぞれ将来求められるソリューションを考えるきっかけとなり、新たな投融資提案につながることを目指しています。いま携わっているエクセルギー・パワー・システムズの案件でいえば、前述の企業金融第5部とも連携し、これから本格化する系統用蓄電池の市場でDBJはどう貢献できるのかをともに考え、系統用蓄電池に関する勉強会を行内で開催してナレッジを共有したり、担当者間での意見交換を行ったりしています。そのほかにも、特定の産業の関係省庁や各研究機関、産業を担う大手企業や新興企業などを招いて、産業の課題や今後の戦略についてご講演いただくシンポジウムを主催するなど、積極的な情報発信に努め、未来に向けての旗振り役になれればと思っています。

画像:武田 瑞穂
画像:武田 瑞穂

課題を抱える日本のインフラを
新技術で変えていく。
DBJが担うスタートアップ投資。

―― 他にはどういった業務を?

エクセルギー・パワー・システムズへの支援と並行して、最近は海外の素材系スタートアップへの投資の検討にも携わっています。この企業は真に社会を変革に導く大きな可能性を秘めているのかどうか。金融のプロフェッショナルとしての財務的な分析に加え、経営陣とのディスカッションや、外部の専門家へのヒアリングを通した技術面の精査など、投資判断を行ううえでの見極めを続けており、先日は投資先を視察するため海外出張にも行きました。この会社の技術を日本企業とのコラボレーションによって導入できれば、わが国の製造業に大きなイノベーションをもたらし、製造現場が抱える後継者不足・高齢化などの課題解決にも貢献できる。このような想いを持って、出資検討を進めています。

―― イノベーション推進室の一員として、今後どんなスタートアップに投資すべきだと考えていますか?

日本はインフラの維持に大きな課題を抱えています。老朽化の進行、自治体の財政難、人手不足が原因で、メンテナンスが十分に行えない地域も存在します。このような課題に対し、スタートアップが重要な役割を果たしています。例えば、「WOTA」は水を循環利用できる小型の水処理システムを開発し、水道インフラの補完として期待されています。この技術は既に複数の自治体で導入が開始されており、老朽化したインフラの機能維持に必要な経済・労働負担を軽減できると期待されています。
2024年1月の能登半島地震では、WOTAの技術が災害対策として活用されました。断水状況下で、水循環技術を活用した個室の温かいシャワーや、水循環型手洗いスタンドによる清潔な手洗いの提供が実現しました。これらの実績から、災害時における水インフラの迅速な復旧・支援においても、同様の技術が有効であることが示されました。
そして、私が携わるエクセルギー・パワー・システムズの系統用蓄電池も同じです。従来の電力インフラに替わり再生可能エネルギーが普及することに伴って、天候等により左右される電力供給量の波を当社の蓄電池事業により補い、再エネが安定的で持続可能とすることを目指しています。従来の「中央集約」型インフラが抱える課題を、スタートアップの事業による補完で「分散」型への移行が可能になる。この「分散」という発想がインフラの課題解決の重要なキーワードだと私は考えていて、新技術を有するスタートアップを発掘し、それらの事業化を支援できればと考えています。

―― 日本のイノベーション創出をいっそう促進していくために、これからどんなことに挑戦していきたいですか。

個人的な目標としては、アカデミアと連携し、ラボレベルの研究を事業化するプロジェクトを一つでも成し遂げること。そもそも私がDBJを志したのは、日本の競争力の源泉ともいえる研究に携わる人々が、経済的な不安を抱くことなく研究に打ち込める環境をつくりたいと思ったからです。私は学生時代、森林科学の研究室で学んでいましたが、アカデミアに進むのではなく、金融面から研究開発環境を支援したいと考えDBJに入行しました。まさにいま、入行当初の想いを実現できるチャンスが訪れていると思います。アカデミアからビジネスにつながる新たなエコシステムを築くべく、海外の事例なども調査しながら、DBJが持つ国内外・官民にわたる網羅的なネットワークを自ら駆使し、プロジェクトの実行につなげていきたいと考えています。そしてイノベーションを創出していくためには、時にリスクを取らなければなりません。表面的なリスクだけではなく、精緻な分析を重ねて、深いリスクを取って高度な投資を実行する。こうしたDBJだからこそ担えるスタートアップ投資を確立していくことも、私たちの使命です。そして、DBJの投資が事業化の一助となれたら嬉しいですね。ハンズオン支援によって事業が軌道に乗ることで、社会課題の解決に果敢に挑む起業家を増やし、その道をともに歩んでいけたらと思っています。