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BUSINESS REPORT

DBJのテーマ

サステナビリティDBJ

サステナビリティ

MAIKO HACHIYA

八矢 舞子

PROFILE

サステナブルソリューション部/2002年入行 ※取材当時
通信業界担当、支店勤務等を経て2010年よりサステナブルファイナンスに携わる。現在は同分野での新たな金融手法の企画や後進育成など、マネージャーの立場で牽引。2度の産育休を取得。

画像:八矢 舞子

持続可能な社会づくりのために
課題となっていること

―― サステナビリティについて、取り組むべき課題はどのようなものでしょうか?

地球規模での環境問題をはじめ、エネルギー問題、食糧問題など、社会の持続可能性を考えたとき、私たち人類は様々な問題を抱えているのが現状です。いま最も注目されているのは脱炭素、つまり地球温暖化対策への取り組みでしょうか。近年、世界各国で「2050年カーボンニュートラル」を目指す動きが加速しています。また、日本特有の課題として、少子高齢化、都市への人口集中などがあげられます。さらに、自然災害が多い国ですから、その対策も重要です。

―― カーボンニュートラルに向けて金融業界にはどのような役割が求められているのですか?

カーボンニュートラルに向けては世界全体で年間何百兆円というお金がかかるともいわれています。その資金をどのように工面していくのかという点で、いま金融機関にはかつてないほどの大きな役割が求められています。それは、「サステナビリティ」というラベルがつくものだけ、もしくはラベルがついていれば何でもファイナンスするということではなく、様々な業界や企業が試行錯誤する中で、どのような投資や技術がカーボンニュートラル実現に必要なのか、金融機関としての目利き力が問われている時代でもあります。また、各業界の取り組みを俯瞰的に見ることができる金融機関だからこそ、カーボンニュートラルのトレンドをともにつくり、加速させる役割も重要です。

画像:八矢 舞子

フロントランナーとして歩んできた
サステナビリティに対するDBJの取り組み

―― では、DBJのサステナビリティに関する取り組みについて教えてください。

DBJは公害問題が社会課題となった高度経済成長期から、政府系金融機関として長年にわたり環境問題に取り組んできました。その当時、公害防止関連の事業を対象とした融資は先進的な取り組みでしたが、あくまでプロジェクト単位の環境配慮に着目したものでした。そこで、もっと広い視野で、環境などに関わる経営姿勢そのものを評価して融資できないかという議論を重ねて、2004年に「DBJ環境格付融資」をスタートさせました。今でこそ、同様の金融商品が一般化していますが、当時は世界初の取り組みでした。

―― どのような制度なのですか?

たとえば、利益などの財務面はとても優れているが、環境対策に消極的なA社。逆に財務面では目立った業績はないが、環境配慮に熱心なB社。金融機関の一般的な融資制度において、高く評価されやすいのはA社です。しかし、中長期的な収益力を評価するうえで、レピュテーションや企業価値の毀損を招くような潜在リスクや長期的な成長可能性までも含めて考えると、本源的な企業価値としてはB社のほうが高いかもしれません。これを私たちはよく「氷山」にたとえます。水面上に見える財務情報ばかりに注目するのではなくて、水面下に隠れているけれども長期的な財務価値と関連性の高い非財務情報を見える化することで、もっと包括的に、長期的な視点で評価していこうというものです。

―― DBJ環境格付融資には、どんな目的があったのでしょうか?

環境対策への社会全体の考え方を転換させる目的がありました。ともすれば企業にとって環境対策にかかるお金はコストと見なされます。しかし、「DBJ環境格付融資」は、環境配慮に優れた企業がより適切な企業評価を得たうえで資金調達を実現するという流れをつくるものです。これにより、環境経営に対する意識を変えていただく、つまり金融の力で社会全体のマインドを変化させたいと考えたのです。

ただ、それはDBJ単独では難しいことです。他の金融機関とも協働を重ねることで、今では多くの金融機関で環境格付の制度導入が進み、サステナビリティへの意識が広く社会に浸透してきていると感じます。

―― 環境格付以外にはどのような取り組みがあるのでしょうか?

「DBJ BCM格付融資」と「DBJ健康経営格付融資」という制度があります。先ほどもお話ししましたが、日本は地震をはじめ自然災害が多い国です。その日本特有の風土を考慮して2006年に防災格付を導入したのですが、これを2011年の東日本大震災を契機に「DBJ BCM格付融資」へと進化させました。変更のポイントは、事業継続に評価の軸足を移したことです。つまり、事前の防災も大切ですが自然災害をゼロにすることはできませんので、事前の対策に加え、災害が発生したあとの復旧力をマネジメントすることが重要だと考えたのです。

「DBJ健康経営格付融資」は2012年に導入した制度です。人手不足や長時間労働等を背景に、従業員の健康や働きがいへの配慮がより一層求められている中、各社の健康経営の取り組みを評価するものです。このように私たちは企業のサステナビリティ経営を後押しするために、民間金融機関に先駆けて、その土壌づくりに取り組んできたのです。

画像:八矢 舞子
画像:サステナビリティ

サステナビリティファイナンスでの
先進的な取り組み

―― サステナビリティファイナンスにおける最新の取り組みとしてはどのようなものがありますか?

代表的なものとしては2020年に開始した「DBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローン」があります。これは、DBJが実行する融資に、お客様のサステナビリティ戦略上重要な課題に関連するコミットメントを付随させるものです。たとえば「環境配慮技術の活用により社会全体の温室効果ガスを○%削減」といった数値目標を掲げてもらい、その達成状況と融資の金利条件を連動させることでインセンティブにします。それに加えて、コミットメントを公に発表することによって、サステナビリティに対する経営姿勢を社会に広く伝えることでIRの側面でも効果が見込めるというものです。

―― その数値目標の妥当性を外部から見極めるのは至難の業では?

そのとおりで、非常に難しい判断になります。まず、お客様のサステナビリティ戦略の理解が必要ですし、そのうえで指標と数値目標の合意をしなければなりません。これは、私たちチームの目利き力あっての商品といえます。そして、目標の設定はあくまで入口です。これまでDBJが培ってきたノウハウや最新のサステナビリティ動向を背景とする、お客様との対話に重きを置いており、融資期間にわたる対話を通じて、企業の中長期的な成長と社会課題解決を実現するサステナビリティ戦略の遂行を支えることが最終ゴールとなります。

―― これら取り組みを推進するサステナブルソリューション部とはどのような組織なのでしょうか?

サステナブルソリューションの企画から実施までを専任で担当する部署で、現在は20名ほどの組織です。おそらく、これほどの人員でサステナビリティに専門的に取り組んでいる組織は、他の金融機関には存在しないと思います。

画像:八矢 舞子

この先のサステナブルな社会を
DBJはどのように描いていくのか?

―― 今後どのような取り組みを展開していきたいと考えていますか?

環境、BCMや健康経営などの格付融資においては、評価にとどまらず、コンサルティング機能を強化し、実際に見つかった個別課題を解決に導く必要性も感じます。また、大事なのは企業の環境等への取り組みが経営と統合されていること。すなわち企業の競争力や価値創造につながっていることです。最近、ますますその重要性が高まってきていると感じます。個々の取り組みを高度化させるだけでなく、そこから生まれる価値を成長ストーリーとして見える化することで、お客様のサステナビリティ経営をより一層サポートしていきたいと考えています。

―― つまり、サステナビリティの視点から経営課題の解決にも貢献していこうと?

そのとおりです。たとえば「サステナビリティ経営のための長期ビジョンを策定したい」あるいは「長期ビジョン達成に向けた体制を構築したい」という意思はあるものの、その実現に向けたノウハウが足りないという課題を抱えている企業は多いのが現実です。

一方で私たちには、これまで1,000件を超える格付融資を実行する中で、個々の取り組みを「ストーリー」として捉える能力が培われています。お客様のビジョン策定から始まり、ビジョン実現に向けて重点的に取り組むべき項目の特定や、ビジョン達成や事業戦略と整合する計画の策定まで、PDCAサイクルを回していくための体制を構築するなど、お客様のサステナビリティ経営をナレッジ面からも支援しています。

―― より長期的な視点で、持続可能な社会のためにDBJは何をすべきとお考えでしょうか?

まずゴールとなる社会、つまり「どういう社会をつくりたいのか」という目標を示さなければならないと考えています。ただ、それはDBJが一人で描き上げるものではなく、長期かつ広範な目線でお客様との対話を通じて、半歩先にある社会を一緒に考えていくことが重要です。2歩も3歩も先を行くのではなく、「ちょっとやってみよう」「これを次にやってみようかな」と前向きに取り組んでいただくための伴走者であり続けることと同時に、強い意志と先駆的なソリューションをもって描いた社会を実現させることがDBJの役割です。