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DBJのテーマ

地域DBJ

  • 地域
    form KYUSHU
    画像:櫻井 康平

    KOHEI SAKURAI

    櫻井 康平

    PROFILE

    九州支店/2014年入行 ※取材当時
    企業金融第5部で石油会社・ガス会社等向け法人営業を経験した後、ストラクチャードファイナンス部にて再エネ案件等のプロジェクトファイナンス組成を担当し、2019年より現職。九州地場企業への投融資のほか、地域金融機関との共同ファンド運営も担う。

  • 地域
    form HOKKAIDO
    画像:竜澤 佑佳

    YUKA TATSUZAWA

    竜澤 佑佳

    PROFILE

    北海道支店/2018年入行 ※取材当時
    シンジケーション・クレジット業務部にて、海外の取引先向けシンジケートローン案件のアレンジメント業務に従事後、2020年より現職。札幌、旭川、稚内エリアを中心に、製造業や小売業など多様な業種の企業に対する投融資業務を担当。

  • 地域
    form CHUGOKU
    画像:丸岡 弘樹

    HIROKI MARUOKA

    丸岡 弘樹

    PROFILE

    中国支店/2018年入行 ※取材当時
    企業金融第4部にて、海外エアライン向けの投融資を経験後、2020年より現職。広島県・山口県を担当し、インフラ業や製造業を中心とした中堅企業向け投融資や、脱炭素に向けたナレッジ提供等に力を注ぐ。

九州

KOHEI SAKURAI

櫻井 康平

PROFILE

九州支店/2014年入行 ※取材当時
企業金融第5部で石油会社・ガス会社等向け法人営業を経験した後、ストラクチャードファイナンス部にて再エネ案件等のプロジェクトファイナンス組成を担当し、2019年より現職。九州地場企業への投融資のほか、地域金融機関との共同ファンド運営も担う。

北海道

YUKA TATSUZAWA

竜澤 佑佳

PROFILE

北海道支店/2018年入行 ※取材当時
シンジケーション・クレジット業務部にて、海外の取引先向けシンジケートローン案件のアレンジメント業務に従事後、2020年より現職。札幌、旭川、稚内エリアを中心に、製造業や小売業など多様な業種の企業に対する投融資業務を担当。

中国

HIROKI MARUOKA

丸岡 弘樹

PROFILE

中国支店/2018年入行 ※取材当時
企業金融第4部にて、海外エアライン向けの投融資を経験後、2020年より現職。広島県・山口県を担当し、インフラ業や製造業を中心とした中堅企業向け投融資や、脱炭素に向けたナレッジ提供等に力を注ぐ。

インバウンド需要の剥落。
観光業そのもののあり方を考え直す契機。

※この記事は2021年に取材を行ったものです

櫻井

地域経済の活性化において、インバウンドは大きな追い風になったよね。私が福岡に赴任してきたのは、新型コロナウイルス感染症が発生する前の2019年。旺盛なインバウンド需要を取り込むため、各業界とも積極的に設備投資を進め、非常に前向きな雰囲気が漂っていた。しかし、その後事態は一変。アジアの玄関口である九州も当然ながら大きな影響を受けている。でも、見方を変えれば、これは観光業をはじめとする社会全体のあり方を考え直すきっかけにもなり得るのではないかと思う。インバウンドに頼ってきてしまっていたけれども、実は国内需要をこそもっと掘り起こすべきではないか――。二人は、どう考えてる?

竜澤

私は北海道に縁もゆかりもなかった中で当地に異動となりましたが、日本人である私ですら知らない観光資源の多さに驚いていますし、そこに北海道の伸びしろの大きさを感じます。一方、あまりに面積が広いがゆえに観光エリアが限定されてしまい、豊富な観光資源を活かしきれていないとの問題意識を持っています。北海道の多様なエリアの魅力を、いかに各事業者が連携し、一緒にPRしながら国内外の需要を掘り起こしていくか。こうしたエリアの垣根を越えた取り組みにおいて、支店が事業者連携におけるハブとしての機能を果たすなど、ファイナンス以外の面からも地場産業発展のきっかけを生み出していくことの必要性を強く感じています。

丸岡

本当にそうだよね。中国支店では、ポストコロナを視野に入れて、インバウンド観光に関する現状の分析や今後の課題を調査してレポートにまとめている最中ですが、そこから見えてきた問題は、そもそも中国地方がインバウンド需要をうまく取り込めていないのではないかということ。中国地方にも世界に知られる観光資源がたくさんあり、ゆえに来訪者も多いのですが、その割に宿泊者が少ないんですね。なぜなら、中国地方は旅の経由地とされ、最終目的地は大阪や福岡となってしまっていることが多いから。そこで今、中国地方では各地で行政や事業者が宿泊施設を起点とした観光振興策に取り組んでいますが、それは当地の出身である私にとっても興味深いものです。櫻井さんがおっしゃったように、コロナ禍は各地の観光のあり方を見直す契機になっていると思いますし、竜澤さんが言ってくれたように、支店はナレッジ提供等を通して、地域の面的な取り組みに対して幅広く貢献していくことが求められていると私も感じているところです。

地域
画像:櫻井 康平

地域が直面する人口減少。
視野を広げ、切り口を変えてアプローチ。

竜澤

北海道では、他の地域以上に観光業が重要産業に位置づけられているという地域特性があるだけに、支店としても関連事業者のサポートに力を入れています。特に今は二次交通のアクセスをシームレスな形にすることで、観光客にとっても利便性の高い地域交通網を形成することが肝要という認識のもと、私もバス事業者各社に対し、「観光」を切り口にいろいろとお考えを伺っているところなのですが、実は地域交通の発展は、観光振興の他にもう一つの可能性も秘めているのではないかと考えています。それは、地域交通の利便性を高めることで「交流人口」を増やし、それを地域の活性化、さらには移住者の増加へと繋げていけないか、ということです。地域が抱える人口減少の問題は北海道も例外ではありません。冒頭、櫻井さんが国内需要をこそ掘り起こすべきではないかとおっしゃったように、観光需要だけでなく、こうした潜在的な国内需要にも着目すべきではないかと感じます。
※二次交通:拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通

櫻井

エリアによって濃淡はあれど、人口減少というのはどの地域においても考えなければいけない問題だよね。ただ、金融機関としてこの問題に対して直接アプローチすることは難しく、「遠いところにいるな」と歯がゆい思いを抱くこともある。でも、だからといって指をくわえて見ているわけにはいかない。直接アプローチできないのなら、間接的にアプローチできないかと、もう少し視野を広げて考え、行動していく必要があるよね。

竜澤

そうですよね。人口減少の問題だけに目を向けてしまうと、自ずと答えに限界が出てきてしまう。だから視野を広げ、切り口を変えてみようと。

丸岡

今のお二人の話、我が意を得たりという気持ちで聞いていました。人口が減ると働き手が減り、税収も減るので公共サービスの質が低下します。すると、暮らしの利便性が損なわれ、それがまた人口流出の原因となり、地域の衰退に繋がりかねない。この負の連鎖を防ぐために何ができるのか、私も考える中で注目したのが公共交通でして、とある事業者に対し「DBJ健康経営格付融資」を提案しました。同社は人口減少に伴う慢性的な運転手不足に悩んでいたからこそ、社員の健康にすごく留意していましたので、だったらそれを健康経営格付で見える化し、外部にアピールしましょうと。お客様にとっては、DBJのヒアリングに対応したり、膨大な資料を用意したりと手間のかかるものですので、初めは積極的ではありませんでした。ですが、諦めずに提案し続けたところ、「そこまで丸岡さんが言ってくれるなら」と営業冥利に尽きる言葉もいただき採用に至りました。人口減少という中長期的な問題の解決に近道はありません。一つひとつの取り組みは一見遠回りに見えますが、地域の社会基盤を担う企業を元気にすることから地域の活性化は始まると考えた自分の判断に間違いはなかったと、今のお二人の話を聞いて勇気づけられました。

櫻井

丸岡君の取り組みは、とても大事なポイントだと思う。“風が吹けば桶屋が儲かる”じゃないけど、私たちは地域が抱える課題に対し直接アプローチできないのなら、問題意識を共有し、解決しようと努力する地場企業の優れた取り組みに焦点を当て、支援し、広めていく。そうした発想、行動の積み重ねでしか、地域が抱える大きな課題へのアプローチ法はないと思うし、地場の産業振興とはそういうことなんじゃないかな。

地域

事業承継、技術承継の課題。
域内をつなぎ、ともに向き合う。

竜澤

地場の産業振興という言葉がありましたが、櫻井さんはどのような取り組みを進められているのですか? 地域性から察するに、やはり製造業が鍵を握るのでしょうか。

櫻井

そう、九州は半導体関連事業者が集積する「シリコンアイランド」とも言われ、製造業は重要な産業の一つ。私も半導体関連の企業からM&Aに関する相談を受けたことがあってね。前部署でプロダクトに関する知識を得ていたこともあり、「これぐらいの規模のM&Aをするのであれば、資金調達手法の組み合わせとしてはこのような形が適切ですね」と、定量的にシミュレーションをしながらの提案を実施。結果的にこのM&Aは実現まで至らなかったけれど、これを機にDBJとしても担当者としても信頼関係を築くことができて、新規のお取引にも繋がったんだ。この関係性は今も続いていて、私としてもこのお客様を大事にしたいと思っている。というのもそのM&Aの主眼が、「自社の事業承継」にとどまらず「地域の技術承継」に置かれていたから。地域では人口減少、それに伴う後継者不足によって、中小企業の事業承継、技術承継が大きな課題となる中、こうした地域の課題に対し、同社は大事な技術のバトンを受け取る「人」がいないのなら、「会社」で受け継ごうという考えを持っている。このあたり、中国地方も製造業が多いだけに、丸岡君にも共感してもらえるんじゃないかな。

丸岡

そうですよね。地域にはそこにしかない技術というものがたくさんある一方で、そうした企業の多くが中小企業のため、事業承継や技術承継はこちらでも大きな課題となっています。ただ、私たち金融機関が承継者となれるわけではありませんので、何をどう残していけばいいのかというところは、すごく難しい問題です。ですから、櫻井さんのお客様のような事業会社を中心に、皆で問題意識を共有することが大事だと考えています。中国支店としても、業界の動向、国の政策や法制度の動向、世界の動向等を調査し、地場産業を担う事業会社を募って、一緒に勉強会を開いています。

櫻井

勉強会はすごくいい取り組みだね。竜澤さんも地場の主要産業である観光を盛り立てるべく、二次交通に着目し、バス事業者各社の考えをヒアリングしているとのことだけど、ゆくゆくはそれをベースに事業者と、あるいは自治体と一緒になって勉強会を開けたらいいよね。

画像:竜澤 佑佳
地域
画像:丸岡 弘樹

地場産業の維持・振興に不可欠な危機対応。
お客様にとって本当に必要なものは何か、考え抜く。

竜澤

まさに、私が着任してから今まで、業務の中心は危機対応となっているのが実状です。ですが、こうした中でもすごく勉強になった案件がありました。コロナ禍の影響で観光需要にひも付く事業会社は軒並み業況が厳しくなっている中で、交通事業を営むあるお客様も財務状況が徐々に悪化していたことから、資本性劣後ローンの投入を望まれていました。そこで私はそのお客様へヒアリングを重ね、今後の収支見通しや資金繰りについて丁寧に分析し、お客様と共に資本増強の必要性をよくよく検討しました。その結果、お客様自身が、コロナ禍の影響が継続したとしても資本性劣後ローンは必要ないというご判断に至りました。中長期的視点に立ち、お客様にとって本当に必要なことは何か、DBJができる支援は何なのかということを掘り下げて考え抜いたからこそ、お客様の要望を単に受容するのではなく、お客様が腹落ちする判断を自ら下すためのサポートをすることができたと思います。この取組を通じて、自分も「少しはDBJらしさを発揮できたかな」と感じています。

櫻井

少しどころか、見事にDBJらしさを発揮していると思うよ。お客様の要望があって与信上問題なければ、現場としては取り組みたいと思うのが自然だし、ましてセーフティーネットとして国に定められた役割を果たさなければいけないという状況にあっては、お客様の要望通り資金提供するという考えに傾いてもおかしくはないと思う。にもかかわらず、お客様にとって本当に必要なことは何かを考え抜いたその姿勢は、同じDBJのRM(Relationship Management:法人営業)として、私も身が引き締まる思いだな。

丸岡

ちなみに、そのお客様とは、竜澤さんも一緒に収支計画をつくったり、今後の財務状況について一緒に分析したりと、そういったかたちで話を進めていったの?

竜澤

そうだね。私が主導する形でお客様と収支計画を作成したり、それを踏まえた財務の見通しをお示ししながら、「中長期的にはこのような形で回復していくのではないでしょうか」「そうすると財務状況もこのような形で改善していくのではないでしょうか」といったかたちで。

丸岡

やっぱりそうなんだ。収支計画とひと口に言っても、それを一から作るには相当な労力が必要であったことは容易に想像がつくし、融資を実行しないという結論に至った時点で、何らDBJの収益にはならない。先ほどの櫻井さんのM&Aに関する提案のお話でも思ったことですが、DBJにおけるRMの仕事というのは、もしかしたら他の金融機関のRMなら実績として評価されない部分でどれだけ汗をかけるか、そこにこそ真価が発揮されるのかもしれないと思いました。

地域の金融フロンティアを絶えず開拓し、
それを世に広げていくことの連続。

櫻井

二人もすでに実感しているように、地域における密着性やリソース等において、DBJは地域金融機関に到底かなわないし、言い方を変えれば、他の金融機関が取り組んでいることをDBJがあえてやる必要もないというのが私の考え。むしろ大事なのは、顧客の課題解決を通じて地域全体の課題解決に貢献するという視点、発想のもと、お客様単独では獲得できないナレッジ、地域の金融機関単独では提供できないノウハウやプロダクトをDBJが連携して提供しながら、課題解決に向けた地域の取り組みを草の根的に普及させていくこと。そのために陰日向なく、地場の企業の結節点となるような働き方を示すことが、DBJとしての付加価値ではないかな。

丸岡

櫻井さんが地方銀行との共同ファンドを半出向というかたちで担当されているのも、そうした考えのもとでの活動なんでしょうか?

櫻井

そうだね。地銀ファンドも数が増え、メザニンファイナンスやエクイティ投資もだいぶ普及してきたけれど、それでもまだ道半ばだと思っている。DBJが直接相対しているお客様というのは世の中の企業のごく一部。日本の企業の99%が中小企業と言われる中で、そうした企業にあまねく金融サービスを提供できるのは、地域の金融機関をおいてほかにはない。だとしたら、私たちDBJの支店が担うべきは、地域の金融フロンティアを自らが絶えず開拓し、地域の金融機関と連携しながらそれを世の中に広げていくこと。この連続だと思う。

丸岡

私と竜澤さんは同期で、同じタイミングで支店配属となりました。二人でよく話しているのは、支店業務はDBJらしさを発揮しなければ取引意義が失われてしまうという難しさです。こうした中で、まさに二人とも悪戦苦闘中ですが、櫻井さんの今のお話に「それでいいのだ」と背中を押してもらえたような気がします。自治体や各事業者から寄せられる相談の中には、時に銀行の範疇を超えていると思われるものもあります。ですが、それを簡単に諦めたらDBJじゃないと思っています。自分の知識や知見が追いつかないところも、社内のあらゆるリソースを活用しながら、お客様の課題解決、地域の課題解決に資する提案や行動ができるよう、今後も努力したいと思います。

竜澤

今はまだ櫻井さんたち諸先輩方のように、自らの専門性を活かしたソリューションを提供できるようになるため修業中ですが、一方でDBJのポジションを活かし、関係者を繋ぐハブとしての役割は今の自分にも果たせるという、たしかな手応えを感じています。丸岡君が話してくれたように、DBJらしさを私たちなりに日々追求する中で、自分たちにしかできない仕事が存在することを知りました。この事実は私たちが働く上で、大きな原動力となっています。

櫻井

日本の社会課題は、地域から顕在化していく――。その最前線でお互い、自分たちにできる精一杯を重ね、地域経済を支える経営者たちの右腕となって、共に地域からこの国を元気にしていこう。