化学産業の未来に求められる
多面的なソリューション
大日方
池田さんが主に担当している化学業界の最近のトピックとしては、やはりプラスチック資源循環や、カーボンニュートラルでしょうか?
池田
そうだね。まずプラスチック資源循環について、海洋プラスチック問題などを契機にして重要性が高まってきているけれども、1社単独で取り組みを進めることは難しく、たとえば「プラスチックゴミを集めてくる会社」「再資源化処理をする会社」「再資源化製品を買って消費者に販売する会社」といった異業種間での連携が不可欠だと思っています。一つ連携事例を紹介すると、環境負荷の少ない効率的な使用済みプラスチックの再資源化技術の開発を進めている(株)アールプラスジャパンという会社があり、プラスチックの原料メーカーからそれを利用する消費財メーカーまでが出資者として名を連ねていて、バリューチェーン全体でプラスチック資源循環のプラットフォーム確立に向けて連携しています。DBJも2021年に同社に出資を行っているけれども、この案件については大日方が詳しいよね。
大日方
はい。私が関西支店にいる時に担当していたお客様と資源循環について議論を重ねる中で、このプロジェクトへの資本参加についてお声掛けいただいたものです。当時、上司からプラスチック資源循環に関する関西エリアでの取り組み支援の検討について営業企画の段階から一任してもらいました。インダストリー本部にいた先輩たちの協力も得ながら、必死になって関西の様々なお客様とディスカッションさせていただいた結果、案件につなげることができたのです。産業界のど真ん中の課題であったプラスチック資源循環の解決に深く関与できたことは、自信になりましたし、何より大きなやりがいを実感しましたね。
池田
これはまさに、インダストリー本部が目指している「業種の枠を超えた新産業創造」に関連する取り組みだね。
次に、もう一つトピックであげてくれたカーボンニュートラルに関してだけど、製造業の中では化学産業は鉄鋼業に次いでCO2を排出していて、政府の2050年カーボンニュートラル目標に向けて何らかの対応が求められています。カーボンニュートラルを実現するためには、省エネ設備の導入や革新的な技術の開発など多額の資金が必要になるので、DBJとしても資金面でサポートをしていきたいと思っています。一方で、CO2を資源として有効利用するための研究開発も進めていて、CO2を排出する他業種との連携も期待されている産業でもあるんだよね。
大日方
それは興味深い話ですね。具体的にはどのような取り組みなのですか?
池田
火力発電所などから排出される大量のCO2を、化学反応によって化学原料や燃料に変換する、いわゆる「カーボンリサイクル」という仕組みだね。僕らのチームではその実現に向けて、異業種間の連携促進に向けた活動を積極的に進めています。あとは、民間企業の声を経済産業省などに伝えながら、政策側とも一緒になって将来の化学産業のあるべき姿について議論しています。
大日方
化学業界は事業ポートフォリオの見直しを積極的に行っている印象がありますが、いかがでしょうか?
池田
そのとおりで、環境意識の高まりを含め事業環境が大きく変化する中で、事業の一部を切り出して売却したり、逆に買収によってコア事業を強化したり、自社の事業ポートフォリオを見直す企業が増えてきたね。このような社運を賭けるような企業の構造改革の動きに対しては、DBJの投融資一体型の金融サービスやネットワークが最も活きてくる場面なのではないかと思っています。
大日方
お客様の置かれている状況は様々で、お客様に合わせて適切なソリューションを提案できるか、担当者次第ですね。
池田
そうだね。これまで僕が話してきたことも、日本の産業界が直面する課題の一部にすぎません。DBJに求められていることは、お客様や社会が直面している課題の解決に向けてさらに先進的なソリューションを生み出すことと、幅広い金融サービスを活かして柔軟かつ長期的なご支援を行っていくことだと思っています。