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BUSINESS REPORT

DBJのテーマ

イノベーションDBJ

画像:三ツ口 尚志

HISASHI MITSUGUCHI

三ツ口 尚志

PROFILE

DBJキャピタル株式会社/2008年入行
企業金融第1部で化学・医薬メーカーへの投融資に携わった後、関西支店での勤務を経てDBJキャピタル(株)へ出向。その後、企業金融第6部のヘルスケア室を経験し、2023年より再びDBJキャピタル(株)においてライフサイエンスベンチャーへの投資に奔走。

バイオベンチャーの技術が鍵を握る
ライフサイエンス領域。
新薬創出のイノベーションを目指して。

―― まずは、出向先のDBJキャピタル(株)について教えてください。

DBJキャピタル(株)とは、DBJグループに属するベンチャーキャピタル(VC)です。当社は、VR/ARやAI等の領域を担う「フロンティアテック」、SaaSやIoT領域等を担う「ITサービス」、創薬や医療機器等の領域を担う「バイオ・ヘルスケア」の3つの部門から構成されています。DBJグループでは「経済価値と社会価値の両立」を目指していますが、シードからレイタ―ステージのベンチャー企業への投資を通じて、各企業が持つ技術の社会実装と、保有株を売却することによる利益(キャピタルゲイン)の獲得の両方を実現させていくことが当社のミッションです。

―― 次に、三ツ口さんの業務内容について教えてください。

医薬品の研究開発をはじめとするライフサイエンス領域のベンチャー投資に携わっています。ライフサイエンスの領域では、新たな技術が社会実装されることで社会に大きなインパクトがもたらされます。つまり、イノベーションが業界を牽引しているのです。例えば、まだ治療法がない難病を克服する新薬を創出できれば、人類への貢献は計り知れません。
こうしたイノベーションに挑む創薬ベンチャーは、世界各国で日々立ち上がっています。一方、新薬の研究開発には多額の資金が必要ですが、ハイリスク・ハイリターンであるため、起業して間もない段階では金融機関から融資を受けるのが難しい。そこで、ベンチャー投資を専門とする私たちのようなVCが資金供給の担い手となっています。

―― 長年ライフサイエンス領域に関わることになったきっかけは何でしょうか。

学生時代は大学院にて薬学を研究しており、就職活動時から、生命科学の社会実装に関心がありました。入行7年目にDBJキャピタルへ出向となり、ここで、ライフサイエンスベンチャー投資を5年間経験した後、企業金融第6部ヘルスケア室に異動し、国内外のライフサイエンス系VCファンドや創薬パイプラインに対する投資など、これまでとは異なる角度からライフサイエンスにアプローチしてきました。この企業金融第6部で培ったコネクションや知見をフルに活用すれば、また違った観点を持って新たなイノベーションの創出に貢献できるのではと思い、再度DBJキャピタルへの出向を希望しました。先日、あるファンドとの共同投資案件を実行しましたが、このファンドはヘルスケア室に所属していた際に投資した先でして、DBJグループ全体を通して多方面から支援できる点に面白さややりがいを感じています。ライフサイエンス領域では、ベンチャー企業の技術が重要な鍵を握っているにもかかわらず、日本ではライフサイエンス領域で有力なベンチャーが現れにくい。こうした課題を解決すべく、日々ライフサイエンスベンチャーへの投資に奔走しています。

画像:三ツ口 尚志

ベンチャー支援体制に課題のある日本。
ライフサイエンスのエコシステム構築を目指す。

―― ライフサイエンス領域における、ベンチャー企業の重要性について教えてください。

近年、新薬創出の難度はますます高くなっており、医薬品業界におけるイノベーションは、優秀な研究者が起こしたバイオベンチャーから生まれるケースが増えています。いま世界では、初期の研究開発はバイオベンチャーが手がけ、成功の確度が高まった段階で大企業が買収、あるいはライセンス契約をして開発を引き継ぎ、薬事承認を取得し発売する、という分業モデルが主流になっています。
米国ではすでにこのモデルが確立されており、現に当局が承認した新薬の50%以上はバイオベンチャーに由来しています。最終的に患者さんに届けるのは大手の製薬企業であっても、その薬の起源をたどるとバイオベンチャーであることが多く、もはやベンチャーなくして医薬品の進歩はないといっても過言ではありません。日本も同様に、国内の大手製薬企業の間では新薬候補を持つバイオベンチャーの買収が盛んになっています。しかし、残念ながらその対象は欧米のベンチャーであるケースがほとんどで、日本発のベンチャーはまだまだ成功事例が少ないのが実情です。

―― なぜ日本では、ライフサイエンス領域で有力なベンチャーが現れにくいのでしょう?

ライフサイエンス領域で世界のトップを走る米国と比較すると、米国はイノベーションを社会実装するための人材や資金が豊富であり、ベンチャー投資が大きな利益をもたらす産業として確立され、活力を保ち続けています。中には、ベンチャーからスタートして急成長を遂げ、いまや株式の時価総額が1兆円を超えるバイオテクノロジー企業も出現しています。
日本に目を向けると、自然科学分野でノーベル賞受賞者を数多く輩出しているように、サイエンスの水準は決して低くはありません。アカデミアでは優れた研究が数々進められており、大学発の有望なベンチャーも誕生しています。しかしながら、米国と異なり、研究成果を医薬品に昇華させ、世の中に届けていく力が圧倒的に足りない。イノベーションの可能性を秘めたベンチャーを支援する体制が貧弱であり、そこに課題があると考えています。

―― どのようにすれば、日本でバイオベンチャーが成功する環境を整えられるのでしょうか?

前述の通り、日本では、バイオベンチャーを成功させるための人材も資金もノウハウもまだまだ不足しています。それを手っ取り早く解決する方法はなく、地道に成功事例を増やしていくことが肝要です。大手製薬企業に価値を認められて買収されるようなベンチャーが続々と登場し、さらに、ベンチャーの域を超えて事業を拡大させ、既存の大手を凌ぐようなバイオテクノロジー企業が出現すれば、状況は大きく変わっていくでしょう。買収されたベンチャーの創業者は、大手に研究開発を委ねたタイミングで、自身が創業した会社を離れるケースが多いのですが、そうした人材が成功体験をもとにまた新たなバイオベンチャーの起業にチャレンジしたり、あるいは会社を売却して得た利益でまた別のベンチャーに投資したりすることで、良いサイクルが生まれていく。こうしてライフサイエンス領域で「エコシステム」を構築することが、これから取り組むべき大きなテーマだと捉えています。

画像:三ツ口 尚志
画像:三ツ口 尚志

ベンチャーと大企業、
両面へのアプローチ。
DBJだからこそ果たせる役割。

―― 日本でライフサイエンスのエコシステムを構築するにあたって、DBJグループはどのような貢献ができるのでしょうか?

まず私たちのミッションは、イノベーションをもたらす可能性を秘めた国内のバイオベンチャーを発掘し、早期から投資して支援していくことです。いまライフサイエンスの世界では、再生医療や遺伝子治療など新たなモダリティ(治療方法)の研究開発が各所で進められています。業界内にネットワークを張り巡らせて、先端の研究開発に挑むベンチャーの情報をいち早くつかみ、イノベーションをもたらす企業であるかどうかを精査し、投資を実行していく。DBJキャピタルのライフサイエンス担当のチームは、私を含めて専門的な技術に通じた人材を擁しており、メンバーで議論を交わしながら投資判断を行っています。自らの判断で自己資金を投じ、長期的にベンチャー企業を支援することができるという点は、私たちDBJキャピタルが提供できる大きな価値であり、やりがいを感じます。

―― 投資以外でもバイオベンチャーを支援する手段はあるのでしょうか?

はい、様々な手段があります。例えば、投資先の経営に関与して成長を支援することができます。私も投資先企業の社外役員を務め、取締役会に出席して経営面からアドバイスをすることも。ベンチャーの成長に応じて、必要とされる人材を紹介したり、自らの人脈を使ってCFO(最高財務責任者)やCEO(最高経営責任者)を外部から招聘したりして経営体制の強化を図っています。
また、事業の拡大に向けて、ビジネスのパートナーとなりうる企業を紹介してマッチングさせる取り組みも行っています。DBJと関わりのある医療機関のネットワークを活用し、新薬開発に必要な臨床試験に協力してくれる病院を紹介するなど、多角的に支援しています。また、ベンチャーを買収する側の大企業へのファイナンスを自ら主導できる点もDBJならではだと思いますね。

―― エコシステムの一翼を担う大企業側には、どのように関わっているのですか?

一例を挙げれば、「ペプチドリーム」という東京大学発のバイオテクノロジー企業があります。革新的な創薬技術をもとにベンチャーを立ち上げ、世界中の製薬企業と多数の共同研究開発契約を結び、株式上場から僅か二年で一部市場(現・プライム市場)への市場変更を果たすなど、日本では希少な成功事例です。私は、DBJキャピタルへの一度目の出向時に、ペプチドリームの経営陣の方々と出会い、私たちの投資先のベンチャー企業を紹介して事業提携につなげたり、計算化学の創薬ベンチャーに共同投資したりするなど、リレーションを築いてきました。その後、ヘルスケア室在籍時に、ペプチドリームが放射性医薬品メーカーの買収を検討していると聞き、買収資金を供給したことで、関係が一層深まりました。直近では、私が再びDBJキャピタルに出向する中、先ほどの買収効果を高めるような放射性医薬品の創薬ベンチャーに共同投資するなど、新たな取り組みも活発になっています。このようにベンチャーと大企業の両面からエコシステムの発展に貢献していくことが、果たすべき役割だと考えています。

画像:三ツ口 尚志
画像:三ツ口 尚志

ライフサイエンスの現場から
「ヒーロー」を続々と輩出し、
研究者が憧れの職業になる社会を。

―― ライフサイエンスのエコシステムを構築することで、どんな社会を実現したいと考えていますか?

日本の優れた研究に基づくバイオベンチャーが次々と生まれ、それらが大きく成長して、ライフサイエンス領域を日本がリードしていく未来を実現したいですね。そして、優秀な研究者が進んでベンチャーを起こしていく機運をつくりたい。自分の研究成果をもとにベンチャーを起こして、それにより多くの人を助けることができる――。そんなバイオベンチャーの世界で大成功する“ヒーロー”が登場すれば、世間からの注目も高まり、“研究者”が憧れの職業になるでしょう。そのような社会になれば、イノベーションが持続的に生まれていくでしょうし、日本にも活力をもたらしてくれるはずです。

―― DBJキャピタルでこれから挑戦していきたいテーマを教えてください。

私が関わるライフサイエンスの領域は、投資先を判断するうえで高度な知見が求められます。より精度の高い投資活動を行うために、海外のVCではライフサイエンス領域のベンチャー投資だけを切り出し、専門特化する風潮が高まっています。日本でもそれが実現できると思っていて、世間でバイオベンチャーへの投資に携わっている専門人材を集結させて意思決定の質を高め、DBJグループの理念のもとで、社会に対してより大きなインパクトを与えられる組織へと発展させていきたい。DBJキャピタルだからこそもたらせる影響力を発揮し、社会にもっと貢献していきたいと考えています。