TCFD提言を踏まえた取り組み

基本的な考え方

2015年のパリ協定採択以降、各国政府や業界団体・企業が脱炭素社会に向けた意思表明を行っており、気候変動の緩和と適応に向けた動きが加速しています。日本政府においても、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、その実現に向けて各種の政策が進められています。

DBJグループは、2017年5月に、経済価値と社会価値の両立を目指した持続可能な社会の実現に貢献していくための基本姿勢として、「サステナビリティ基本方針」を定めました。本方針に基づき、世界共通の課題である気候変動対応についても、持続可能な社会の実現にとって重要なものとしてDBJグループにおける最重要課題の一つと位置づけ、エネルギー安定供給との両立を踏まえつつ、ステークホルダーの皆様と協働しながら地域・お客様の課題解決を通じて、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

2021年度からスタートした 第5次中期経営計画 においては、「GRIT戦略」を推進し、グリーン社会の実現、しなやかで強く安心安全な地域・社会や産業基盤の構築を目指すとともに、脱炭素社会への移行に向けたトランジションの取り組みについて、お客様との対話(エンゲージメント)を通じ支援してまいります。

お客様起点に立ち、その脱炭素に向けた取り組みを支援し経営課題を解決することを通じて、DBJグループとして2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量ネットゼロの実現を目指してまいります。また、その過程を通じ、日本の競争力を維持・強化し、お客様の成長に貢献してまいります。

ガバナンス

気候変動をはじめとする様々なサステナビリティに関する課題への対応方針や取り組み状況について、経営会議傘下の「サステナビリティ委員会」にて審議しています。また、ステークホルダーコミュニケーションに関する内容や経営戦略上重要な取り組みについては、「経営会議」で審議・決定のうえ「取締役会」において報告・審議されます。事務局として経営企画部に「サステナビリティ経営室」を設置しており、行内外の情報結節点となるほか、各種の施策を推進しています。

さらに、社外有識者と社外取締役で構成される取締役会の諮問機関である「アドバイザリー・ボード」において、GRIT戦略を含めた業務計画等の取り組み状況の報告を行うとともに、その審議内容を踏まえて業務計画やリスク管理の高度化への反映を行っております。

体制図

体制図 体制図

戦略

気候関連リスク・機会の基本的な考え方

ビジョン2030 の策定にあたり、気候変動・資源エネルギーをDBJグループのステークホルダーに重要な影響を与える外部環境の変化として特定しており、気候変動にかかるリスク及び機会を把握することが、事業戦略上重要であることを認識しています。DBJグループは、2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス(GHG)排出量ネットゼロの実現を目指し、そのリスクへの対応と機会について、脱炭素社会(気温上昇幅2.0℃未満のシナリオ)を目指すシナリオを軸にしつつ、気温上昇幅2.0℃以上シナリオを含めて分析を実施したうえで、その分析結果を踏まえた取り組みを進めてまいります。

気候関連機会の分析

2019年度に、2030年から2050年の中長期を対象としてシナリオ分析に着手しました。金融機関は、気候変動に伴う将来の不確実性を踏まえ、様々な経済社会像を想定し、それらに応じたポートフォリオの変化や対応策を検討する必要があります。初めのアプローチとして、社会経済シナリオ「共通社会経済経路(SSP:Shared Socioeconomic Pathways)」を利用し、4つの世界観において低炭素・脱炭素社会に向けた技術革新や、政策・規制等による「移行機会」に焦点を当て、事業への影響を分析・評価しました。

分析の概要

対象セクター エネルギー、運輸交通、都市開発
シナリオ SSPシナリオを利用し、気温上昇幅1.5℃、2℃、4℃のシナリオにて分析を実施
対象技術 CCS(二酸化炭素回収・貯留)、EV(電気自動車)、バイオマス、水素、再生可能エネルギー
対象期間 2030年~2050年

気候関連リスクの分析

DBJグループでは、気候関連金融リスクとして、移行リスクと物理的リスクを認識しております。前者は、主に炭素税の導入や低炭素技術への置換による売上減少や費用増加等に伴う投融資先の信用力の低下として、後者は、主に異常気象による担保価値の毀損やサプライチェーンの混乱等を通じた投融資先の信用力の低下として、与信コストの増加を通じてDBJグループの経営戦略に影響を与える可能性があると認識しております。

2021年度は、移行リスクについては電力セクター(国内外のエネルギープロジェクト等に関するストラクチャードファイナンス案件を含む)、物理的リスクについては水災に伴う担保価値毀損を対象としたシナリオ分析に取り組みました。この分析結果は、現在のポートフォリオ残高を維持した場合でも、財務影響は長期的な視点で受容し得る水準に収まることを示唆しております。

気候関連金融リスクを分析するための手法やデータは発展途上と認識しております。今後とも、その動向を注視しつつ、必要に応じて分析手法の高度化への取り組みを進めてまいりたいと考えております。

分析の概要

移行リスク 物理的リスク
リスクイベント ネットゼロに向けた急激な政策変更 水災(洪水の発生)
シナリオ NGFSのDelayed transitionシナリオ IPCCのRCP8.5(4℃シナリオ)
今次分析対象 電力セクター 水災に伴う担保価値毀損
対象資産 投融資残高 融資残高
分析期間 2050年まで 2050年まで
分析結果(与信コスト増加額) 約400億円(累計) 約60億円(累計)

NGFS:Network for Greening the Financial System
IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change

気候関連リスク・機会分析を踏まえた戦略

気候関連機会・リスクの分析に加え、「GRIT戦略」におけるグリーン、トランジション、イノベーションにかかる取り組みを推進し、「GRIT戦略」として5年間で5.5兆円を目途として投融資を進める方針です。

こうした方針のもと、お客様の脱炭素に向けた取り組みを支援するため、サステナブルファイナンスやアドバイザリー・コンサルティングサービスを提供するほか、グループ全体で、クライメートテック企業を含めたリスクマネー供給などに取り組んでいます。

お客様との建設的な対話(エンゲージメント)

お客様との建設的な対話(エンゲージメント)を通じた経営課題の理解や問題意識の共有を強化しており、お客様ごとの課題やニーズを深く理解し、課題解決策を提示することで、グループ全体の強みを活かした投融資やアドバイザリーによるご支援を進めてまいります。

事例① 川崎重工業(株)

持続的な成長及び日本のカーボンニュートラル達成に欠かせない「水素サプライチェーン構築」に関して、対話しながらKPIやサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)を設定し、DBJ-対話型サステナビリティ・リンク・ローンを実行しました。
貸付期間中の定期的な対話によりSPTsの達成に向けた支援を行ってまいります。

事例② (株)商船三井

(株)商船三井及び同社グループ会社の(株)フェリーさんふらわあが運航を予定している日本初のLNG燃料フェリー2隻の導入に対し、我が国初の経済産業省のクライメート・トランジション・ファイナンスモデル事業に採用されたシンジケーション方式トランジション・ローンを実行しました。
地域金融機関等を中心に、三井住友信託銀行(株)と共同して本ローンを組成しました。

事例③ 四国中央市カーボンニュートラル協議会

カーボンニュートラル実現に向け、四国中央エリアの面的なエネルギー転換等を検討していくため、愛媛製紙(株)、大王製紙(株)、丸住製紙(株)と共に協議会を設立、運営しています。
地域共通のエネルギーインフラ構築の可能性も視野に入れつつ、政策動向や、水素等のエネルギーに関する安全性・経済性・調達安定性等の検証など、幅広く情報収集を行い、現実的な方策やロードマップを検討しており、今後とも自治体と共に協議を進めてまいります。

リスクマネジメント

リスク管理

気候変動への対応の不備等は、経営に重要な影響を与えるリスクであると認識し、シナリオ分析による影響分析の実施や当該リスクにかかる取り組み方針の策定等を実施しています。また、投融資に際しては、特定セクターへの事業別方針を導入しており、サステナビリティ委員会とも連携し、進捗状況のモニタリングに取り組んでいます。

「環境・社会に配慮した投融資の取組方針」に基づく取り組み

環境・社会に対して重大なリスクまたは負の影響を内包する可能性が高い事業や特定セクターへのファイナンスについて、2021年に投融資活動の取り組み方針を定め、2022年度も必要に応じた見直しを実施しています。

赤道原則に基づく運用

大規模プロジェクト等の環境・社会リスクについても、「環境社会評価室」主導のもと、2020年に採択した「赤道原則(EquatorPrinciples)」に基づく環境・社会リスクの特定、評価、管理を行ってまいります。

ポセイドン原則に基づく運用

海運業界の気候変動リスクに対する金融機関の枠組みとして設立されたポセイドン原則に2021年に署名、船舶ファイナンスの温室効果ガス排出の削減貢献度を毎年公表し、気候変動リスクに配慮した投融資活動に努めております。

指標とターゲット

投融資先の気候変動対応の目標

第5次中期経営計画においては、「GRIT戦略」に関する投融資額として5年間に5.5兆円を目途として取り組みを進めており、2021年度実績は7,544億円の投融資額となりました。今後この目標に沿って、投融資先の気候変動への取り組みを積極的に支援してまいります。

GHG排出量目標

DBJグループでは、GHG直接排出量「Scope1」・間接排出量「Scope2」に加えて、投融資先を通じた排出量「Scope3」を含めて2050年ネットゼロの達成を目指してまいります。

Scope1・2

DBJ及び国内主要グループ8社を対象に、企業活動に伴うGHG排出量に該当するScope1・Scope2を計測・集計しています。経営企画担当の取締役常務執行役員を責任者とする環境マネジメント体制を構築し、具体的な環境貢献及び改善目標を設定して継続的な取り組みを推進しています。

実績 2019年度 実績 2020年度 実績 2021年度
3,270t-CO2 3,074t-CO2 2,473t-CO2

集計対象範囲:DBJ本店、10支店、8事務所等、DBJキャピタル(株)、DBJ証券(株)、DBJアセットマネジメント(株)、(株)日本経済研究所、(株)価値総合研究所、DBJリアルエステート(株)、DBJデジタルソリューションズ(株)、DBJビジネスサポート(株)

集計項目:Scope1:社用車ガソリン
Scope2:電気、燃料(灯油、重油、石油ガス、都市ガス)

Scope3

2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロの達成方針のもと、GHG排出量の計測及び開示の取り組みを不断に検討してまいります。DBJのエネルギー・運輸セクター等GHG多排出業種に対する与信額に鑑み、Scope3の計測及びモニタリングは重要と考えております。

こうした認識のもと、計測手法の理解を深めるとともに、当面、エネルギーセクターを対象に、標準的手法とされるPCAF Standard(Partnership for Carbon AccountingFinancials Standard)を用いて検証・試算を進めています。

PCAF手法

投融資を通じたGHG排出量の詳細な計測手法については、金融機関向けに投融資活動の資産クラスごとのGHG排出量算定方法が示されたPCAF Standardを用いて検証・試算しています。

今後の方針

今後、Scope3の計測については、計測に関する以下の主な検討課題を踏まえ今後も取り組みを進めてまいります。

  1. 計測対象セクターについて、エネルギー(電力・石油・ガス)を対象候補とします
  2. 望ましい開示指標を継続的に検討します(排出係数、排出量等)
  3. 排出量データの収集に関しては、お客様との対話を踏まえ、データ収集方法を段階的に整備すると共に、その質の向上に努めます