TCFD提言を踏まえた取り組み

気候変動は,金融市場の安定にも影響を与え得る、グローバルな主要課題の一つです。パリ協定の目標と整合する持続可能な社会モデルへの変革・移行を支援する商品やサービスを提供することは、私たち金融機関の重要な役割であり、 ステークホルダーとのエンゲージメントはそのための重要な取り組みだと考えています。

DBJは、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、2018年6月に、金融安定理事会(FSB)が設置したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言の趣旨に賛同を表明しました。また、TCFD提言に賛同する企業や金融機関等が一体となって議論する場として2019年5月に設立された「TCFDコンソーシアム」に参画し、「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス(グリーン投資ガイダンス)※」の策定にあたって主導的な役割を果たすと共に、環境省「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」のサポートを受けながらシナリオ分析に取り組むなど、DBJとしても気候変動に関するリスクと機会を認識したうえで、TCFDのフレームワークを踏まえた情報開示の拡充を推進・検討しています。

また、TCFDコンソーシアムにおける「GIG Supporters」の一員として、融資先企業の評価や対話においては「グリーン投資ガイダンス」を参考に、気候変動への対応やTCFDに沿った情報開示について確認し、中長期的な企業価値向上に資する取り組みを支援しています。

※投資家等がTCFD提言に基づく開示情報を読み解く際の視点について解説したもの。「TCFDサミット」(2019年10月8日)で公表された。

ガバナンス DBJは、経済価値と社会価値の両立を実現し、持続可能な社会の実現に貢献していくため、2017年5月にサステナビリティ基本方針を制定し、グループ一体となって環境や社会への影響に配慮した事業活動を行っています。また、気候変動等を含む環境・社会課題や関連するリスク・機会、それらを踏まえた対応方針について、経営会議傘下のサステナビリティ委員会において取締役を中心に審議し、取り組み状況のモニタリングを行うと共に、その内容を経営戦略やリスク管理、投融資決定プロセスへ組み込んでいます。
戦略 DBJは、長期ビジョン「ビジョン2030」の策定にあたり、気候変動・資源エネルギーをDBJグループのステークホルダーに重要な影響を与える外部環境の変化として特定しており、気候変動による様々なリスクへの適切な対応と成長機会の取り込みを行うことが、事業戦略上の重要な観点の一つであることを認識しています。新たな事業機会と、気候変動という不確実性に対する事業耐性を評価するため、2019年度には環境省の支援を受けながら、2030年から2050年の中長期を対象としてシナリオ分析に着手し、特に「機会」に着目しながら事業インパクト評価を行いました。2021年度はより「リスク」に焦点をあてた形で分析を行い、当行ポートフォリオに内在する物理的リスク及び移行リスクの特定・評価に取り組みます。また、気候変動に関連するリスクにかかる国内外の議論を踏まえつつ、引き続き分析の精緻・高度化、情報開示の拡充に努めていきます。
リスクマネジメント DBJは、気候変動に起因する様々なリスクについて、特定、評価、モニタリング及びコントロールを行っていきます。2021年8月には、環境・社会に対して重大なリスクまたは負の影響を内包する可能性が高い事業や特定セクターへのファイナンスについて、新たに「環境・社会に配慮した投融資方針」を定めました。今後このポリシーに従い、環境・社会に配慮した投融資活動に努めていきます。また、大規模プロジェクト等の環境・社会リスクについても、「環境社会評価室」主導のもと、2020年に採択した「赤道原則(Equator  Principles)」に基づく環境・社会リスクの特定、評価、管理を行っています。
測定基準とターゲット DBJは、企業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量に該当する Scope1(直接)・Scope2(間接)に関連する環境配慮活動につき進捗状況を把握すると共に、投融資業務を通じた環境への取り組みや環境コミュニケーションを通じた環境啓発の推進など環境保全に資する各種の取り組みについて、全行及び部署ごとの具体的な目標を設定し、環境保全活動を体系的かつ継続的に展開しています。また、第5次中期経営計画においては、「GRIT戦略」に関する投融資額として5年間で累計5.5兆円の目標値を設定しており、今後この目標に沿って、投融資先の気候変動への取り組みを積極的に支援していきます。

移行機会に着目したシナリオ分析

気候変動関連技術の発展・普及度に着目し、移行機会に焦点を当てた分析を実施

金融機関は、気候変動に伴う将来の不確実性を踏まえ、様々な経済社会像を想定し、それらに応じたポートフォリオの変化や対応策を検討する必要があります。そこで、シナリオ分析にあたっての最初のアプローチとして、低炭素・脱炭素社会に向けた技術革新や、政策・規制等による「移行機会」に焦点を当て、2050年までに想定されるDBJの事業への影響を分析・評価しました。具体的には、気候変動に関係の深い技術のなかから、試行的に5つの技術(CCS:二酸化炭素貯留、EV:電気自動車、バイオマス、水素、再生可能エネルギー)に注目し、技術発展・普及を踏まえた各分析対象セクターの成長機会・事業耐性をシナリオ別に分析・評価しています。

シナリオに「共通社会経済経路(SSP)」を利用

地球温暖化による気温上昇幅が仮に同じであっても、想定する各国の人口、経済成長等の動向によって、気候変動問題の解決に向けて期待される技術の進展や社会受容の程度は変わってくると考えられます。そこで、こうした世界における社会経済動向の不確実性を考慮するため、将来の仮定としてのシナリオに社会経済シナリオ「共通社会経済経路(SSP、Shared Socioeconomic Pathways)」を利用し、気温上昇幅1.5度・2度・4度環境下における社会経済動向を踏まえた分析を実施しています。

各分析対象セクターについてシナリオごとに成長機会を分析・評価

想定したシナリオごとに、5つの技術の影響度を定性・定量両面から分析し、日本の強みを踏まえながら、各分析対象セクターにおける成長機会・事業耐性を総合的に評価しています。

また、気候シナリオに関する最新の動向を踏まえながら、引き続き分析対象の拡大や分析結果のアップデートに取り組んでおり、シナリオ分析を通じて想定される2050年の世界観をベースに、脱炭素社会に向けたトランジションの経路等について、社内外での対話・議論を進めています。DBJは今後も分析の精緻・高度化を進め、気候変動をはじめとする外部環境や関連リスクの把握に努めると共に、お客様をはじめとするステークホルダーとの対話を深めながら低炭素・脱炭素社会に向けた金融支援を行うことで、機会の側面からも、気候変動への適切なアクションを実行していきます。

シナリオ分析の概要 シナリオ分析の概要