環境・社会に配慮した投融資方針

2021年10月1日実施
2023年8月25日改訂

はじめに

日本政策投資銀行(以下、DBJ)は、その使命である日本と世界の持続的発展の実現に向けて、サステナビリティ経営のもと、特色ある事業活動を通じた経済価値と社会価値の両立を目指しています。2017年には、ステークホルダーの皆様との対話を促進し、価値創造プロセスの継続的な改善に努めるため、「サステナビリティ基本方針」を定めました。また、2020年には、プロジェクトファイナンス等の与信判断プロセスにおいては環境・社会リスクの特定、評価、管理により明確な指針をもって取り組まなければならないと考え、赤道原則(Equator Principles)を採択いたしました。

DBJは、環境・社会に配慮した投融資を一層強化する観点から、環境・社会に対して重大なリスクまたは負の影響を内包する可能性が高い事業・セクターについて、「環境・社会に配慮した投融資方針」を下記の通り策定し、公表し、必要に応じた見直しを今後も進めて参ります。

適用対象となる事業

セクター横断的に投融資を禁止する事業

DBJは、以下の事業若しくは事業者は、環境・社会に対する重大なリスクまたは負の影響を内包すると考えていることから、これらの事業に対して環境・社会に対するリスクまたは負の影響を認識した場合は投融資は行いません。

  1. ラムサール条約指定湿地へ負の影響を与える事業
  2. ユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業
  3. 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)に違反する事業
  4. 児童労働・強制労働を行っている事業

セクター横断的に投融資に留意する事業

DBJは、以下の事業は、環境・社会に対する重大なリスクまたは負の影響を内包すると考えていることから、投融資を検討する際には、リスク低減・回避に向けた対応状況を確認した上で、慎重に投融資の判断を行います。

  1. 先住民族の地域社会へ負の影響を与える事業
  2. 非自発的住民移転に繋がる土地収用を伴う事業

特定セクターに対する取組方針

DBJは、以下のようなセクターは、環境・社会に対するリスクまたは負の影響を内包する可能性が高いと考えていることから、投融資を検討する際には、リスク低減・回避に向けた対応状況を確認した上で、慎重に投融資の判断を行います。

  1. 兵器
    クラスター弾は、人道上の懸念が大きいと国際社会で認知されています。クラスター弾の非人道性を踏まえ、クラスター弾製造企業への投融資は行いません。
    また、クラスター弾と同様に人道上の懸念が大きいと国際社会で認知されている、核兵器、生物・化学兵器、対人地雷の非人道性を踏まえ、これら非人道兵器の製造を資金使途とする事業への投融資も行いません。
  2. 石炭火力発電
    DBJグループは、経済価値と社会価値の両立というサステナビリティ経営の基本理念に立脚し、エネルギー分野において、長期安定供給と環境負荷低減の双方に貢献してきました。特に、再生可能エネルギー分野では、国内の風力発電や太陽光発電において、導入初期よりプロジェクトファイナンスやメザニン・エクイティ等の多様なリスクマネー供給を積極的に行うと共に、海外の先進的な取り組みを国内に還元すべく、欧州の洋上風力発電等へのファイナンスも実施しています。今後も、国際的な気候変動にかかる議論やOECD公的輸出信用アレンジメントを考慮しつつ、3E+Sを基本方針とする我が国エネルギー政策を踏まえたうえで、安定供給確保と2050年温室効果ガス排出実質ゼロ達成の両立を目指します。具体的には、再生可能・代替エネルギーについては、風力・太陽光や新規送電網、水素等に対するリスクマネー供給をさらに強め、導入促進に貢献する一方、石炭火力発電所の新設プロジェクト及び既設発電所の拡張プロジェクトについては取り組みません。但し、新技術の活用によるクリーンな火力発電への移行に繋がる取組の推進については貢献してまいります。
  3. パーム油
    パーム油は日常生活に欠かせない重要な原料である一方で、生産過程で先住民族の権利侵害や児童労働等の人権問題、天然林の伐採・焼き払いや生物多様性の毀損などの環境問題が起こりうることを認識しています。パーム油農園開発事業に対する投融資に際しては、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議))認証の取得状況や、先住民族・地域社会とのトラブルの有無等を確認する等、慎重に投融資の判断を行います。まだ認証を受けていない取引先については、同認証の取得推奨を行い、認証の取得計画提出を求めてまいります。また、取引先に対しては、NDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation(森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ))を遵守する旨の公表を求めてまいります。なお、取引先のサプライチェーンにおいても、同様の取組がなされるよう、サプライチェーン管理の強化、ならびにトレーサビリティ向上を奨励します。
  4. 森林
    森林破壊は、生物多様性の減少や生態系の安定性の低下、水源涵養機能の低下、二酸化炭素の固定機能の低下等様々な問題を引き起こすものと認識しています。森林伐採事業に対する投融資に際しては、違法伐採や先住民・地域社会とのトラブルの有無等を確認する等、慎重に投融資の判断を行います。高所得OECD加盟国以外の国において、森林伐採事業に投融資を行う際にはFSC認証(Forest Stewardship Council(森林管理協議会))またはPEFC認証(Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes(PEFC森林認証プログラム))の取得を求めてまいります。まだ認証を受けていない取引先については、認証の取得推奨を行い、認証の取得計画の提出を求めてまいります。森林伐採を伴う大規模農園(1万ha以上を対象とし、大豆、天然ゴム、コーヒー等を栽培する農園、及び放牧地)開発事業に対する投融資に際しては、取引先に対し、NDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation(森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ))等の環境・人権への配慮を定めた方針の策定を求めてまいります。なお、取引先のサプライチェーンにおいても、同様の取組がなされるよう、サプライチェーン管理の強化、ならびにトレーサビリティ向上を奨励します。
  5. 炭鉱掘削
    炭鉱掘削については、適切に管理されない場合、炭鉱から排出される有害廃棄物による生態系への影響や炭鉱落盤事故による死傷者の発生等、環境・社会に負の影響を及ぼしうるリスクがあることを認識しています。炭鉱掘削事業に対する投融資は、環境・社会配慮の実施状況等を確認の上、慎重に投融資の判断を行います。また、新規の一般炭採掘事業及び環境負荷が特に大きいMTR(Mountain Top Removal、山頂除去)方式で行う炭鉱掘削事業への投融資は行いません。
  6. 石油・ガス
    石油やガスは、私たちの社会や日常生活に必要不可欠なエネルギー源である一方、温室効果ガスの排出を通じた気候変動への影響に配慮する必要があります。石油・ガス採掘は、石油・ガス流出事故による海洋・河川の汚染や先住民族の人権侵害等、環境・社会に負の影響を及ぼしうるリスクがあるものと認識しております。そのため、環境に及ぼす影響および先住民族や地域社会とのトラブルの有無等に十分に配慮することが重要となります。特に、希少生物の保護や先住民族の生活等に配慮が必要な北極圏(北緯66度33分以北の地域)での石油・ガス開発事業や、オイルサンド事業、シェールオイル・ガス開発事業、パイプライン事業を資金使途とする投融資に際しては、環境・社会配慮の実施状況等を確認の上、慎重に投融資の判断を行います。
  7. 大規模水力発電
    大規模水力発電所(出力30MW以上かつダムの壁の高さが15m以上)は、電力供給において再生可能エネルギーとしてクリーンなエネルギー供給に果たす役割は大きい一方で、ダム建設に伴う河川流域の生態系や生物多様性、住民の生活環境等に広範囲に変化を及ぼす可能性があることを認識しています。大規模水力発電を資金使途とする投融資については、環境に及ぼす影響および先住民族や地域社会とのトラブル等を充分確認の上、慎重に投融資の判断を行います。

本取組方針に関するガバナンス等

ガバナンス

DBJは、経営会議の傘下の審議機関としてサステナビリティ委員会を設置し、環境・社会課題への対応を審議しています。本取組方針についても、サステナビリティ委員会にて審議を経て、経営会議で決定されました。外部環境の変化等を踏まえ、認識すべきリスクや対象となるセクター等の適切性・十分性について、サステナビリティ委員会等で定期的にレビューし、方針の見直しと運営の高度化を図ります。

社内教育・研修

DBJは、役職員が環境・社会課題に対する理解を深めるための啓発・研修や、役職員が関連する規程や手続きを遵守するための教育・研修に取り組みます。

ステークホルダーコミュニケーション

DBJは、本件取り組みにおいては、多様なステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、DBJの取り組みが社会の常識と期待に沿うものとなるように務めます。

以 上

グループ会社の取組

  • DBJアセットマネジメント株式会社の「サステナビリティポリシー」はこちら
  • DBJ証券の「環境・社会に配慮した業務基本方針」はこちら