Development Bank of Japan Recruiting Site
ENTRY /
MY PAGE

Field

BUSINESS REPORT

DBJのテーマ

運輸交通

DBJ

運輸・交通

YUDAI SUZUKI

鈴木 雄大(写真左)

PROFILE

企業金融第4部海運班/2018年入行 ※取材当時
航空宇宙室にて国内外の航空機・エンジンメーカー向け投融資、JAXAとの業務提携などを担い、2020年より現職。投資先の運営のほか、環境負荷低減に向けた投資案件のソーシング、エグゼキューションを担当する。

YOTARO KOIZUMI

小泉 洋太郎(写真右)

PROFILE

企業金融第4部海運班/2018年入行 ※取材当時
企業戦略部にてインフラ・メーカーをはじめとする国内企業向けのM&Aアドバイザリー業務に従事し、2020年より現職。国内外の大手海運オペレーターや国内大手船主向け船舶ファイナンスを広く担当する。

画像:鈴木 雄大 小泉 洋太郎

外航においては環境負荷低減、
内航においては事業基盤強化。

小泉

海運業は、島国・日本において、貿易や流通に欠かせない産業として長い歴史を有している。ひとたび外海に出ればグローバルな競争にさらされる中で、日本は海運立国として国際社会においても大きな存在感を示しているのは、ひとつ大きな特徴だね。

鈴木

IMO(International Maritime Organization:国際海事機関、国際連合の専門機関)の主要な会議体で議長を務めるなど、環境志向の潮流をリードしたい欧州と、今も成長を続けるアメリカ・中国の間に立って、現実的な落としどころを模索する行司役を務めていることもその象徴だよね。

小泉

そのIMOは、かなり力を持った組織なわけだけど、2018年に他産業に先駆けて、個別産業として世界で初めて脱炭素化目標にコミットしたことは、時代の流れを大きく変えたと思う。

鈴木

海洋汚染を防止するためのマルポール条約にも、全世界で運行する外航商船に対するGHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出規制の強化が盛り込まれているし、その強い実効力が世界の海運を動かしていることを感じる。海運、中でも「外航(外国との間の航海)」はもとよりグローバルでワンマーケット。運賃を決める際も、契約を結ぶ際も、幾つかの国際的な指標を前提にして、競争が繰り広げられてきた。先人たちが作りあげた長い歴史を持つからこそ、業界として統率がとれているし、ひとたび方針を決めればそれに向かって皆で努力するという一体感が強い。対する内航ではどう?

小泉

「内航(国内の港間の航海)」では、自国の沿岸輸送は自国船籍に限るというカボタージュ規制が設けられていて、これは特徴的だと思う。メリット、デメリットはあるにせよ、安全保障や安定輸送の観点からすればとても重要であり、市場開放、自由競争がすべてではないということだと理解しているよ。外航と対照的に、内航は各国のクローズドなマーケットだからこそ、変化する時代や社会にどう対応していくかは大きなテーマ。日本は国内貨物輸送の約4割、鉄鋼や石油といった産業基礎物資の約8割を海上輸送が占めており、内航海運は人々の生活や経済を支える基幹的インフラなのだけれど、そういった貨物は内需縮小にともない中長期的には生産量の減少が見込まれている。自ずと海上輸送量も減少が見込まれている中、どのように企業体力をつけていくかが重要になってくるね。

鈴木

外航においては、カーボンニュートラルに向けた環境負荷低減の取り組みをいかに推し進めていくか。そして内航においては、環境負荷の低減に加え、縮小均衡トレンドの中でいかに事業基盤の強化を図っていくか。大小様々な課題があるけれど、まずはこの2点が日本の海運業界における目下、最大の課題だね。

画像:鈴木 雄大

中長期的なカーボンニュートラル実現という課題。
その着実な移行を支えるトランジション・ファイナンス。

小泉

環境負荷低減に向けて、海運業界においてDBJが取り組んでいるものの一つに「トランジション・ファイナンス」があるよね。もちろん最終的に目指す姿はカーボンニュートラルだけれど、一足飛びにそれを達成することはできない。そこで、ゴールまでの道のりを段階的に進んでいく、「移行=トランジション」の取り組みに対しても支援が必要になってくる。大手海運会社が内航に使用するLNGフェリー2隻に対し、DBJが国内初のシンジケーション式トランジション・ローンを組成したのは、一つの好例かな。
※トランジション・ローン:「トランジション」に関する一定の要件を満たし、資金使途を特定したローン

鈴木

石油燃料後の新燃料・推進方式として、アンモニアや水素混焼、水素燃料電池等が様々取り挙げられているとはいえ、実証中の技術も多く、ネットゼロを達成できる船はいまだ社会実装されていない。そんな中で、従来型の重油燃料よりも3割ほどGHGの排出量が少ないLNGを燃料とする船は、まさにトランジションのための有効なソリューション。それをトランジション・ローンによって支援していくことは、目下、事業者から特に求められている取り組みだし、今後も地域の金融機関等と連携しながら推し進めていきたいね。

小泉

資金使途を限定したトランジション・ローンのほかに、資金使途を限定しないコーポレートファイナンスのような性質を持ったトランジション・リンク・ローンというものもある。お客様の取り組みに応じて、こうしたファイナンス手法を使い分けながら、海運業界の脱炭素に向けた移行戦略がいかにしっかりしたものであるかを外部にアナウンスすることで、他産業の取り組みの参考としてもらうことも、DBJが果たすべき大事な役割だね。

鈴木

同時に、そうした着実な移行を支えるアプローチとして、前例のないインフラ整備も必要だと思う。

小泉

たとえば鈴木君が担当として運営に携わっている、LNG燃料供給船を建造するプロジェクトかな。

鈴木

そう。2018年に設立されたエコバンカーシッピング(株)は、東京湾において船舶にLNG燃料を供給する企業で、DBJも資本参加している。ガソリン自動車の普及にガソリンスタンドが必要であるように、LNG燃料船の普及には、LNGバンカリング(燃料供給)拠点の整備が極めて重要。そこで同社は、LNGバンカリング船を建造することで、東京湾でのShip to Ship方式によるLNG燃料供給事業を展開しようとしているんだけど、これは同時に港湾としての国際競争力強化にも繋がると捉えている。

小泉

今後、LNG燃料船が世界中で普及したとしても、東京湾でLNG燃料を供給できなければ、外航商船が寄港しなくなってしまうかもしれないからね。

鈴木

それだけに港湾内のあらゆる場所で、あらゆる船に対応できるバンカリング船での燃料供給は、戦略的にも大きな意味を持っている。今はカーボンニュートラルに向けた移行期であるからこそ、僕たちは中長期的な視点に立ち、たとえ前例がなくても必要だと信じられるものに対しては、リスクマネーを含む適切な資金提供を通じて、そうした新しい取り組みを強力に後押ししていくことが重要だね。

画像:鈴木 雄大 小泉 洋太郎
運輸・交通
画像:小泉 洋太郎

M&Aによる再編も視野に入れながら、
お客様とともに事業基盤の強化を図る。

鈴木

他方で、もう一つの課題である内航における事業基盤強化に向けては、情報提供やアドバイザリーを通じて、各事業者を中立的な立場で繋ぐ取り組みが、僕たちには求められていると思う。

小泉

内需縮小を踏まえ、鉄鋼や石油などの「荷主」となる業界は再編が進んだけれど、それとは対照的に内航の業界は大半が中小事業者で、事業者数も依然として多いのが特徴。今後、各社が企業体力をつけ、事業の高度化を図るためには、各事業者を中立的な立場で繋ぐことも求められると思う。その中でM&Aというのも一つの選択肢になり得るし、DBJもそうした課題意識を持って取り組む必要があるよね。

鈴木

日頃から個々のお客様とのリレーションを持ち、個々のお客様の実状や課題を理解している僕たちだからこそ果たせる、繋ぐ役割もあるんじゃないかと思うけれど、どうかな?

小泉

M&Aについては、いろいろなパターンがあると思う。たとえば、同じ荷主にひも付く同じ貨物を扱う海運会社同士のM&Aなら、比較的シナジーも発現しやすいよね。あるいは、異なる貨物を扱う船に出資することで、事業を拡大するという方法も考えられる。これにより所有する船の種類が増えれば、燃料調達や部品調達などでスケールメリットを利かせられるし、複数の貨物を扱うことでリスク分散にもなる。

鈴木

場合によっては海運会社が荷主を合併・買収するというのもあって、実際、小泉君も海運会社と卸売事業者のM&Aを実現させていたよね。

小泉

その案件は、前部署の企業戦略部のサポートもあって実現したのだけど、両社が抱える課題をお互いが手を結ぶことで解決していける点が、成約の大きなポイントだったんだ。海運会社は主要貨物の需要減少を受けて、中長期的な新規貨物の獲得と、既存サービスにとらわれない事業への展開をどのように図るかが課題だった。一方、卸売事業者は中長期的な事業承継の問題を見据え、スポンサーに入ってもらえる会社を探していた。そこでDBJは、海運会社(買い手)側のアドバイザーとして買収プロセスのサポートと、買収資金のファイナンスを他の金融機関と協働で実施した。卸売事業者は、一族で持っていた株式を海運会社に譲渡したうえで経営を引き続き担っている。こうして両社は、海運会社側の顧客基盤や物流網と、卸売事業者側のネットワークをそれぞれ生かしながら、事業シナジーの実現を図っているというところ。

鈴木

DBJとしては海運業界のこと、そして荷主が属する業界のこと、その双方の知見を持っているからこそ、それを情報、ナレッジとして海運会社に提供するだけでも、大きな意味を持つよね。

小泉

こうしてDBJが認識している事業課題や今後の方向性を共有しながら、財務面だけでなく経営面においても成長のための議論を重ね、各社の事業基盤強化に取り組んでいく。実際、先ほどのM&Aの案件も、お客様とのこうした議論がベースとなって生まれたものと理解している。同社からも「今後のM&A戦略の足掛かりとなる案件となった」とのお言葉をいただき、こうした地道な取り組みを積み上げていくことが大切だと感じたよ。

画像:鈴木 雄大 小泉 洋太郎

モデルケースづくりを推進しながら、
業界各社のサステナビリティ経営に寄与する。

小泉

ところで、DBJは2021年5月、アジアの政府系金融機関としては初めて、ポセイドン原則に署名、参画したね。これは金融機関による船舶融資について、国際海運から排出されるGHGの削減に対する貢献度合いを定量的に評価する枠組みとして、欧米の金融機関が中心となり策定されたもの。IMOが目標に掲げる「2050年までに国際海運からのGHG排出量50%削減(2008年比)」を、金融面からバックアップしていこうというのが目的だけど、DBJとしても業界の環境負荷低減に向けて、今後もいろいろな角度から支援していきたいね。

鈴木

カーボンニュートラル実現のために避けられない構造変化が迫りつつある中で、技術面やビジネス面の不確かさから、その対応に着手できていない業界は数多くあるけれど、海運業界からは、自分たちが率先して道標となろうという気概を感じる。そんなお客様に寄り添い、共に産業の変革を支えていくことが、DBJの変わらないミッション。海運業界の良きパートナーであり続けたいし、同じ未来を見ていたいね。

小泉

特に日本の場合は、あらゆる貨物を運べる総合海運事業者が多いというユニークさがあるだけに、それを活かした新しい取り組み、面白いビジネスを仕立てられたらいいね。洋上風力、アンモニア関連、水素関連――。どれも有望なインフラであると同時に、大規模投資を必要とするものだから、そのインフラを支えるための船を整備してもいいし、出資する形で事業に参画してもいいかもしれない。

鈴木

とにかく今は業界を挙げて壮大なブレインストーミングをやっている感じだし、どのお客様も課題を前向きに捉えているからこそ、「何か新しいビジネスをやっていこうよ」とよく言われる。だから仕事をしていても楽しいし、変革の可能性に満ちた業界であることを肌で感じるね。これまでは市況と向き合い続けてきた業界だけれど、これからはまた違ったビジネスも立ち上げられるはず。

小泉

海運業界は、IMOが大きな力を持っていることからもわかるように、国際的なルールの中でビジネスをしていくことが不可欠だよね。DBJは中立的な立場だからこそ、こうしたルールメイクの場にもしっかりと携わり、事業者との橋渡し役となることが求められていると思う。

鈴木

確かに。もう一つ重要なのは、積み上げてきた投融資の実績からその目利き力を買ってもらえていることで、DBJの投融資が呼び水効果を生み出していくという役割。環境負荷の低減を目指し、既存事業者やスタートアップも交えたモデルケースづくりをいっそう推し進めていきたいな。

小泉

僕も、そうしたモデルケースづくりを通じて得たナレッジ・ノウハウをうまくお客様の事業基盤強化に繋いでいきたい。こうして業界各社のサステナビリティ経営の実現に寄与していくことが、外航と内航を一つの部署で見ている僕たちの仕事であり、DBJだからこそ提供できる付加価値だね。