金融用語集

金融に関する用語を50音別とアルファベット別にまとめています。是非ご利用下さい。

は行

売却手続

エグジット戦略の中で規定される手続。償還期日にまでにリファイナンスできなかった場合に備え、流動化対象資産の売却により元利金返済資金を確保するメカニズム。売却手続は、償還期日後に設定されるテイル期間内で、例えばオリジネーター等による優先購入権期間や融資団の指図に基づく売却期間を設け、期間内に売却できなかった場合(テイル期間終了後)は強制売却(一般競争入札)する。

ハイブリッドファイナンス

ハイブリッドファイナンスとは、資本と負債の特徴を有する証券等によるファイナンス手法をいう。ハイブリッド証券・ハイブリッドローン等による資金調達手段であり、メザニンファイナンスの一種。劣後債、劣後ローン、永久債、優先出資証券、優先株などによる資金調達があげられる。負債の性質を持つと同時に、格付機関から一定の資本性を認められることが期待できるなど、発行体にとっては財務構成比率を改善し、財務の安定性を高めるメリットがある。

パススルー(Pass- through)

相手方の異なる二つの支払請求権において、一方の支払請求権の内容や変動リスクが、そのままの形でもう一方の支払請求権に反映されることを、パススルーという。たとえば、オフテイク契約上、オフテイカーに対して事業会社が負担する損害賠償義務が、EPC契約上のEPCコントラクター(建設工事請負業者)の責めに帰すべき場合には、オフテイク契約上の事業会社の損害賠償義務はパススルーでEPCコントラクターが負担する。

裸用船(Bareboat Charters)

用船者(船舶のオペレーター)が船舶を賃借し、船長以下の船員、燃料、船用品等の全ての手配を賃借人たる用船者が負担する船舶リースのこと。用船者は、用船期間にわたり自己の所有船舶と同様、船舶の管理・運航に関する一切の責任・費用を負担する。船舶の所有者は、船舶を船員や燃料等を付けず、「裸」で用船者に賃貸することからこのように呼称されている。

パリ協定

2015年にCOPで合意された2020年以降の気候変動に関する国際的な枠組み。1997年に定められた「京都議定書」の後継である。「パリ協定」では、世界共通の長期目標として(1)世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること(「2℃目標」とも呼ばれる)、(2)そのために、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとること、を掲げている。「京都議定書」では対象国が先進国に限定されていたところ、「パリ協定」では途上国を含む全ての主要排出国を対象としたことなどから画期的であるとされている。

パリパス条項(Pari Passu)

ローン契約において、返済順位において優先劣後のない同順位である旨を定めた条項。Pari Passuはラテン語であり、Pariは「同等の、等しく」、Passuは「歩調」から、「足並みを揃えて」の意。

バリュエーション(Valuation)

物件や事業の価値(Value)評価のこと。アセットファイナンスにおいては、LTVの算出の基礎になり、また低廉譲渡性の判断にも利用するため、バリュエーションには正確性と理論が要求される。バリュエーションの手法としては、原価法、取引事例比較法、収益還元法等がある。

バルーン(Balloon)

融資の返済方法において、最終回の支払が大きい場合の当該支払をバルーンという。満期一括償還(Bullet)の場合がその典型例である。

バンクラプシーリモート(Bankruptcy Remote)

倒産隔離のこと。

ハンズオン型

投資先企業の経営に徹底的に関与する投資形態。役員等の派遣、種類株式の活用等を通して、ビジネスプランニング、経営チーム組成、アライアンス構築、特許管理、ファイナンス等を指導する。(逆に、投資先企業の経営にあまり関与しない投資形態は、ハンズオフ型。)

ビュレット(Bullet)

「Amortization」の項を参照
Amortization
分割償還。期限一括償還(bullet)と対比される。略してアモチと言うことが多い。アセットファイナンスにおいては、bulletとamortizationをミックスさせることが多いが、アモチを導入する効果としては、
(1)償還時におけるLTV(Loan to Value)を下げ、当該トランシェの格付けを高めること、
(2)一部返済を行うことにより、リファイナンス時に必要な調達額を減らすこと、等が考えられる。

標準偏差

ファイナンスにおいては、リターンの分布は統計学の正規分布に従い、平均値を中心軸に左右対称な釣り鐘型(Bell Shape)を描くという前提が用いられることが多い。期待収益率からの乖離度合を、当該乖離の発生確率に応じて加重平均したものが標準偏差。収益率のぶれが1標準偏差(σ:シグマ)の範囲内に収まる確率は68.3%、2σ95.4%、3σ99.7%。銀行等がとれる収益率の下ぶれリスクは2σ~3σ。

表明及び保証

プロジェクトファイナンス・アセットファイナンスには必ず見られる条項の一つであり、契約締結当事者により、一定の内容に関する真実を表明し、かつ保証するもの。「保証」とあるが、債務保証の意味ではない。表明及び保証の条項に関する違反は、期限の利益喪失事由を構成する。英語ではRepresentations &Warrantiesといい、略して「レプワラ」ともいわれる。

ファイナンスリース(Finance Lease)

企業が資産をリースしている場合に、その資産の所有権が企業になくても、そのリースが実質的には資産保有と同様の効果を生じている場合には、リース資産を通常の資産と同様資産計上する、というのがリース会計の考え方であり、リースであっても資産計上すべきものをキャピタルリースないしファイナンスリースといい、リース料相当分を費用計上するのみで資産計上しないリースのことをオペレーティングリースという。

ファーストリフューザルライト(First Refusal Right)

アセットファイナンスの売却手続の中で、例えばオリジネーター等に与えられる優先交渉権のこと。「売却手続」の項を参照。

フォースマジュール(Force Majeure)

不可抗力のこと。

不可抗力

天災、異常気象等契約両当事者の責めに帰すことのできないリスクのこと。帰責事由の帰属先が存在しないので、契約上このリスクの分担に関しては交渉が必要である。例えば、発生損害額○○円以上を甲、○○円以下は乙が負担する、というように発生損害額によって分担方法を定めたり、法制・税制変更リスクを甲に、不可抗力リスクを乙に負担させる等、分担方法は様々である。なお不可抗力の一部は、保険によるカバーも可能。

不足資金補填保証(Guarantee for Cost Over-run)

コスト・オーバーランに対しては、当初計画において予備費を設定したり、金融団が事前に一定の追加融資枠を与えることで対応するのが原則であるが、額が著しい場合には、スポンサーに対して追加出資または劣後ローンの提供を義務付ける場合がある。また、プロジェクト完成時点における事業会社の財務比率を一定水準に保つ(結果として追加出資を要請される)ようスポンサーに義務づけることも多い。

普通財産【PFI】

行政財産以外の一切の公有財産(地方自治法238IV)。行政財産が行政目的のために直接使用されるものであるのに対し、普通財産は間接的に行政執行に寄与するものであり、貸付による収益を地方自治体の財源に充てる等、その経済的な価値に主眼がおかれている。普通財産は貸付、売却、私権の設定等が可能とされ(地方自治法238の5I)、原則として民法その他一般私法が適用される。

不動産鑑定評価書

不動産流動化の際に必要なデューディリジェンスの一つ。中立的な第三者である不動産鑑定士に、流動化対象物件の資産価値(Value)を正確に算出させるもの。LTVの算出の基礎になり、また低廉譲渡性の判断にも利用するため、鑑定評価には正確性と理論が要求される。鑑定評価の手法としては、原価法、取引事例比較法、収益還元法がある。融資団は、不動産鑑定評価書を精査した上で、別途独自の鑑定評価を行う必要があろう。

不動産特定共同事業法

不動産の小口化商品の浸透に伴い、投資家保護の観点から流通性や取引価格の透明性等を確保すべく、1995年4月に施行された。同法はいわゆる現物不動産を対象とするから、同法の適用を回避するべく対象不動産を信託受益権化した上で流動化に取り組むケースもある。

浮動担保

フローティングチャージのこと。

プライシング(Pricing)

案件の信用度評価に基づいて金利水準を決定することをプライシングという。金利水準は、具体的にはLIBOR(ないしTIBOR)をコストとして、それに案件のリスク評価に応じたリターンをスプレッドとして上乗せすることで表示される。

フリーキャッシュフロー(Free Cash Flow)

企業の事業活動による期中の純現金収支。現金収支から、現金支出、実際に支払った税金、運転資本として必要な現金、通常の設備投資に必要な現金を差し引いた金額を指す。

フローティングチャージ(Floating Charge)

英国法の下では、プロジェクト関連資産を全体として担保に取り、資産が変動する有機体としての企業ないしプロジェクトを担保の対象とすることが可能であり、この制度をフローティングチャージ(浮動担保)という。プロジェクトファイナンスにおける担保取得の主要目的が、融資団によるステップインを通じた事業継続の方策を確保することにあることからすれば、フローティングチャージの制度は非常に有効である。

プロジェクトファイナンス(Project Finance)

あるプロジェクトの資金調達において、返済原資をその事業から生み出されるキャッシュフローのみに依存するファイナンス。担保は当該事業に関連する資産に限定し、プロジェクトを行う親会社の保証等は原則としていない。PFIにおいては、基本的に当該PFI事業のみを行うSPCが設立されること、収入は当該事業により生み出されるキャッシュフローに限られること等からプロジェクトファイナンスになじみやすい。

プロフォルマ(Pro Forma)

ラテン語で、「according to form(見積もりの意)」のことであるが、プロジェクトファイナンスにおいては、想定キャッシュフロー表をさすことが多い。

プロラタ(Pro Rata)

the same rateのラテン語であり、残高按分比例のこと。

法人格否認の法理

法人格の利用が「法律の適用を回避するために濫用される」ような場合(濫用事例)、及び「法人格が全くの形骸に過ぎない場合」(形骸事例)に、法人格の形式的独立性を否定し会社と株主を同一視する法理を法人格否認の法理という(1969年2月27日最高裁判決)。プロジェクトファイナンスやアセットファイナンスにおいて、スポンサーやオリジネーターに対し、SPCの独立性の判断要素として検討されることが多い論点である。

法律意見書

「リーガルオピニオン」の項を参照。
リーガルオピニオン(Legal Opinion)
ストラクチャー上のリスクに関する法律面からのデューディリジェンス。倒産隔離や担保権の有効性、契約の有効性、関連法制との適法性等、ストラクチャー上法的に疑義が残る点等につき、弁護士による意見書を取得する。信用度評価には必要不可欠な資料であり、ローン契約の中で貸出人の満足する水準の法律意見書の提出を貸出前提条件として規定しておく例も多い。

保険

プロジェクトファイナンスにおける各種リスクは、保険によってカバーされることも多い。カバーされるリスクの例としては、以下のものがあげられる。保険の目的は、その利用にカバーされるリスクを、保険会社リスクまでに引き上げることにあるので、保険会社自体の格付けも一定以上が求められることになる。

募集要項【PFI】

公共側が配布する、PFI事業において、求めるサービス水準、技術仕様、主要な契約条件、リスク分担、事業者の選定基準、選定方法等につき記した書類。これをもとに応募者は入札書類(提案書)を作成することとなる。一般競争入札で事業者選定を行う場合は「入札説明書」がこれに該当する。

ボラティリティー(Volatility)

平均値・基準値からのばらつきのことをいう。正規分布における標準偏差のことも、volatilityという。プロジェクトファイナンスやアセットファイナンスにおいては、基本的にキャッシュフローが一本であるため、各種信用補完措置、ドキュメンテーションを通じて、キャッシュフローのボラティリティーを極小化する作業が必須である。